クリストファー家のおでかけ
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ガタコト…と…馬車がわが家に向かっております。目の前には、とても22歳の息子さんをもつ母と感じさせない若くて綺麗で清楚で穏やかな公爵夫人とその娘さん。ええ。ロナウド様のお母様と妹さんですよ。聞きたくもなかったのですが、宰相様と公爵夫人の馴れ初めから現在に至るまで、知ってしまいました。宰相様19歳、夫人17歳の時出逢われたそうです。この国では珍しい貴族同士の恋愛結婚ですって。そして、宰相様20歳、夫人18歳の時、ロナウド様が産まれ、宰相様32歳、夫人30歳の時、妹のナタリア様が産まれたそうです。間が空いた理由は、跡取りのロナウド様が産まれた時点で出産が大変だったらしく、夫人の体の具合がよくなくなってしまって、次の子を産む事に躊躇していたんだって。でも…やっぱり夫人が兄弟が欲しいってことで、体の具合もよくなって、産まれてくる子の面倒をロナウド様が見られる年齢になったのを期に次の子っていう話になって今に至ってるそうです。次の子が女の子でもあったから、宰相様初め、夫人、ロナウド様、公爵家使用人すべて長女であるナタリア様を可愛がってるということだ。確かに、物凄く可愛い…。私も気を抜くとぎゅってしてしまいそうになる。まったくの他人からそんな事をされたら多分こまるだろうからしないけどね!
「うわぁ!グレー!」
「まぁ。沢山なっているわね。」
馬車の窓から、ナタリア様と夫人がグレーの木を見つけていた。この国の貴族は、家庭教師を家に呼び教育を行うが、5歳ぐらいまでは、家で基本的な事を教えている。15歳から国では学校に子供を受け入れているが、入学試験に合格しないと国の学校に入ることは出来ない。国の学校に入るのは、騎士を目指したり、城で重要な職を目指したりしている貴族の子供が多い。子息が多く子女もたまにいるが、ほとんどの子女は、17歳の謁見まで家で魔力のコントロールを身につける事に力を注ぐ。ちなみに学校を卒業するのには、単位も必要で、優秀であれば2年で卒業出来るが、5年の在学期間を使う子供が大半をしめる。さらに、ちなみにではあるけど…ロナウド様は、2年で卒業したそうです。
「さ。ついたよ。」
馬車が緩やかに止まり、宰相様が馬車の扉を開けた。いつもの見慣れた我が家。
「うわぁ…。これが宿屋なのね…。」
「ええ。そうよ。」
何から突っ込んで良いか、いや…。突っ込んじゃダメだ。この人達は、この国の三大貴族様でした。本来なら、こんな所に泊まるはずのない方々ですよ。
「いらっしゃいませ。どうぞ…。」
宿屋の扉から父が泣きそうな顔で、出てきた。
「紹介しよう。ロゼリア様の父君だ。」
「はじめまして…。アーサー・フォルコットです。」
戸惑っているのが、よくわかる父の姿を見ると、私がしっかりしなきゃって思うけど、この一家をご案内したくはないな。
「こちらへ、どうぞ。」
父が案内した部屋は、普段平民の家族連れが宿泊する部屋だ。この宿屋で一番大きな部屋であるが、大きいベッドがくっついた状態で2台と簡単なテーブルとソファーが置かれているだけだ。普通、貴族は幼少の頃から自室を与えられているので、親と一緒の部屋で眠る…ましてや、一緒のベッドで眠る等ということはない。この状況をナタリア様がどう感じるか、夫人と宰相様はどう思うのか不安しかない。
「まぁ!私、御父様とお母様と一緒なんですね!」
「そのようね。ふふ。」
見るからには、嬉しそうです。宰相様を見ると、宰相様も嬉しそうです。よかった。一安心だ。
「では、御食事はいつもの所で、後1時間後ぐらいにご用意してお待ちしております。」
「わかりました。宜しくお願いします。」
父がペコリとお辞儀をして部屋を後にすると同時に私もお辞儀をして、父と行動を共にした。
「おかえり。ローズ。」
「ただいま。御父様。」
お互いに苦笑いなのは、仕方ないよね。物凄く親子を感じるけど…。こんな事で親子を感じたくないわ…。は…。いかん!息は吸わなきゃ!
閑話のような本編です。恋愛から遠ざかった感がありますが、ちゃんと恋愛になるので気をながーくもっていただければ嬉しいです。




