悪役補正
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ガタゴトと王家の馬車に乗り帰路を辿っております。
ええ、私は本当にフラグを回避してやりましたよ!
あの後、回廊でヒロインと遭遇したのですが、小説通りに皇太子がヒトメボレ。よきかなよきかな。んでもって、ヒロインを連れだって陛下の所へ行き、私と殿下の婚約は、破棄。短い婚約期間いや、婚約時間だったな。うん、でもいいんだ!これで私は、陰謀やら何やらに捲き込まれないですんだんだ!
なんて思ったのに…これは、どういう事ですか…?
「ですから、お嬢様にも登城いただき、王妃候補であられるマリア様の王妃教育をお手伝いお願いしたいのです。」
「お手伝いと言われましても、しがない食堂兼宿屋の娘に、何ができるのでしょう?」
「ご謙遜なさらないでください。王妃様からも、こちらの事情を伺っております。」
見目麗しい騎士が家にきて、お父さんを説得していますよ。というか、この人、あれだよね。次期宰相様だよね。小説では、私は、この人にも断罪される運命だ。皇太子が無理矢理側室にしたマリア(ヒロイン)に、恋心をいだいてしまうのよね。でも、皇太子もマリアも二人が相思相愛だから、臣下としてあきらめようとするのよね。そして、私という邪魔者を快く思っていない…
…んだけども…今は、私がフラグを回避しちゃったものだから、小説とは話の内容が違ってきちゃってるのよね?これは…どう考えればいいんだろう。何が起こってるの?ていうか、無理矢理私を登城させて王妃教育に参加させようとしてるなんてどういう悪役補正なの?!そんなの要らないよっ!
「ロゼリア様も、ご自分のお立場はお分かりですよね?」
「え。」
「私は、ロゼリア様の事を特例として王様、王妃様より伺っております。どうか、御同行願います。」
ちょ、話はしょりすぎだよ!
「でも…本当に私は何もできません。王妃教育のお手伝いといっても、父が言うとおり私に出来ることなど…。」
「ですが、魔力におかれましては、城に残っていただいている侍女よりも、遥かに優れておいでなのです。」
知ってるよ。無駄に魔力が高いってことは!
「どうか…そのお力を国におかしできませんか?せめて、王妃教育が行われる最初の1年だけでも。どうか…お願いします。こちらのお店のほうは、ロゼリア様の変わりに、いつもこの店を手伝っていらっしゃるモリー様とレスター様にお願いしてあります。」
って!いつの間に!
「魔力があったんだろ?セレスも魔力持ちで、城につかえた事があったんだよ。」
「そうだよ。1年ぐらいあっという間さ!お店の事は、私達にまかせときな!」
っていうか…おばさま達…完全に、この次期宰相様にやられちゃってるし…。頬が赤いよ!いつまでたっても乙女の心を忘れないなんて、うらやましいよ…。確かに格好いいしイケメンだし、次期宰相だし…魔力は半端ないし。最良物件だけどさ!私は、小説の中のこの人の印象しかないのですよ。私にとことん敵意剥き出してたこの人に、今現在頭をさげられてるのが、ひっじょーにおそろしいのですよっ!
「ローズ…。」
困惑した父の声がいたたまれない。父としては、ここまで手回しされていたら断る事などできないだろう。
「わ…かりました。1年間だけ、お手伝いします…。」
「そうですか!よかった!出向いたかいがありました!」
「ただしっ!!条件があります。1週間に1度は、家に帰してください。それが、絶対条件です。そして、私がどうしても無理だと判断した時は、そこでお手伝い終了です。いいですね。」
「わ…かりました。」
「約束ですよ。一筆したためてください。」
あーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!!!!!
やっちゃったけど、この条件で何かあったときはこの紙突きつけてやるんだからっ!
「あ、ちゃんと血判お願いします。」
眉しかめたって、怖くないんだからねっ!!
楽しくなってくるはず…