騙すなら…まず、味方から。
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「では!うけてくださいますか?」
どうしよう?どうすれば?どうして?疑問ばかりがうかぶ。前世から数えても生まれて初めての告白を受けた衝撃は、半端じゃない!しかも、相手はロナウド様。小説の中で私を断罪するはずだったロナウド様…。なにがどうしてそうなったの!?
「あ、のっ。」
途切れたような言葉がやっと出てくれた。熱い。何もかもが熱い。だめだ。自分がおかしくなりそうだ。こうなったら、もう…!
「はい。」
「い、いつ…偽りのっ。偽りの婚約者ってこと…。ですよ…ね?」
いつから私の事を?
と質問する予定が、どうしようもなくいたたまれなくて、途中で言葉がかわってしまった。ロナウド様の事は、嫌いではない。嫌いではないけど、そんな…婚約者になるとか、私には今すぐ考える事が出来ない。私に婚約者を求めるという事は、ロナウド様は私と結婚してもいいと思っているということだろう…。でも、丁度いい人材が身近にいただけなんだろう。もっと時間をかければ、ロナウド様の身分にも、ロナウド様を支え愛しあっていける令嬢もみつかるだろう。都合のいい私じゃなく。都合がいいというだけで、愛のない結婚はしたくないし、するつもりもない。婚約者になってほしいと言われ嬉しくないわけではないけれど、私だってちゃんと愛されたい。平凡で普通に…幸せを感じあえる相手と。父と母のように…。
「いつ…わり…。」
ロナウド様が小さく呟く。ご免なさい!私にはこれが精一杯なんです!お願い!
「……。やはり…。気づかれましたか…。」
「はい?」
え。えっ。えええええええええええええええええっ!!!
ガタンと椅子の倒れる音がする。因みに、私が急に立ち上がって椅子が倒れたんですよ。びっくりしすぎて、コントみたいに椅子ごと、倒れたわけじゃありませんからねっ!
「…出来れば。気付かれないよう、事を進めたほうが良いと…殿下から進言されていまして…。申し訳ありません。」
今までしれっと膝をついて懇願しているような姿だったロナウド様は、すっと立ち上がり私を見下ろす。その綺麗な顔が苦笑いで私を見つめる。
「い、いえっ。大丈夫です。わかっておりますっ!」
むしろ、偽婚約者だって先に言ってよ!馬鹿じゃん私!一瞬本気で考えこんじゃったじゃない!もぉおおおおおおおおおっ!!!人生で初めての告白?!あるわけないでしょっ!!?しかもロナウド様だよっ!?考えなよ自分っ!
「では…。受けていただけますか?」
「え、ええ。大丈夫です。」
ほっとロナウド様が息をはく。殿下がロナウド様に進言した成り行きはわからないでもない。私がロナウド様からの申し出を本気にとれば、私とロナウド様の雰囲気が変わるだろうと思っての事だろう。私は平凡を願っていて巻き込まれることを拒んでいる。そんな状態で偽の婚約者になってほしいと懇願した所で私がマリア様の王妃教育の手伝いを今すぐやめると言い出しかねない。だからといって…。私を騙そうとした罪は大きいってことを教えてあげるわ…。で、ん、か!
「あの…。提案があるのですが…。」
「は、はい!なんでしょう?」
何故そんな顔されてるんですか?怒ってませんよ?私。ロナウド様には!怒ってませんよ?
「殿下には、偽りというのがバレた事を黙っていませんか?」
「え。」
にこりと笑ってロナウド様を見上げると、ロナウド様の顔がひきつっていました…。怒ってないってば!そんなに私、怒ってるようにみえるんですかっ!?
「敵を騙すには…。まず味方から。ですよね?クリストファー様。」
その時のロナウド様の表情は笑えるぐらいひきつって苦笑いしていましたよ。ふっ。ふふっ。怒ってませんよ?
怒ってませんよ?大事な事だから何度でも繰り返してます。(完全にキレてます)ふふふ。




