このタイミングなのっ!?
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ガタゴトと石畳を進む馬車だが流石に乗り合い馬車とは違う王家の馬車は、揺れがほとんどない。貴族や王族は、馬にも普通に乗れるらしいが(女性でもね。)、平民は、誰でもが馬に乗れたりはしない。馬をひいて馬車を操作できる人も限られている。本当にちなみにだけれど、父は当然馬に普通に乗れる。そして、私も、乗ることができる。小さい頃から乗っていたからだ。
なんでそんな平民の私が馬なんか…と思ったそこのあなた。
うん、わかる。当然の疑問だよね。私も、小さい頃不思議に思って問いただしたよ。そしたらね。父の口八丁が巧いのだよ。
「宿屋のお客様のお迎えとお見送りに、馬をひけるようになっておいたほうがいいだろう?」
なんてもっともらしくかえされたけど…。どこまで父は考えていたのかなぁ。私の身分が露見する事考えて万が一のために、必要になりそうなこと、慣わせてくれたのかなぁ。とかも今となっては思う。ひた隠しにしていた現実は、ついさっき涙をたっぷり浮かべた父から謝罪のような独白をうけた。
「すまない。私はローズに寂しい思いをさせたいわけじゃなかったんだ。セレスが亡くなった時にさえ、王から城に来ないかと言われたが、私はセレスとの想い出がつまったあの場所を離れたくなかったのだよ。それにね…。いくら私が王妃の従兄弟だとして、王妃が私の事を兄同然に慕っていてくれてるといえ、お前をあんな権力争いの魔窟におくわけにはいかなかったんだ。確かに私は、今はなきフラウ国の王族の生き残りだ。そして、お前もその血を受け継ぐ。だからこそ、強い魔力を持つ。だが…。」
そこまで言うと、父が言葉をつぐんでしまう。私のためを思ってしてくれたことだし、私は父を咎めるつもりもない。まぎれもなく、私は父と母の娘なのだなと思う。
「そんな落ち込まないでお父さん。私は、平民のロゼリアよ。食堂兼宿屋の一人娘なの。誰がどう扱おうと、それは変わらないわ。それに、私はまだ今日、帰りにケーキ買うこと諦めてないのよ?」
父をみてにこりと笑えば、固い表情をしていた父も少しだけ顔をほころばせる。
少しだけ馬車がゆっくりになって止まったかと思ったらまた動き出した。馬車の窓から外をみると王城の中へ馬車がはいっていった。アプローチで馬車がとまり、扉がひらかれる。父に手を委ね馬車から降りて見上げる城は、やはり圧巻だ。映画では、海外のどこかの城を撮影に使用したといっていたことを、こんな状態でもふと思い出してしまった。ただ、小説はヒロインである少女を起点にかかれていたし、もちろん悪役の私が登城するシーンなんて描かれていないのだ。
「お久し振りです。義理兄さん。」
「久しぶり…と言いたいところだけど、流石に側近をおいはらうのは、どうかとおもうな。それに、今の私はただのしがない食堂兼宿屋の主人なんだがね。」
「あら、いいでしょ?お兄様!呼んでも、呼んでもちっともこちらにいらしてくれないんですもの。」
王と王妃に気さくに話し掛けられ気がるにかえしている父の姿をみるのは、初めてだ。呆気にとられていると、王と王妃が私に微笑みかけてくる。
「よく来たね。ロゼリア。美しく育ったな。」
「ローズ!本当に綺麗よ!義理姉様にそっくりだわ!あの子にはもったいないわね。」
王の言葉は、単純に嬉しいと思う。だけど、王妃の言葉は聞き逃せない。もしかして、もしかするとなんだけどっ!
今なんですかっ!まさかのタイミングでフラグきたあああ~!!!(嘆きですよ…。)
早く明るい話が書きたい…。