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Prg-a Page.01

Twilight Method

Chapter Ⅰ : Prayer caught , metrocyte.


Prelude


 今から、およそ180年前。

 江戸城、吹上庭園の地下祭壇。

「ついに…成功なのだな」

「その、ようですね……とうとう、やってしまいました」

 二人のとこの声があった。そこは殺風景極まれりといった内装の部屋で、光が差し込む様子はない。部屋の中央にはいくつもの行灯に囲まれた飾り気の少ない祭壇がある。それを挟んで、白い軍服を着て片眼鏡をかけた男。もう片方には、少ない白髪で紋付袴をまとって刀を脇に差した男だ。紋付袴の方が、圧倒的に年上のようだった。

 二人の間にある祭壇はわずかな装飾と、そこを囲む二人の男の胸程度の高さだ。その天辺は平面で、幼い子供が横たわっている。

「長かった。儂等の悲願じゃ」

「ええ。何年かかかりましたかね。いくらかかっても実現させるというのがお約束ではありましたが、それにしても長かったですねぇ」

「ざっと、15年よ」

「御門様の髪も、それは白くなるはずでございますね」

 紋付袴、白髪の老人の後ろに、暗がりから女が現れる。

「その名で呼ぶでない、不謹慎ぞ」

 半身ほど振り返り老人は背後の女に向けて言った。女は着物姿だった。到底清楚とは言い難い色のある柄物で、しかし意匠は業物。まるで吉原の遊女の中でも玄人のそれだ。両肩を出しているが、しかしそれより襟が下がることはない。一風変わった着こなしだった。傘のある黒髪は、紫色の簪が五本も使われてまとまっていた。

「あら、失礼をいたしました。厳生様」

「まあ、いいではないですか。ここのいるのは私たち四人だけ。しかも一人は眠っております。お気になさらずとも」

「こういうときに口を突いて出ることは、普段も危ういというものじゃ。気をつけよ、巫胡」

「はい、貴方様」

 老人ー御門厳生はまだ何か言いたそうだったが、言い含めるように一度ゆっくりと瞬きをして、正面の男に向き直る。

「さて、綱砥殿」

「ええ、厳生殿。この童は、すでに私どもとは別物でございます。闇の血”未完”を体内に受け入れ、さらには宙脈を拾う、たった一人の新たな人であります」

 綱砥と呼ばれた男がうやうやしく申し上げる。

「…これが始まりじゃ。ここから、この世は変わり始める。儂等が願った、彼岸の世界に、橋が届く」

 暗く昏い、江戸城の外れの吹上庭園の地下。

 日の光の刺さないそこで、新たな光と闇が、確かに生まれたのだった。


 そしてそれからおよそ180年後。

 かつては江戸の治めた国、日本は、人工島を下ろして接地させ、初めて陸続きの国境を得ることとなる。

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