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31話 - 嵐の前の、静けさ?

誤字・脱字・文法の誤りがあったらごめんなさい。


正直ごめんなさい!


今回の物語が本来昨晩上がるものでした!




ガチでサーセンッ! m(_ _)m

「アッシュ兄、大丈夫?」

 目の前で突っ伏して動かない男の体を揺さぶった。


 長時間の激務が終わり、今は閉め作業の後。

 厨房の奥では店主様が賄いを作っている。

 厨房の奥からは鼻腔をくすぐる芳しい匂いが漂ってきている。

 クリーム系の匂いから察するにきっとシチューかなんかなのだろう。

 実においしそうだ。

 が。

「……」

 目の前の死体の如き男を前にそれどころではなかった。


「ねぇ、ねぇ……アッシュ兄……」

 大丈夫だと思う。

 でも心配が止まらない。

 睡蓮姉のしごきに耐えたアッシュ兄なら大丈夫だとは信じているが、それでも……。

 思わず、その体を揺さぶりながら不安そうな声が出る。

「おきて、アッシュ兄、ねぇ…アッシュ――」

 兄、と言おうとした時だった。

「大丈夫だ! 何も問題ない!」

 といきなり件の青年が突っ伏したままグーサインを出す。

「あ、アッシュ兄!」

 思わず喜色の満ちた声を上げる、が。

「おう、何も問題はない。 あの川を渡ればいいのだろう?」

「……へ?」

 思わず目が点になる。

 だが、独り言(?)は続く。

「何っ! 渡し賃が六文だと! 高い、少しまけろ!」

「……六文?」

 なにやら嫌な予感がしてきて、止まらない。

 川、六文銭、ここから想像できる光景は……。

「出せて、四文だ!」

「……」

 値切った!?

 まさかの言葉に、目と口とが三つのOを作る。

 が、さらに言葉は続いた。

「乗せないだと! ならもう頼まん! 歩いて渡るから!」

「……は? 歩き?」

 川を?

「水上歩行など武法術の初歩中の初歩!」

 そういえば、睡蓮姉も白澤爺も水面の上を歩いていたような……。

 と、ここで私の嫌な予感が現実となる言葉が放たれた。

「ん? おっ! 向こうにいるのは結構前に死んだばっちゃんじゃね?」

 ……。

 ……。

 ……。

「おきてぇ! アッシュ兄!」


 ズンッッ!


