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03話 - 黒以外は認めない!

誤字・脱字・文法の誤りがあったらごめんなさい。

「ありがとうございます。此方が代金になります」

「あいよ」

 ……予想外に高く売れたな。

 ガリアーナの商会で反物を捌いたのだが、意外にいい値になったのだ。

「此方で何か購入されますか?」

「いや、この後にちぃっと野暮用があるんだ。今回はパスだな」

「そうですか、では又のお越しを」

 商会の男は優雅に一礼した。


 反物を下ろした馬車に戻る。

「このままラグネに向かうんですか?」

「いんや、ガリアーナ(ここ)でちょっと買い物だな」

 苦笑し、ローゼのドレスを見ながら返す。

「まずは服だ。そんなんじゃ目立つだろう。それに何時までも同じ服だときついだろうしよ」

「え? ……あ///」

「さっきの商会から紹介状を貰ってる。まずはそれで服を揃えるぜ、ローゼ」

 少女の額を拳でこつんと叩いた。




「黒以外は認めない!」

 ……断言する! 黒以外はありえない、と。

「えええ!」

「黒のサイド紐! 流石にスケスケや文字通りの紐とは言わない! それでもこの黒と黒のフリフリは外せない!」

 ローゼは俺が断固主張する物――黒の小さな衣類を手に取り、顔を真っ赤にする。

「こ、こんな、こんなの!」

「俺はこれ以外を認めない! もし、それ以外を穿こう物なら、力ずくで毟る!!」

「毟る!?」

「ああ! 毟る! それが嫌ならこれを穿け!」

 ガハアッ。

 吐いた息が、大気との温度差で白く濁る。

 いろいろと頭が湧いているが気にしない。

「さあ! さあ!! さあ!!!」

「いえ、ちょ、ちょっと待ってください! アッシュ様!」

 ローゼが後ずさりする。その表情がかなーり引き攣っているが、これも気にしない。

「私、く、黒なんて、身に着けたことありません! こ、こんな、恥ずかしい……」

「白の清楚もいい、ピンクの可愛いらしさもいい! だが、やはり黒こそ至高の色だ! 俺はそれ以外を認めん!」

 一切恥じることなく断言する。

 周囲の女性から絶対零度の視線、周囲の男性から賞賛と英雄視の視線。

 ここで一句。――我が言葉、秘めた想いに、迷い無し。

 ……うむ、いい出来だ。

 と、俺とローゼのやり取りを見たのか、衣服店の女店主が苦笑しながら出てきた。

「そこの彼女……」

「あ、あ! 助けて下さ…………」

「彼氏の求める色を身に着けるのも彼女の役目だよ。いい女なら、ここは従うもんさ」

 ……おお、神よ!

 店主の背後に後光が見えた、気がした。

「ひーーーーーんっ」




「お父様、お母様。…………ローゼは悪い子になってしまいました」

 よよと泣き崩れる。

「ひーはー! テンション上がってきた!」

 ローゼとは対照的にテンションが急上昇だ。

 現在、ローゼはワンピースに厚めのカーディガンを羽織っている。

 それぞれの色合いは、明色系の真珠色と桜色だ。

 しかし、その下に身に着けているのは…………。

「お父様、お母様。どうか、私を許して下さい」

 ちらりと視線を向け。

「むふっ♪」

「…………うあ///(……クラッ)」

「おっと」

 ……あらら、やりすぎたか?

 顔を染め、目をグルグル状態にして気絶してしまった。


 気絶したローゼを馬車に放り込み、一人街中へと繰り出す。

 一応、約束した以上は全力を尽くすのが俺の主義だ。

「こいつとこいつもくれ」

「あいよ」

「ああ、後『機巧式銃剣(ガンブレード)』の『装填用弾薬(カートリッジ)』はあるか? 規格は六弾式回転機巧(シックスリボルバー)だ」

六弾式回転機巧(シックスリボルバー)か、また珍しい」

「ああ。けっこうな骨董品(アンティーク)らしいからな、俺のは」

「骨董品? 誰の作品だい? 銘は打ってあるのか?」

「ろ、ろー……、ローゼン? 忘れちまったわ。一応、エディルエイド共和国で、知り合いから譲ってもらったんだ。銘も教えてもらったが忘れた、読もうにも古代語で書かれてて読めねぇ」

「おいおい。まぁ、いいや。……ちょいと待ちな」

「ああ、後、装填用弾薬はハルモニア産の魔力式で頼む」

 店主は背後の棚をくまなく探しながらぼやく。

「また随分と品薄を求めてくれる。…………………………おお、確かこいつだったな」

「それだ。そいつを2カートンくれ」

「あいよ、以上かい?」

「ああ、会計を頼む」

 会計の最中。

「最近首都で変わったことはあるかい?」

 支払う金額を水増しする。

「……………………」

「いいとこのお嬢様が誘拐されたとか、もしくは何らかの大事件が起きたとか、些細なことでもいい。少なくとも遡って三月分は知りたい」

「……………………」

 僅かな間、沈黙が場を支配する。

 やがて。

「ラグネに向かうのかね? 若いの」

「ああ」

「そうかい」

 好々爺とした店主の仮面を取り外し、情報屋(・・・)は告げた。

「……―――。――」

「――!」

 瞬間、息を飲んだ。




 ガタゴトと馬車が揺れる。

 ガリアーナを発って暫く。

 俺は、ローゼを弄って遊んでいた。

「ほい。8切り、でジョーカー、1のダブル、ラストに2、2、4で上がり」

 中央にダイヤの4を出し、手札を空にする。

「これで俺の五連勝目! さあ脱げ!」

 ゲームは脱衣大富豪だった。


「あ、う///」

 すでに靴両方と靴下両方を脱いでいるのだ。

 残るは文字通り着ているものしかない。

「ぬ~げ♪ ね~げ♪」

「うー……」

 恨みがましく睨むが、気にしない。

 世は無常なのだ♪

「ほら、ぬ~げ♪ ぬ~げ♪」

「……くっ」

 うほっ♪

 桜色のカーディガンを脱ぐ。なんというか白くきめ細かい肌が妙に艶かしい。

「さて、もう一勝負♪ Let`s Play !!」

「もう堪忍してください!」

「い♪ や♪」

「ひーーーーーんっ」


 しくしく、しくしく。

 背後からもの悲しげな、でも僅かに恨みのこもった泣き声と怨念が届けられる。

 ……あらららら、やりすぎたか?

 あの後、脱衣大富豪で勝ち続け、まっぱ直前まで剥いてやったのだ。

 元々が高貴な生まれらしく、異性に肌を晒したことなどないのだろう。

 その慌てぶりは中々に見ものだったといっておこう。

 今現在は、馬車の奥で毛布に包まって恨みの念を発信し続けている。

 因みに、着ていた衣服は黒い布切れ以外俺の横に畳んで置いてあったりするのだが。

「あー……、そろそろ機嫌直せって、な」

 しくしく、しくしく。

 ……やべぇ、随分とへそをまげていらっしゃる。

 背に脂汗が流れる。

 思わず調子に乗ってしまったと後悔した。

 ……。

 ほんの1ピコグラムほどだが。


「まぁ、機嫌を直せって、な」

「うー……」

 毛布に包まったまま少女はポツリと呟いた。

「……(けだもの)です」

「ふははは! 今頃気づいたのか?」

 ドゴォンッ!

 直後に不可視の衝撃が奔り、俺は空を舞った。



 曰く、窮鼠猫を噛む、南無。

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