ロナウド様の腕の中
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さあさあ、やってまいりましたよ。娼館に。ええ、もちろん、頭さんとご一緒に。危険じゃないかって?危険ですよ。でも、こっそり皇太子様とロナウド様が着いてきているので安心です。もちろん、頭さんには、私に危害を与えないよう魔力で体の自由を奪ってますし、変な事を口走ったりした場合も、強制的に気絶させるという手段がありますし、この作戦が頭のせいでうまくいかない場合は、城で待っている子分の人達が酷い目にあうらしい。酷い目ってどんな目なのか…考えただけでも、おそろい…。
「ほう…。よくやった。聞いた話では次期宰相が警備についていると言っていたが?」
「あ、ああ。どうも奴もこの女を厄介払いしたかったみたいでさ。大人しく退いてくれたのさ。」
「そうか。…では、これが約束の仕度金だ。」
「あ、ありがてぇ!そんで仕事と身分は?」
「その袋の中に紹介状と身分証が入ってる。娘をこちらによこせ。」
そう言われた頭さんが、私をもっていた腕をはがし、袋の中をあけてのぞきこんだ瞬間、袋を渡した人物が強い魔力を放ち、頭が泡をふいて倒れた。あまりの一瞬の出来事になすすべもなく…。このままでは、頭は絶命してしまうだろう。
「ひどい…。」
ぽつりと私が呟くと、頭が持っていた袋をむしるように取り返し、背の高い男がひどく機嫌よさげに笑った。
「ずいぶん、余裕だな?お前は、王家に見捨てられたんだぞ。人の心配をしている場合ではなかろう。」
ひどい…ひどい…なんでこんなひどい事をしておきながら、笑う事が出来るの?…この人達の弱い心につけこんで、利用して、棄てる。
「ひどい…。」
私には、我慢ができない。出来るだけ魔力を使うなと言われたけれど、私は、頭の状態をよくするために、癒しの魔力を頭に流し込む。それでも、やはり絶命寸前まで一瞬にしてされてしまった頭には、そんなに利き目がない。
「無駄だ。さあ、こい。そんなゴミに魔力を使うなど、もったいない。」
楽しそうに笑っていた男が私の腕をつかもうとして手を伸ばした瞬間、男の手が弾かれ、体が後ろに下がった。
「なっ…。」
「ゴミだと…?」
本当であれば、この繋ぎ役が雇い主の所に辿り着くまで魔力は使わない予定だった。私は、自分でも自分が押さえきれない。
ドーン!と爆発のように色んなものが弾けとんだ。みると、繋ぎ役の男が泡をふいて倒れていた。
「おい。やりすぎだ。」
隠れていた皇太子の声に、はっと気がつき、私は、ロナウド様の腕の中にいた。
「ロナウドがお前の力を押さえ付けねば、そいつは死んでいたぞ。」
「す…すみませ…。」
私は自分自身をコントロールすることができなかった事を怖いと思った。怒りに我を忘れてしまった。震えがとまらない…。泣きたくないのに泪まで勝手に出てくる。
「とりあえず、お前の治癒のおかげで、頭の命はとりとめたようだ。コイツは、城に戻し、医者にまかせる。時間は、かかるがよくなるだろう。」
そう言って、皇太子が近衛を呼び、王家の馬車に頭を乗せて城に向かわせた。
その間、私の瞳からは勝手に泪が流れ落ち、ロナウド様は私に胸をかし優しく私の頭を撫で付けていた。
「まったく…。ロナウド、いつまでそうしているのだ?」
皇太子のあきれた声が私に届く。ロナウド様は、私の頭を撫で付けることをやめない。今更だけど、ちょっとだけ恥ずかしい…。
「あ、あの…クリストファー様、もう大丈夫です…。ありがとうございます。」
「ロナウドでいいですよ。」
え?っと呟きが届いたかどうか定かではないが、ロナウド様が私を胸の中から解放した。
いったい…なんだったっ…!私…絶対顔が真っ赤ですよ!
シリアスもタグ追加するべきか…。残酷な描写で事足りてるのか。問題だ。そして、コメディになってるか不安