俺のチートは追い抜かれた!?
勘違い、引きこもり、最強な主人公の本格的な異世界生活が始まる前の前日譚。
中学2年の夏休み初日。胡散臭そうな『神様』、俺の通称『爺ちゃん』に会わされた俺は、いくつかのチートを携え『異世界イース』に『勇者召還』された。で、普通に『魔王』を倒し無事帰還した。ここまでなら、ただの王道異世界物語だったのだろう。
俺『異世界召喚』から時が流れ、高校2年の冬休み初日。……俺は地球でも使えたチートを隠し、平凡な一般市民として生きていたのに。……何故かまた『神様』と対面する事となっていた。
「なあ、もう会う事は無いって言ったの爺ちゃんじゃないか。いや、また会えたのは嬉しいけどさ」
「いや悪い。わしもお前とまた会えたのは嬉しいぞ?」
「で、俺なんでまた召喚されそうになってる訳?」
「お前の隣に居る奴が『勇者』として召喚されたんだわ。さすがにそっちの世界の人間の行動は管轄外だ」
それから聞いた爺ちゃんの説明によると、新たな『勇者』なイケメン君の召還に巻き込まれる形で、『世界イース』に再び俺は呼び出されるらしい。……しかし、その世界は俺が『勇者』をしていた時代より200年後の世界との事だった。
「お前はもう『勇者』でもないから、好きに生活して良いぞ。その能力があれば生活にも困らんだろうし」
『勇者』が大変なのは知っているが、今の『魔王』は今の『勇者』に任せる事にしよう。うん。目立つからチートは押さえて、のんびり安全な異世界生活を今度は楽しむことにしよう!とわくわくしながら爺ちゃんと別れを告げた。
この時の俺は、神様から貰ったチートは永久不滅でチートなのだと、馬鹿な事を考えていました。人類の飽くなき追求と、革命的に進む進化を舐めていました。本当にすみません。俺が馬鹿でした。
ーそして懐かしき異世界に到着した……けど。
ライフライン完備。
パスタにわらび餅が付け合わせ。
長屋とレンガ屋が混ざる商業街。
石造りに畳な王室。
赤絨毯の謁見の間に鹿威しと勇者のツッコミがよく響く。
「なんか違う!!!!」
ー結論からして全て俺の所為だったが。
(まあ、前と違って便利になったし、生活しやすそうだからギルド登録して普通に町で……)
「先代勇者様のその剣の一振りは千の魔物を吹き飛ばした、と言われているそうです」
(へ?)
「すっげーな!」
「勇者様もきっとすぐに出来る様になりますから」
(え?……『先代勇者』って……俺だよ!?そんなの出来る訳無いから!)
ー現在の主流武器は魔導銃、英雄化されすぎた『先代勇者』つまり俺。
「いや、そんな沢山の魔物を一撃でなんて出来るんですか!?」
「はい。私もさすがに千とはいきませんが、Cランクを数十匹位なら。慣れればEランクを十数匹位は誰でも倒せる様になりますよ」
この時俺は周囲を完全にシャットダウンし、ひたすら焦った。
(いや俺千とか無理だし、むしろ雑魚だろうと一匹づつ切らないといけないし、しかも普通に皆できるらしいし、走り抜けるだけで壊滅出来るとかもうそれ何所の無双系ゲーム!?俺これ以上ステータス成長しないの分かってるし、ってかこの戦い方すっごく恥ずかしくて誰にも見せらんない!?)
そして俺は決意した。
(田舎で暮らそう)
後ろ指さされて笑われる位なら、ひっそり一人で暮らそう。俺はもうチートでは無くなってしまった様だけど、幸い暮らすのには困らない位の能力はあるって、出発前に爺ちゃんが保証してくれたし。モンスターの強さだけ確認して、どっかの森の奥深くでひっそり『魔王討伐』を待とう。うん。
異世界も200年あればチートを追い抜けるらしい。
シャットアウトしてしまった彼は気が付かなかった。
「けどAランク以上を倒せる人がほとんど居ないんです」
と言った彼女の次の言葉を。
彼の知る速さで翔る人間は、もうほとんどいない事を。
彼のあまりな勘違いに、爺ちゃんが笑い転げ回っている事を。
主人公が『勇者』だった時代は『速さ』が重要だったので
勇者パーティは皆、風の様に走れます。
その速さで皆戦える物だと勘違いしているので
実際戦えば主人公の圧勝です。
爺ちゃんは見た目が爺ちゃんなだけで、しゃべり方は大体普通です。たまにふざけて爺ちゃん口調を使います。お茶目でいたずらっ子でもある神様。
ステータス(この世界に覗く能力は無し)
ランク付けはFから
F F+ E E+ …… A+ S SS SSS X
『主人公』
体力:X
魔力:A
魔法適正:B+
攻撃力:S
防御力:S
器用さ:SS
素早さ:SSS
賢さ:S
『先代勇者時代』のCランク冒険者ステータス平均
体力:B
魔力:C
魔法適正:D
攻撃力:B+
防御力:B+
器用さ:C
素早さ:B+
賢さ:C
『現代勇者時代』のCランク冒険者ステータス平均
体力:C
魔力:B+
魔法適正:A+
攻撃力:C
防御力:C
器用さ:D
素早さ:D
賢さ:D+
『現代勇者』
体力:B+
魔力:SS
魔法適正:X
攻撃力:C
防御力:C
器用さ:B
素早さ:A
賢さ:B+
魔物を吹き飛ばせるのに攻撃力と防御力が低いのは
それがすべて魔法によるもののため。
魔法具と魔法を取り上げてしまえば本体は弱い。