森のくまさん
訪問していただき、ありがとうございます。
「まあ!わざわざ収穫してきて下さったのですか?ありがとうございます!ロナウド様。」
「よかったな。マリア。ロナウドにも、感謝する。なかなか城でフランシーは食卓にあがらないからな。これからは週に1度ではあるが、城下の食べ物も、ロゼリアのおかげで城へ持ってくる事が出来るからな。」
「本当ですか?嬉しいです!ロゼリア様が週に1度お城を離れるのは寂しいですが、城下の食べ物をロナウド様が持ってきてくださるのは、楽しみですわ!」
おいおい…いつからロナウド様が常時お付きで私の送り迎えすることになったんだよ⁉次期宰相忙しいんじゃないのかっ!?私の張りつけた様な笑顔ひきつってないよね?
「マリア様、そちらはどのようにして召し上がられるのがお好きですか?」
強制的に話題を変えてやる。ロナウド様がこれからも送り迎えするなんて聞いてない、聞こえてない。
「タルトが好きです!作ったことはありませんが…。」
「そうですか。わかりました。厨房を貸していただいてタルトを作りますね。」
「えっ。ロゼリア様タルトを作れるの!?」
よほどビックリしたのかマリア様…話し方が最後の方普通になってましたよ。
「ええ。実家が食堂兼宿屋なので…。あの、マリア様。何度も言うようですが、私に様は要りません。出きればキャロルさんと同じ様に呼んでください。」
「え。…キャリーと?」
ちらりとマリア様が皇太子の顔を伺うと、うんうんと皇太子が大丈夫という念をおしてくれていた。
「では…ロゼリア…?」
「出きれば、ローズでお願いします。後…敬語も、なしで。」
うん、立場的にはこれがいいよね‼というか、親密さも増すし!
「う…。ど…りょくしま…する。」
敬語を不意に使っていたのを途中で気がついて普通に話そうとしたんだろうという事が、まるわかりだけど、頬をほんのり赤くそめているマリア様…かわゆすぎます!ヒロイン半端ないわ!
「では…タルトをつくって参ります。」
にっこりとマリア様に微笑んで見返し、部屋を出たら何故かロナウド様が一緒に部屋を退出していた。
「お仕事…ですか?」
「ええ。」
「そうですか。では…。」
ぺこりとお辞儀をして厨房方向に足を進めるとなぜか3歩後ぐらいをロナウド様がついてくる。私が歩をとめるとロナウド様も歩をとめる。私が歩を進めるとロナウド様も歩を進める。なんなのこの森のくまさん状態は!!!
「…もしかして(私の見張りですか?)厨房にご用事ですか?」
「いえ。城内の見回りです。」
「そうでしたか。ご苦労さまです。では…。」
はい。完全に私の見張り決定ですね。まあいいけど。見張りたいなら見張るがいいさ!
まったく無駄だけどねっ!!
厨房がみえる位置でうろうろしてるロナウド様。期待してるところ申し訳ないけど、私は普通にタルトつくりますよ!マリア様を害する事なんて、絶対ありえないから!
「うーん。いい香り。」
タルトの生地の焼けた匂いが鼻を擽る。キャロルと侍女長用にもってきたフランシーで少し日持ちがするジャムも一緒に作っていたので、それも混ざりあって厨房は甘い香りで満たされている。
「しあわせぇ~…。」
ジャムを少し冷まし、家から持ってきた小さな小瓶につめる。3回ぐらいで終わってしまう量だが大量につくってあげたとしても、日持ちがしないのでこのぐらいが一番いい量なのだ。
「何をしているの?」
幸せにひたっていたのに、かなり研ぎ清まされた刺のある声に私は瞬時に自分の回りに結界をはった。その行動は、はっきりいって間違っていなかった。マリア様のために作ったタルトと侍女長とキャロルのために作ったジャムは無事だったけど、使っていた料理道具が無惨に床に転がっていたからだ。そして、目の前には、不機嫌な様相も隠そうとしないエルナの姿があったからだ。
サブタイトルが森のくまさんて…どうよ。と自分でも思う。