無知という強さ
王立図書館の応接室。
主役は既に揃っている。
彼らの待ち望んでいるのは知名度の高い脇役
いや、咬ませ犬と言った方が正しいかもしれない。
この図書館を舞台に繰り広げられる三文芝居。
通常なら、子飼いの便利師に程よい敵役の準備がされている。
接戦の末、あと一歩の所で敗れる事が出来る者か
王国貴族であるメレンゲの息子、スフィアの覚醒によって惜敗する事が出来る者が
いるはずだったのだが、今回はその役割を果たす者の姿は無かった。
彼らの求めているのは、ドキュメンタリーを交えた自叙伝。
実際に命を脅かすような刺激を求め、父におねだりしたこの舞台。
「六家」ですら後れを取った組織に対して、圧倒的な力で勝利する
スフィアサイドの計画は完全に練りあがっていた。
後はただ、呆然と立ち尽くし自分たちの活躍を見ている案山子と
無様に敗れ去る敵の存在を待つばかりだ。
そんな所にようやく、引き立て役となる案山子が見つかり
こちらに向かっている、という情報が入った。
彼らにしてみれば、単に立っているだけの簡単な仕事だ。
だが実際は、三花のグリクと相打ちをした者が所属する「グロリオサ」
という組織、その存在こそが、この仕事を受けない原因となっていた。
無知であるが故の幸福。
事情を知る周囲の者たちは、この仕事を受けるのは
よほどの弱みを握られた者か、自殺志願者だろう。
そう噂しながら、生贄となるのはどんな人物か?
と、興味津々だった。




