閑話‐『新たな婚約者1』ロナウド・クリストファー
訪問していただき、ありがとうございます。主人公視点ではありません。しばらく閑話が続きますが、本編が終わった後で読んでも大丈夫です。むしろネタバレ必須なのでネタバレを好まない方は本編終了次第、読んでいただければと思います。
城にアルザムから舞い込んだ1通の書簡は、私の運命を変えるものだった。
陛下から執務室へくるようにと殿下に連行されるよう一緒に向かった。エルナの一件以来、宰相の仕事を自分一人の力で行わなくてはならなくなり、ロゼリア様の城下への送り迎えも父が行うこととなった。仕事の量は父のほうがあるとしても、やはり執務していた時間が違うこともあり、一人で宰相の仕事を行う事になった自分よりも、早く仕事をおえていたからだ。最初は、宰相の仕事を一人で受けたとしても、ロゼリア様の送り迎えを行える自信があったが、仕事の量は父より遥かに少ないにもかかわらず、ダメ出しをくらうことが多く大変だという父の言葉が身に染みた。こんな少ない仕事の量さえもダメ出しをもらっている自分が情けなかった。
「忙がしいところすまぬ。ロナウド。」
陛下が直々に私に謝罪の言葉をのべる。忙しさは、陛下のほうが数倍にも及ぶのにもかかわらず、そのような言葉をいただけることにこの国の未来を支える一員であることに誇りに思う。
「いえ。どうかされたのですか?」
「ああ。少し厄介な事になりそうなのでな。これを読むがよい。」
陛下直々に書簡を受けとる。書簡は、アルザムのものだった。アルザムが何を陛下に求めたのか?表面的には友好関係を保っている国ではあるが、陛下と王妃が婚姻される時、王妃の国であったフラウ国を密かに侵略しようとしていたのがアルザムだ。ただ…この国にフラウ国が吸収されることにより、表だってアルザムと衝突したわけではないが、アルザムの軍がこの城に大群で押し掛け、皇帝陛下に謁見を願うという事件があったことを父から聞かされている。表向きには皇帝陛下と王妃の婚姻祝いという事であったが、裏に隠された部分は、この国の偵察だったのだろうという父の見解だ。流石のアルザムといえど、この大陸の4分の3をしめているこの国に逆らう事は、難題であろう。フラウ国はこの国とアルザムの間にあった小さな国であったが、魔石が多く採掘される山がいくつもあり、海にも面しているので資源は豊富な国だった。そして人を害する事を好まない平和な国だった。それだけを聞くとアルザムにすぐにでも侵略をうけそうだが、アルザムの王家や貴族は、この国やフラウ国と違い魔力を必ずもって生まれるわけではなかった。魔石に頼る事のほうが多く、その魔石も、アルザムではまったく採掘されない。魔石は、この国やフラウ国のみ採掘されるので、輸入するしか方法がない。だが、輸入に頼るよりも隣あわせたフラウ国を侵略するほうが楽だと考え、密かに侵略をしようと策略していたのだ。ただ、魔力をもつ者が多いフラウ国をすぐには侵略できるはずもなく、その前に、この国にフラウ国が吸収されたのだ。
「これは…。」
自分でも、掠れた声だと気づいた。内容はこの国の三大貴族の子息とアルザムの第2王女との婚約の願いだった。アルザムの第2王女の年齢は、王妃様の甥と同じ年齢だが、王妃様の甥であるアルディールと自分の妹であるナタリアが婚約をしている。年齢的に離れているが、暗に自分を婚約者に望んでいることがうかがえる文だった。
「お前も知っている事だが、この婚約が仮に行われたとすれば、アルザムにつけ入る隙をあたえることになる。」
それはそうだが…。事実今現在自分には、婚約者がいない。不意にロゼリア様の顔が浮かんだ…。なんだ?これは…?どうしてロゼリア様が…?
「そこでだ…。偽ではあるが婚約者をたてようと思う。身分的にも、申し分ない者だ…。わかるな?」
陛下の言葉がさらにロゼリア様の顔を思い出させた。だが、偽という事にひっかかりを覚えるのは何故だろう…。何故…。
次回も閑話です。




