アルザムの使者達
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「何を話していたんだい?」
そっと私の肩に手をおき胸から少しだけ私を引き離すロナウド様。端から見れば、これ甘い雰囲気が漂ってるなと思う。
「それが…。アルザムの宰相様が私に、自分にのりかえないかと…おっしゃられまして…。ですが、私…。ロナウド様以外には考えられないとお断りしたのです。」
ええ。問題がおきようと、事実を申しあげますよ。私に喧嘩売ったあなたが悪いのです。オーウェン様。
「え?…そうか…。やはりローズは、他の男から見ても魅力的なんだな。初めて会ってそのような告白をうけるだなんて。」
ロナウド様が私の頭を撫でる。というか…以前にもロナウド様に頭を撫でられた事ありましたけど、すごく自然にやっていましたよね。今回も自然ですけど…。もしかして、癖ですか?
「困ってしまいますわ。ロナウド様からもお断りしていただけませんか?」
「そうだな…。ノクタルム殿。申し訳ないのですが、ローズは渡せません。わざわざ御越しいただいて…私にしてもローズにしてもご期待にそえず…。今宵は、城内でゆっくりお過ごしください。のちほど、公務が終わり次第、陛下と殿下からの通達があるまでお部屋でおくつろぎ下さい。お部屋までは、衛兵がご案内します。行こうか?ローズ。」
ペコリとロナウド様がオーウェン様とナーシア様に御辞儀をする。私も一緒に御辞儀をすると、すっとロナウド様の腕が私の腰に回って私を抱き込むように歩き出す。ゆっくり、私をエスコートしながら…。
「もう、この辺で宜しいのではありませんか?クリストファー様。」
あの二人の気配や、城に勤めている人の気配がない図書館の辺りで、私はロナウド様の回した手をはがした。いや、はがそうとした。と言ったほうが正しいだろう。
「ローズ。だめだよ。誰がどこで見ているかわからないからね。」
耳元でささやかれ、腰に回された手は、私がはがそうとした手をとらえた。
「誰もいません!なんでしたら魔力で探ります!」
「参りました。仕方ありませんね。」
そう言って、やっとロナウド様は、私を解放した。
「なんとかなりそうですね。明日…あの二人が出立するまで、やりとおさねばいけませんが…。今宵、何事もなくすめばいいですね…。」
「どうでしょう…。先程、ナーシア様がわざとつまずき、私にこのような書簡を握らせましたからね…。」
かさっと音をたて、本当に小さな紙に書かれた文字を私にみせる。そこには、『今宵晩餐会の後ガゼボにて、おまちしております。』とかかれている。アルザムからこの国にやってきたのは、ナーシア様も含め5人。ナーシア様付きの侍女が二人、宰相のオーウェン様、従撲が一人…。王女の訪問にしては、少なく、衛兵がついてこなかったのにも驚いた。少なくとも、隠密が3名ほどついてきていることは把握しているが、この城内に入る事は不可能に近いだろう。何故隠密が3名ほどいる事を把握しているかって?私もびっくりしましたけどね!ナーシア様御一行は、登城する前日、城下の宿に宿泊したの。私の実家じゃなく、貴族専門の宿屋よ。きっかり5人。もちろん、アルザムの国の王女とそのお着きがこの国の宿屋を借りるとなれば、城下の噂になるのは、早かったわ。噂では、ロナウド様とアルザムの王女が婚約するらしいという話題になっていた。私とロナウド様の偽婚約者話は、城下では、私の父しか知らない。城に勤めている関係者に戒厳令がひかれていたからだ。私の父の身分の事もあるし、複雑な状況をつくりださないためにもね。ま、その事はいいとして、隠密が私の実家に宿泊したの!宰相様が私を迎えに来る少し前、あきらかに旅人とは思えない3人が、予約もなしに宿屋に訪れたのだ。彼等が隠密であることを悟ったのは、ふとした瞬間に気配が消える事だった。父も私と意見が一致した。彼等は隠密だという事で…。
あきらかに怪しい3人組を想像していただきたいです。⬅おい




