四つの仮面
うずらの導きでこの場に現れた四人の人物は、全員が仮面を被っていた。
何かあれば、指笛で召喚し、それを放つ。
ミリアに教えられていたのはそこまで。
あとはうずらが何とかする。
幸か不幸か、今回はグリク自らが防壁となって
四羽を放つ事が出来たが、もしそれが叶わない場合は
うずらの本気を見せることになっていただろう。
そんなことは知る由もなく、現れた四人を見たミリアが
安堵のため息をついた。
顔がわからなかったが、二人の洋服には「六家」の家紋が施されていた。
三花のミリアにとって、親ともいえる組織の存在が彼女にようやく
平常心を呼び戻させた。
「あの・・・」
状況報告をしなければ!
気が付き、言葉を発しようとした彼女に、軽く左手を上げて制したのは
衣服に家紋の無い二人の内の背の高い方だった。
この行動に対してミリアは、紋無しが何を!
という気持ちから、再び報告を行おうとするが
今度は紋付きの華奢な方の手が、ミリアの手を優しく包み
「良いのよ」
と、改めて制止する。
その声は優しく、透き通る女性の声。
それを聞いたミリアは、冷静になったと思っていても
包まれた手が固く握りしめられ、小刻みに震えていたことを、ようやく自覚する。
その様子を見て、初めにミリアを制した紋無しが少しすねたようにそっぽを向いた。
そんな彼らを尻目に、紋付きの、恐らく男性だろう人物がグリクの傍らに
しゃがみ込んで、軽く肩を叩いた。
この時グリクは仰向けに寝かされていたのだが、突然、瞼を開くと
四人の仮面とミリアを、順に観察するように瞳を動かす。
その儀式のような瞳の動きの後、彼の瞳に変化が現れた。
「瞳話」
グリクの瞳に次々に現れる文字は、一文字一文字、違っている。
しかもそれは、文章になってその瞳を見る者と意思疎通を図ろうとしていた。
「申し訳ありません、油断しました」
グリクの瞳に現れては消える文字を繋げると、こんな文面になる。
「まあ、命があっただけでもよかったじゃねえか」
つい先程まですねたような仕草をしていた男が言う。
「まさか、キズヌ様に来ていただけるとは・・・。
なんとも、お恥ずかしい限りです」
声で判断しているのだろう、キズヌの声を聞いてから緊張したのか
グリクの瞬きの回数が増える。
そんな師匠の変化に驚きを隠せないミリアだったが
その名前は、しっかりと頭に刻み込んでおくことにした。
尚も続く瞳話で分かったことは
グリクは今も敵と戦っている、と言う事。
その敵とは「グロリオサ」という秘密結社だ、と言う事。
この名前が出た時に、ミリアが不審な表情をする。
今まで聞いたことのない組織。
その表情を見て、先ほどの紋付の女性が
「グロリオサ、それはの淵源の書を求める集団なの。
もし、彼らに出会ったら、全てを捨てて逃げなさい」
この時はその言葉の意味が解らなかったが
ミリアは後に、その真の意味を知ることになる。




