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死神少女  作者: 平乃ひら
Neun
138/163

138.

この話から最終章となります。

もう少しだけ死神の少女と少年が巡る運命にお付き合いいただければ幸いです。

 何を諦めたか、それを考えるのすら止めた。

 少女は己の心と初めて向かい合い、そして何をしたいかを考える。今までしたいことを考えたことのない脳は初めての、そして経験のない思考に戸惑い、苦しみ、絶望した。自分には何もないことを知り、しかし今はもうかつての自分に戻ることすら不可能なほど事態は混沌として進み、何もかもが手遅れとなる中で自分だけが出来る答えを敢えて見つけ出すしかない。

 白と黒の少女。

 今の自分は灰色だ。

 かつては使い分けていた色も、灰色でこそとどまっているものの――限りなく黒に近い。


「何をすればいいんですか」


 誰もいないからこそ、誰かに問う。

 世界で唯一の神として誕生した少女の問いに答える者は当然、苦悩する彼女を救える人間もこの世には存在しない。神とはそれだけ尊き者であり人々の願いによって形成され、それ故に人々の願いに関しては神として行使する力を有し、人間である限り次元の違うその神へ近づくことすら許されない。

 そして彼女は――死を望まれた神だ。

 死を司るのでもなく、死を操るのでもなく、死を望まれた存在なのだ。彼女が出来るのは人間がもっとも望む死を与えることのみ。


 ――そんな自分に出来ることは、何か。


「私は……」


 いくら考えたところで何も答えは出ない。


「ハンスさん……」


 何も考えずに神としての行いをこなしていた少女の心へと割り込む、余計な雑念。その名を呟き、顔を思い出す。決して関わってはいけなかった少年。関われば何もかもが崩壊してしまうと知っていたのに、彼女は自分からハンスに関わっていってしまった。死を望まれている神様としての役目を全て否定する少年は、いわば彼女にとって毒薬にも等しい。


「ハンスさん……私は、いえ、私に何を望んでいるのですか。死を望むのではなく、貴方は私に人間であることを望んでいるのですか。そんなこと無理なのに」


 そしてその望みは彼女にとって酷く残酷だった。


「……でも私は」


 もし人間として暮らしていたら、今頃どうしていたのだろうか。全く違う自分というものも想像が付かない。こんな性格ではなく、こんな何もかも諦めてはおらず、時には感情に身を任せ、友人と共に学校にでも通っていただろうか。


「友人……」


 ――唯一の友人の魂ですら、自らの手で。


「……ッ!」


 視界が歪む。頭痛が起こる。今更何を苦しむことがあろうか。いや、苦しみは常に有り続ける。ならばどうして同じ苦しみでもこうも濃度に差が出てくるのか。


「アンジェラさん……もし、貴女が私に望むとしたら、死以外の何を望みますか?」


 死した友人に問いかけた時、ふと答えが頭の中に返ってくる。


「そう、ですね。もしこんな私が出来ることと言えば」


 何もかも見通す目と逆らうことを許さない神の言葉を有す少女が出来ること。


「それは――」


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