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死神少女  作者: 平乃ひら
Neun
156/163

156.ハンス10

 霧の中を歩いているとは考えにくい。人が集合しているようなところで噂をばらまいている奴がいる。

 街中がおかしくなった原因の一つとして、この霧に乗じて毒を撒いている連中がいるという噂がある。ではどうやってそれを効率よく流すべきか、不安を抱える連中が集まり、どこで演説すべきかを真っ先に考慮した結果、最初に出てきたのは神教官府とシャングリラ孤児院だった。


(だが神教官府には二人を除き誰もいなかった)


 スティーブとホマーシュが神教官府に乗り込んだ時は人がいたものの、今はもぬけの殻となっていた。あの建物にいた時間はさほど長くないものの、効率よく避難誘導でもする人物がいたということか。


(……そいつがそうか?)


 神教官府に残ったのはそれこそ重要人物ばかりと呼べるような連中ばかりだ。ペシェルを筆頭にアウグスト、セーラ、実験の生き残りたる自分達に――テース。この国の中枢からすればそれだけの脅威に足る連中ばかりが集まっていたのだ。


(だからこそ無関係な人達を遠ざけた。当然、安全を確保するためじゃない。余計な目撃者を減らすためだ)


 街に起きている異常事態は一階に居た少女と中年の男から聞いている。不特定多数の人間狩りなぞぞっとしない話だが、実際に起きているというのだから対処せざるをえないだろう。


「シャングリラ孤児院には……」


 ここも人がいるとは思えない。あのテースがいたのだ、彼女が何もせずにあの孤児院を放置しておくだろうか。


(……いや、読めないな)


 今のテースは自分が知っているテースとは違う。


(なら、奴らはこれだけ混乱させた後、どこに避難している?)


 すぐにこの街を出て行ってしまっただろうか。

 あるいはさらに別の作戦でも展開しているだろうか。


(ただの犯罪者ならばまだしも、国が相手か)


 もし噂を流す人物を捕らえたとして、それだけで解決する問題だろうか。ここまでやるのだから連中の意向は明らかであり、その目的の為ならばもっと最悪な次の手段を用意してあったとしてもおかしくはない。


(それでも捕まえる。人が集まりそうなところは)


 もし人々が恐怖に脅えて頼る場所があるとするなら、他にどこがあるだろうか。国家機関と綿密に繋がっているような場所なら特に都合が良いだろう。あらゆる情報が手に入り、追われた人間が駆け込む場所といえば。


「――まさか」


 スティーブは足を止める。走っていたせいで高鳴る鼓動はそのままに、ある方向へと振り返った。


「警察か……?」


 スティーブが築き上げてきた仮説が見事に当て嵌まっていく音がする。


(もしそうなら……何人だ。どれだけの人間が警察内部で犯行を行っている……?)


 舌打ちをして、スティーブはこの霧の中古巣へと帰還する覚悟を決めるしかなかった。


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