願うこと
訪問していただき、ありがとうございます。
「お世話になりました。ロゼリアさんのお陰で、とても楽しく過ごさせていただきました。」
宰相様の奥様が本当に嬉しそうに父に御礼を言っている。宰相様が城下を見回っている間、私は、不本意ではあるけど、夫人とナタリア様を連れ城下の色々な所を見て回った。我が家の農園にもお連れして、絶対にやったことがないであろう収穫体験もしてもらった。今の時期は、色々な果物が実っている。ナタリア様が好きだというグレーと夫人が好きだというピーツと宰相様が好きだというマロウを3人で収穫した。始めは拙い手付きだった二人だけど、食堂で使う分も収穫してもらったので、最後のほうは、上手にとれるようになっていた。公爵家で食べるように幾つかおみやげにした。
「こちらのマロウは、マリア様にご用意したので、城に帰ってクッキーを作ります。」
夫人とナタリア様が収穫を頑張ってくれたので、マロウが沢山とれたのだ。宰相様が好きなものが一番多くとれてるのは、愛を感じます。もちろん、マリア様に用意したのもあるけど、お城で働く皆さんのおみやげでもあることを二人につげると、さらにはりきっていたもんね。本来であれば、三大貴族にこんな事をさせてはまずいのだろう。そもそも、私も農園へ連れていく事は、考えていたけれど、収穫までさせようとは思っていなかった。だが、私が収穫しているのをみていた二人があきらかに手がうずうず体がうずうずしていたので声をかけたのだ。
「よかったら、収穫体験されますか?」
と。結果、嬉々とした二人の答えが帰ってきて色々な話をしながら楽しい時間を過ごせた。が…夫人にもナタリア様にも「ロゼリア様」と呼ばれるのはどうしても納得がいかず、「ロゼリアさん」と呼んでくれるようお願いした。夫人は、しぶしぶではあるが「ロゼリアさん」と呼んでくれるようになってよかったけど、なぜかナタリア様は「ローズお姉様」と呼ぶようになってしまった。これも一悶着あったけど、変な所で頭が堅いのをはっきしたナタリア様の強い押しで押しきられている。年の離れた妹をバカ可愛がりしているというロナウド様に知れたら何かありそうな気がしないでもないが、私も姉妹がいないため、ナタリア様が姉のように私を慕ってくれるのは正直嬉しい。実際、三大貴族なのに、エルナと違って我が儘じゃないし可愛い。私もこんな妹がほしかったな…。思えば、私…今のナタリア様の年齢に母をなくしたのよね…。
はっ。ダメダメ。父が母がいないぶんまで愛してくれているものね。私も父と母のように、お互いを想いあえる人と巡りあえるといいな。
「まぁ!マロウのクッキー!ローズが作ったの?」
「はい。他の方にも、配ってもらうよう、侍女長にお願いしてあります。こちらは、マリア様のぶんです。」
「嬉しい。マロウのクッキーなんて、久しぶりだわ。もうそんな季節なのね。」
マリア様のその言葉には、私も同感する。城で侍女をするようになってようやく3か月がすぎ、今4ヶ月目だ。私はその間、家に帰っているけれど、マリア様は王妃教育をこなさなければいけないため、帰る事が出来ない。王妃教育を終えても立場的に家に帰る事は、無理だろう。できて、ご両親を城に呼ぶ事ぐらいだ。今は、手紙のやり取りだけで、さぞかし心寂しいとは思うけど…。それも含めて王妃になることを決めたのだから、やはりマリア様はすごいと思う。私には、真似出来ないな。ふとおもう。これからどうなるんだろう。小説ではエルナと同じように私も断罪されマリア様が王妃になった場面で話が終わった。だけど、現実は違う…。このまま平凡に普通に平和にできると良いんだけどな。ま。今はまだ平凡ってわけじゃないけどね。エルナという存在が城からいなくなったぶんは平和だ。とにもかくにも、後2ヶ月大きな問題がおこらないことを願うばかりです。
旧も含め三大貴族一覧
フラウ・フォルコット家(王妃様実家)
クリストファー家
セルゲード家




