やっぱりなのか。そうなのか。
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いつからここは、キャバクラになったの!?いや、まて自分。この世界にキャバクラなんてものはない。王家の許可を得て商いをしているキャバクラ的なお店もあることにはあるし、華街と言われる城下の外れ付近には、娼婦がお客の夜の相手をするお店だってある。が、この店は健全なお店のはずだよ。というか…お嬢さん達…その最良物件には婚約者さんがいますよ。そして、多分王妃候補のマリアに恋心いだいていますよ。というか、私こんな状況で貴方に声かけたくないんですけどっ!
「ローズ。すまないな。」
父が私に気づき声をかけたとき、やっとロナウド様も私に目線をあわせた。
「すみません。御呼びだてしまって。」
その声にいっせいに人垣が割れた。モーゼのようだよ。ははは。すごいな。お嬢さん達、怖いよ。私はこの人となんでもないよ。一応の知り合いですけど。ライバル認定しないでよ!!
「何か不手際がおありでしょうか?」
「いえ、美味しくいただきました。それで、こちらのデザートに使われているフランシーを王城に持帰りたいのですが、出来れば新鮮なもののほうがいいとご主人にうかがったので、栽培している所まで案内していただきたいのです。」
父をちらりと恨みがましい目でみると、またしても眉毛をよせて泣き出しそうだった。嗚呼、断れないよね。うん、わかるよ。私も断れるものなら絶対にお断りだよっ!変な所で親子をはっきさせてるね。お父さんと私。
「わかりましたけど…栽培している所は、少し遠いので、馬を借りてきます。」
「ああ、馬は私が借りてきました。いつも貸してもらっている所をご主人に伺ったので。」
って、最初から私にいかせる気満々だったの!?
ぱかぱかと馬が2頭。店の裏手の小高い丘の道を並んで歩かせる。会話は、もちろんない。
食堂兼宿屋の前にお嬢さん達の人垣ができたのを初めてみたよ。あんまり気にしてなかったけど、あんなにこの街にお嬢さん達がいたんだね。ていうか…宿屋の横に備え付けてある馬小屋から自分の馬と借りてきた馬をつれだってきたロナウド様が颯爽と馬に股がった時黄色い悲鳴がおきたよ。私はその間にいつものように宿屋の柵に足をかけ騎乗したんだけど、それをちらみしていたロナウド様が少し目を見開いていた。なんだったんだろう。あの目線。馬に乗れるってわかってて、馬つれてきたんでしょ?まさか本当に乗れるとは思ってなかったの?まあ、いいけどさっ。
「あ。あれがそうですか?」
「あ。はい!」
結局、なにも会話がないまま農園についたな。気を使う会話がなくていいけどね。
農園には、フランシーの他に広い所でなければ栽培できない果物の木がある。食堂兼宿屋のすぐ裏では建物と同じ面積ぐらいの畑がある。普通であれば、管理が大変だけど、そこはほら、魔力をつかって作物がいい状態で出きるようになってるから、不作とかはないの。便利だよねぇ。魔力って。
「いい匂いですね。これならマリア様が喜ばれるだろう…。」
不意につぶやいた言葉でしょうけど、聞こえてますよ。ロナウド様…。嗚呼、やっぱりと言っていいのか…ロナウド様は、マリア様に恋心をいだいているようです。小説の中でも、城下での暮らしを懐かしく思ってるマリア様に食べ物を内緒で届けていたよね。
「このぐらいが食べ頃です。」
ロナウド様の呟きに聞こえなかったふりをして、調度食べ頃である実を指差すと、ロナウド様が私が指差した実を木からもぎ取った。
「3つもあれば、タルトには充分な量です。後何個かもたれるのであれば、あちらとあちらがいいと思います。」
「わかりました。ありがとうございます。」
ロナウド様は、私が指示したフランシーを次々もぎとっていた。私もきたついでに、お店で使う分と、多分ロナウド様はマリア様のためだけにフランシーをとっていると思われるから、私は城でお世話になっている侍女長とキャロルのために少し多めにもぎ取った。
「もうそろそろ戻らないと、お城に戻る時間もありますし。」
行きたくはないけれど…という言葉は飲み込み食堂兼宿屋に戻った。あれだけお嬢さん達で賑わっていた食堂兼宿屋の前も、流石にあれから2時間たってるし、出待ちならぬ、帰り待ちをしている子がいなくてほっとした~…。
これで、登城しなくていいならもっといいんだけどさっ!
ちょっと長くなったな…。