いじめをなくしたいなら、クラスを無くせば良いじゃないか
「海原美香さん、起立!」
私は、席を立つ。
「今日から、障害者学級に入ってもらいます。変に悲しまないでね。あなたにとって、これが最も良い選択だから」
洗濯。私は自分の心を洗い直す。
「ほんじゃあね、美香」
教室に一人残された私は、周りのヤンキーどもを見て、少し安心した。
次の日、連れてこられたのは障害者学級。一クラス、私を含めて3人。
……見た所、馬鹿な人たちではないようだ。
「なんだよ。あんまり、ジロジロ見んなよ」
と、短髪で白髪の見ためが高校生の人に話しかけられる。
「ねえねえ、別にそんなに起こることないでしょ?」
と、仰るのは小学校小学年から中学年に上がったところの年の生徒だった。
「っていうか、これで学年も違うのにどうやって授業するんですか?」
私は隣の花橘先生にそう尋ねた。
「んん〜、そうですねー。ま、授業自体は、各々別室でやってもらいます。一人の生徒につき一人の先生ですね。成績がガンガン上がりますよ。なんせ、とっても細やかに一人の生徒を指導できるのですからね」
花橘先生はむふふと笑う。
さて、私たち三人が集まるのは、朝と帰りのホールルームと、弁当の時。あと、授業中の10分休み。そんだけ。気が楽だ。ーー前のクラスに比べたらな。
そんな生活が数日たった。どうやら、白髪で短髪の男の子、遠山悟と、小学校三年生の女子児童、児童課西瓜は相当仲が良いらしい。だってさ、遠山悟は高校生一年生。
私、海原美香さんは中学二年生。先生にはADHDとかASとかいわれた。
そして、だったらここに同類は集まっているのかな?
お昼の時間になった。私は別室の授業を終え、教室の、3つしかない席のうちの一つに座る。あと、そうだ、この給食の時間、何故か机をくっつけなければならないのだ、二人と。
私たちは机を動かして3つをくっ付ける。こんなのいつものルーチンワークだ。二人、児童課西瓜と、遠山悟も、各々に給食をよそって、机に運んできて食べる。私は常に先に弁当を食べてる。
この二人と、会話することも、特にない。んー、明日のおかずは何かなとか、というそんなことしか思いつかない。そうか、あんたら二人で仲良くやってくれ。私はぱくぱく飯を食べる。
因みに、給食と弁当のどっちを食べても、別に良いらしい。年齢が一定になっていないことが原因だとか。まあ、どっちでもいいかな。私は、その日の朝の気分で弁当を持って来るか来ないか決める。
今までずっと、弁当を持ってきた。
……児童課と遠山は、それはそれは楽しそうに話す。高一と小3で、およそ10年も年が離れている。が、本物の友情には、そんなものには影響されない。
のかな。とか、思いつつ、私はあと少しで弁当を食べ終わる。口にかき込む。そうしようと思った刹那、
「ねえ、海原美香さん。ねえ、仲良くしよう」
と、遠山が言ってきた。
私は箸を置く。
「実は前々から、あなたのことが気になっていたのです。僕たちは人間ですし、仲良くしようね」
しましょう、と遠山は言う。
西瓜は何か心配したような目でこちらを見つめてる。
「……私は、仲良いとか、仲良くとか、そういうのが嫌で、とても嫌だったんです。ーーーーここにこれて、とても安心しています」
生徒の人数が極めて少ないですからね、と私は言う。
だが、遠山君は言う。
「ーーでも、結局、私たちは、人間は、仲間同士と仲良くしていかなければいけないのです。海原さん、あなたはわたしの昔に似ているーー」
「そうだよー」と、西瓜ちゃんが言う。
「でも、いじめとか、人が幾らか集まっているのが原因じゃないですか。私は、いじめを、許せない」
私はフォークを弁当のおにぎりに突き刺す。
「まあ、まあ、そう怒るなって。まあ、気が向いたら、気軽に話そう」
そう言って、遠山君はいつの間にか食べ終わった給食の後かたずけを済ませて席を元に戻してしまった。遠山君がさっきの最後の話のすぐ後、また西瓜ちゃんは、私にそうだよー、と言った。
人間関係について、私は少しだけ考えを変えた。だって、少しだけ遠山君に感化されてる。




