小説の中の悪役令嬢
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「…失礼を承知で申しあげてもよろしいでしょうか?」
あくまでも、私は王族と血縁である雰囲気を崩さないようにする。心の中は、怒りで満たされてますけどね!
「なんでしょう?」
「そもそも、今日お逢いして、お話をした…と言っても、たいしたことも話したことのないような方と婚姻を結ぼうとするなど、どう考えても可笑しいとは思いませんか?」
暗に、何たくらんでんだ?との意味をこめてますよ?それがこの言葉でわからないようなら、アルザムの国を疑うわ。
「一目惚れなのです。」
いけしゃあしゃあと!騙されませんよ!私は!!!さっきは、不覚にも一瞬動揺しましたけど、一目惚れの瞬間はこの目で見たことがありますから、わかるんですよ!人が恋に落ちる瞬間のあの空気!
ええ、見たことがあるのは、わが国の腹黒皇太子がマリア様に落ちた瞬間ですよ!確かに皇太子様がマリア様に好意をいだくのはその前からわかっていましたけど…。オーウェン様の告白は、あの空気が感じられない。
「申し訳ございませんが、お断りします。…私にはすでにロナウド様がおります。さきほど、あえて好きだとおもうところをお話しましたけれど、そこだけではありません。」
「では、他にどの様な所が…?」
答えられるなら答えてみろって顔ですよ。それでは一目惚れの言葉を信用されませんよ。私がさっき、答につまったのをいいことに…。この年齢で宰相を勤めるだけの腹黒さは、おもちなのですね!だけど、残念!私は負けるだなんて絶対にイヤだ。吹っ掛けられた喧嘩は倍にしてかえしますよ?
「これも失礼になるかもしれませんが…。」
「はい?」
「言う必要が?」
にやついていた表情が一瞬に唖然とした表情にかわってますよ。まったく関係のないあんたなんかに言う必要があるの?っていう気持ちは確実にオーウェン様に届いたと感じる。これでもまだ食い下がるのでしたら、本当に容赦しませんよ?
「是非とも…。」
あーあ…。ダメね。笑顔をはりつけた所で、今更遅いし、いくら例えばオーウェン様が言うとおりに一目惚れだとしても、そこはふみいれてはいけない領域だ。
「…どうしてもと…言われるのですね。わかりました。ならば答えましょう。…私貧弱な方は好みではありません。色白で眼鏡など…。さらに言えば、魔力がない方との婚姻だなんてもってのほかです。ロナウド様は、みての通り貧弱ではありませんし、色白で眼鏡でもありません。魔力は私と同等にあります。ノクタリム様のお国が魔力に対してどのように思っていらっしゃるかは、存じ上げませんが…。王妃の親族として魔力がない方との婚姻だなどと…考えた事もありませんわ。」
言っていて、自分でもこれ悪役令嬢だとおもった。小説の中でマリア様を咎める私のような言い回しだと…。これは…自分でも思うけど、ヤな人間だ。ま、仕方ありませんね。喧嘩ふっかけられたんだし…。こんな高飛車な女だったのかと思ってもらえればこっちのものだわ。
「そう…ですか…。失礼を申し上げました。」
笑顔がひきつってますよ?それに不満が駄々漏れです。ナーシア様のために私からロナウド様を引き離そうと私を篭絡させようだなんて、無理なんですよ。
「いえ。気にしておりませんわ。」
あくまでも傲慢な言い方でオーウェン様を追い詰める。あんたなんか興味もない。と暗にしめしているのだ。オーウェン様が怒りに満ちている。
「ローズ。」
その時だった。隣に可憐で私には凍てつく眼差しをむけてくるナーシア様を連れだってロナウド様が来たのは。
「ロナウド様!」
私は、人目も憚らずロナウド様の胸のなかに飛び込んだ。
ええ、もちろん演技ですけど、な、に、か?
ロゼリアが色白で眼鏡を完全否定していますが、私が否定しているわけではありませんので…。
でも、不快におもわれたみなさま申し訳ありません。




