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アルザムの宰相

訪問していただきありがとうございます。

「今の言葉は、聞き捨てなりません。お答えください。ナーシア様。」

いたたまれない…。ロナウド様の事を本当に好きだったのだろう…。

先ほどからナーシア様の途切れた嗚咽がこの部屋にまで聞こえている。

「あ、の…。」

「申し訳ありません。ナーシア様…。」

隠密が苦しそうに言葉を告げるとナーシア様が頸を横にふる…。

「ロナウド殿!そんな所でナーシア様と逢瀬されてっ…。」

アルザムの宰相様がガゼボの所にやってきて不倫現場をおさえた!みたいな口調で言葉をはっしていたけど、隠密の姿を認めると言葉をつぐんだ。さあ…どうするのだろう。知らないふりをするのだろうか…。

「ああ、使用人がそこにいたのですね。失礼しました。」


知らないふりか…。まあ、そうだろうと思ったけど、ナーシア様が知っていてオーウェン様が知らないなどということはないだろう…。

「オーウェン殿。この人は城の使用人ではありません。」

「…では…どちら様ですか?アルザムの王女と同席されても大丈夫なのですか?」

オーウェン様が口を開くたびに、ナーシア様の顔色が悪くなっていくのがわかる。

「オーウェン!もういいの!やめてっ!」

「ナーシア様?」

理解できないという顔でオーウェン様がナーシア様を見ている。

「もう…解ってしまっているの。この者がどのような存在かを。ロナウド様はご存知なの。」

ナーシア様のその言葉を聞いた瞬間、オーウェン様が恥も戯文もなくその場に平伏した。申し訳ありません!と叫びながら頭を地面に擦り付けていた。それは、日本でいう土下座呼ばれるものだなと…こんな緊迫した場面でも暢気に思ってしまった。

「申し訳ありません。ロナウド殿!私が独断でこの者達を呼び、指示をしました。お咎めは、私が受けます!どうかっ!どうか姫だけは、アルザムにお返し下さいっ!」

そんなはずはないのに、オーウェン様はナーシア様を思い嘘を告げる。

「少し違います!オーウェン様が率先してこの計画をたてたわけではありません!俺達は王女様に幸せになっていただきたくてっ!俺達がやろうとしたことを宰相様に伝え、その時偶然にも王女様にこの計画を聞かれてしまったのです!」

バタバタと、この城の衛兵達がガゼボにかけつけた。これだけ騒がしくて気がつかないでいるほど、この国の衛兵はバカじゃないだろう。

「お話は、陛下が、お聞きになられます。ご同行お願いします。」


ナーシア様がオーウェン様に声をかけ立ち上がらせる。同行を願ったが、捕捉はしない衛兵達は、多分陛下の命令を受けているのだろう。小さな一室でガゼボをみていた私も、殿下の声に促されそこを出る。父の腕にはまだ魔力の鎖が繋がっていてその先には隠密がいる。離して下さい。という殿下の声に父が魔力の鎖を隠密からなくすと、隠密が驚いた表情で、殿下をみていた。

「逃げるか?」

との短い問にそんな事しない。と答え、オーウェン様とナーシア様の少し後ろを歩き始めた。


城の西側、牢屋に近い一室に入るとそこには、陛下をはじめ、王妃様、この国の重鎮達…もちろん、宰相様もいた。不意にドラマとかに出てくる裁判所っぽいなーという感想をいだいてしまったが、後で聞いたら本当にそういう部屋だったらしい。

「アルザム宰相、オーウェン・ノクタリム。そなたに問う。ここにいる三名は、そなたの命をうけ、この国の王妃の姪であるロゼリア・フラウ・フォルコットを害するためこの城に侵入した。間違いはないか?」

「はい。間違いございません。」

宰相様!!!隠密達が声を揃えて叫ぶ。自分達が悪いんだ!罰するなら自分達だけだ!宰相様は関係無い!と…。

「発言の許可を願います!」

隠密達同様、ナーシア様が必死の形相で陛下に懇願していた。オーウェン様は余程信頼され愛されているのだろう…。私にとっては、ただただ残念なイケメンだけど…。

「許す。」

陛下の声と同じにオーウェン様の叫び声が重なった。ダメです!という叫び声が…。

久しぶりのシリアスゾーン中。やっぱりどうしても、シリアス…というか暗くなってしまうのは仕様か?と悩む。コメディが大好きなのにな。

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