 ……。

 後に近隣の住人が語ったところによると、一瞬だけ地震のような振動があたり一帯を襲ったらしい。

 ……。

 まぁ、真相は闇の中で――。




 ◆◆◆【アッシュ・グレイ】◆◆◆



 後頭部に激痛が走り、気付いたら地面にめり込んでいた。

 ……。

 いや、冗談だと思った人も多いと思う。

 おれ自身も体感していなかったら冗談と笑い飛ばしていた事だろう。

 ……。

 だが、現実は小説より奇なり、と。


「こういうのを最悪の寝覚めというのだろうな、きっと」

 後頭部に氷嚢を当てながら呻く。

 むしろウルの全力の打撃を受けて、熟れたザクロのようにならなかった我が身に賞賛を送りたい。心の底から。

 でもって、今その件の娘は申し訳なさそうに俯きながら俺に氷嚢を当てていた。

「……ごめんなさい」

 ……はぁ。

 かるくため息をつきながら呻く。

「……まぁ、あれだ、一般人には同じことをやらないように」

 俺やルーナならまだしも、ローゼとかにやったらガチで洒落にならん。

「……うん」

 俺の言葉に、小さく頷いた。

 ……やれやれ。




 突っ伏しながら、体の中を探る。

 おきてここに来たらそのまま強制労働の刑に処されたのだ。

 メディカルチェックなんぞやっているわけがない。

「……せめて、半分ぐらいだと助かるんだがねぇ」

 目を閉じると意識を集中させた。


 生命の流動。

 またそこから生まれる気巧の力。

 それらを事細かに探っていく。

 自らの力を知ることこそ強者の証である。

 そして、少なくとも俺は自らの最大値は把握している。

 結果。

「MAXの三割、か」

 ……武法術は当てにはできんね、どうにも。

 やはりというか、なんというか、削れた生命力が全快するには今しばらく時間が欲しい感じであった。

「……はぁ」

 ため息一つ。

 今日の激務が体にこたえたのも、それが原因だろう。

 別段後悔はしていないし、現状に不満もない。

 だが僅かながらの不便は感じている。

「……やれやれ」

 苦笑を一つ、我が身の至らなさを反省した。




 ……。


 それはウルに後頭部を冷やしてもらいつつ、まったりとしていた時だった。

 突如。


「ぬおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!」


 というおじさんの驚愕と恐怖が入り混じった声が聞こえた。

 反射的に走る。

「っ!」

 今の声から聞こえた感情は割りと本気だった。

 あのおじさんがあれほどの大声を上げたのだ。

 何があったにせよ急いだほうがいいだろう。

 上手くいかない武法術を回しつつ、体内のギアを戦闘モードに入れ替える。

「ウル!」

「うんっ」

 流石に付き合いが長い。阿吽の呼吸。

 俺の後を寸分も離れずについてきた。


 そして、幸か不幸か予感は当たった。




「おいおい………………ある意味、洒落になってねぇぜ」




 ◆◆◆【ウルカヌス】◆◆◆



 一言で言うのなら、「蛇」。

 二言で言うのなら「銀色の蛇」。

 それ以上で言うのなら「人の背丈ほどの銀色の蛇」だ。

 ……。

 どちらにしろ黒焔龍(わたし)の勘が、なにかを訴えていた。


 っ!

「アッシュ兄! 何を!」

 いきなりアッシュ兄が蛇に手を伸ばしたのだ。

 だが。

「ケリュケイオン、お前なのか!?」

 アッシュ兄は驚愕に満ちた顔をしていた。

 シュシュシュシュッ。

 蛇もまるでじゃれ付くようにアッシュ兄の手に絡みつくと、そのまま腕、肩と昇り、アッシュ兄の頬に擦り寄る。

「あいつの気配がする。……やっぱりケリュケイオンだ」

 シュシュシュシュッ。

 銀の蛇はまるで微笑むように、アッシュ兄の言葉に応じた。


 やがて蛇はその口を開けると黒い塊を吐き出した。

 大きさは精々握った拳の半分ほど、だがその表面はまるで黒曜石のように輝いていた。

 だが、それを見たアッシュ兄が呟いた。

「……封言石か」

「封言石?」

 思わずその呟きに問いかける。

 僅かな沈黙の後、小さく教えてくれる。

「魔力を用いて文字を刻む、魔具だ」

 そのまま、アッシュ兄が指先を当てたかと思うと。

 ポウッ。

 その指先から魔力を流し込んだ。


 反応は静かなものだった。

 封言石の表面に変な幾何学模様が浮かんだだけなのである。

 だが、逆にアッシュ兄の反応は顕著だった。

 幾何学模様を見て、きつく目を閉じたのだ。

 そしてその身からは、僅かな焦燥が立ち上った。




 ◆◆◆【アッシュ・グレイ】◆◆◆



 浮かんだのは模様ではない。

 ハルモニアの一部で使われている古代神聖文字だ。

 そしてこれは現在、神殿の高位神官とある存在(・・・・)がつかっているだけ。

 ……。

 つまりは、これは本人からの要望で間違いないだろう。

 だが……。

「あいつが、身からケリュケイオンを離すだけで大事なのに、その上、『助けて』か……」

 そう、封言石に込められていたのは助けを求める一文だけだった。


 ……。

 僅かに思考する。

 もとより断れる相手ではない。

 ならば……。

「山を三つ、それに海峡も越えなきゃならんな……。いや、ウガロ湿原を越えれば山二つはショートカット出来るな……」

 あの国は女神の結界が何重にも張られている。

 ウルやルーナは同行させないほうがいい。

 ならば、やはり一人旅だろう。

「ウル、水と食料を買って来てくれ」

 そのまま懐からコインが詰まった袋を投げ渡す。

「出来れば日持ちするものがいい。水もたくさんだ。後、馬車も補強するよう業者に依頼してきてくれ。至急だ」

「え、え?」

「速ければ明日の朝にでもイシュタリアを立つ」

 ウルの返事は聞かず、そのままケリュケイオンに向かい合うと。

 ――入力・封印。

 封言石に俺からのメッセージを書き込む。

「こいつをお前の主人に届けてくれ」

 ケリュケイオンは嬉しそうに目を細めると、石を飲み込む。

 シュシュシュシュッ。

 僅かに鳴くとそのまま信じられないような速度でどこかに消えてしまった。

 おそらくは主人の下に帰ったのだろうが……。

 どちらにしろ、予定は決まった。


 祭を最後まで見たかったという思いはあるが、またの機会。

 今晩にでもローゼに挨拶しよう。



 そう思った瞬間。


(――我が君よ、伝えねばならぬことがある…………)


 ルーナからの念話が聞こえた。

ご感想・ご意見・各種批評・間違いの御指摘などをお待ちしております。




マジですんません。


正直昨日はフラフラしながら作ったからだと言い訳させてください。


これが正解です。


いや、だってこれがなきゃ皇国編の後のハルモニア教国編が始まらんので……。


まぁ、口直しと思って読んでいただければ幸いです、はい

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