セルゲード公爵家
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「私をお前の主の所へ連れて行け。」
魔力を使い、気を失った男をある程度治癒した皇太子がつめたい声で威圧していた。勿論、体の自由はない。
「くっ…。」
皇太子による魔力に逆らおうと体をもだえさせるが、力がうまく入らないようだ。
「早くしろ。馬車はこれだろう。」
娼館の馬車置場に其なりに綺麗な馬車が1台あり、娼館の支配人らしき人が青い顔をしてその馬車を出してきていた。
あれだけ大きな音をたてたのだ。あの時野次馬が次々やってきて、皇太子が事情を支配人に説明していた。というか、流石に支配人は皇太子とロナウド様をしっていた様子で、何事があったのかとすごく焦っていた。まあ…承認されていなくとも、黙認してもらっている負い目ってあるんだろうね。私が壊した色々なものは、皇太子が責任をもって弁償するらしい。その代わり、ここでおきた事は、何もなかった事として扱うようにと。もちろん約束を違えた場合、危機的状況に陥るのは娼館だろう。何があったかを説明する際、不正取引に娼館が使われて、その現場を騎士が押さえた。などと世の中に出てしまった場合、娼館にやってくる客の身の安全やらプライバシーやらを保証できないと思われてしまったら商売あがったりだろう。なので、口をつぐむしかないのだ。壊れたものは、皇太子がなおしてくれると言うのなら、何もなかった事にしたほうが賢明なのだ。
ガタガタと馬車が揺れる。王家の馬車より少し揺れるが、乗り合いの馬車よりは、乗り心地がいい。こんないい馬車を使えるのだ。きっと貴族だろう。それも、かなりの権力をもつ。
「ここは…。」
隣に座っていたロナウド様が目を見開く。ここに来るまでも、不安げな顔つきになって時々馬車の外を見ていた。
「ロナウド…大丈夫か?」
「…は…い。」
皇太子様はロナウド様を気遣うように問う。皇太子様も、この大きな屋敷が誰の屋敷かわかっているのだろう。王城には、遠くおよばないが、王家の離宮だと言われたらそうかもしれないと思うほどの立派な建物だ。
「入れてくれ。」
馬車の小窓から背の高い男に言わせると、門が開き馬車は私達を乗せたまま中に入りアプローチでとまった。
馬車の扉が開き、背の高い男を先に歩を進めさせると、どうだった?うまくいったか?と楽し気な声が聞こえて来た。
「何がそんなに楽しいのか、私にも解るよう、説明をしろ。」
背の高い男が馬車を降りきり、楽しそうな声がかかったと同じに皇太子様が馬車からおり、ロナウド様もそれに続いた。
「っ…殿下っ!!ロナウ…ド殿…。」
楽しそうな声が、驚愕の声に変わり、信じられないものをみるような、この状況が夢であってほしいと願うような態度だった。私は、ここをどこなのか、未だにわからない。何となくだけれど、ここがどこなのかなんとなくだけれど予想はついている。ただ…その予想は、外れてほしい。
「聞こえなかったのか?ルーファス。」
「は、いえ。殿下。あの…。」
「何がうまくいった?答えろ。」
どうするのだろう…。ルーファスと呼ばれた男は、必死に考えを巡らしているようだった。
「け…契約です。」
「ほう…。契約。なんのだ。」
事実を述べてるけれど、肝心な話をしていない。
「それは…当家の主に了承を獲ないと話す事は出来かねます。」
この人は、まだこの屋敷の主ではないのか。それはそうね…これだけ大きな屋敷をもつ貴族なんだものね…。聞きたく無いけれど、聞かなければいけない。
「では、余が主に問いたい。繋いでくれ。ヴォルス・セルゲードに。」
皇太子の放った言葉に思わずロナウド様を見上げてしまった。ロナウド様は、感情を全て殺したように無だった。
ヴォルス・セルゲード…公爵。その名は、エルナ・セルゲードの父の名だった…。外れてほしかったのに…。悲しい現実だった。
こうなるだろうなと、予想されてるだろう通りに話は、進みます。