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26話 - 奇跡の名は……

誤字・脱字・文法の誤りがあったらごめんなさい。


少し短いです。

 瞬間に『縮地法二式・天翔翼』を使用。

 雷精獅子(レグルス)の瞬撃から逃れる、が。

「ちっ!」

 盛大な舌打ち。

 次いで頭上から叩き落された一撃を化勁で受け流した。


 雷速の機動から、実体化による大質量・大威力の一撃。

 ダメージは受けなくとも、その衝撃は面倒なものである。

 正直、実体化した精霊は幻想種となんら変わらない。

 それが大精霊なら、下手をすれば中位幻想種に匹敵する。

 特に雷速で此方を攻撃してくる雷精獅子は正直、先のリミエラより遥かに厄介である。

 流石にルーナやウルに比べれば程遠いが、それでも厄介な相手であることは変わりない。

 まぁ、向こうの攻撃も俺の防御を貫く程ではないが、小娘(リミエラ)の命を考えるとそんな悠長なことも言っていられない。

 リミエラの命を見捨てないのであれば、至急手を打つ必要がある。

「あー……、どうすっかねぇ」

 ――と、いうより……。

 がむしゃらに打ちかかって来る精霊の様子をみて、まさかの結論に達する。


「……こいつ、暴走してないか?」




 ◆◆◆【ローズレット・ハート・ラ・イシュタリア】◆◆◆



「まずい!」


 そう叫んだのは横にいるお父様だった。

 次いで、伯母様も顔色を変えて立ち上がる。

 周りを見渡せば、座っていた貴族の方々も顔色を失っている。

「お父様、どうしたのですか?」

 私の問いにお父様は僅かに顔を顰め、やがて搾り出すように言った。

「あれは自らの命と引き換えに精霊を実体化させる禁術。その上、雷精獅子は暴走に近い状態だ。あれでは最早……」

 語尾を濁す。

 伯母様も難しい顔をしている。

 と、叫び声が聞こえた。

「リミ!」

 見れば、艶やかな金の髪を頭上に結った女性が慌てたように立ち上がっていた。

 ……あの方は、バール卿?

「落ち着け、バール卿。貴方が騒いでも事態は変わらない、今軍の部隊に押さえるよう指示を出した」

 私の思考を肯定するかのように、叔母様が声を出す。

「兎に角、今は事態を見守るのが我らの役目だ」

「く、う。…………リミ」

 伯母様の言葉に、バール卿は血の気を失った顔で座り込む。

「気を確かに持て、ジルヴァ。もしかしたら助かる可能性とてあるのだ」

「……」

 伯母様の再度の慰めに、金髪の婦人は俯けた顔を両の手の平で覆ってしまう。

 会場を見下ろせば、猛烈な勢いで襲い掛かってくる精霊相手にアッシュ様が応戦していた。


 ……。

「……あれ?」

 先程の伯母様の言葉に、ふと気付く。

 ……助かる可能性?

 いささか言い回しがおかしいのではないか?

 それではもう、死が確定しているような……。

 と、突然会場内に無数の兵士がなだれ込んできた。

「来た! 頼む、上手く押さえてくれよ」

 叔母様が祈るように呟く。

 恐らくは伯母様が手配したという軍の鎮圧部隊だろう。

 これでリミエラ姫は……。

 だが、予想や願いはいとも簡単に裏切られる。

 ガガガガガッ!!!!

 衝撃音の連続。

 一瞬、会場内を雷光が走り抜けたかと思うと、軍の部隊が吹き飛ばされた。

「……雷精獅子の雷速機動か」

 伯母様が悔しそうに呻く。

 次いで、それを見たバール卿がヨロッとよろめくとそのまま倒れてしまった。

「おいっ、ジル、しっかりしろ! ジル!」

 ……。

 やはりおかしい、そう思う。

 いくらなんでも慌て過ぎだ。

「お父様、いったい――」

「命を削る精霊術だけなら、どうにかなったのだがな……」

 え?

 私の言葉を遮るようにお父様の声が私の耳に届く。

「だが、暴走しているとなると、話は別だ」

 お父様の視線を追えば、実体化して暴れている精霊が目に映る。

 あの実体化が禁術だというのは分かる。

 だが、暴走していると危険なのだろうか?

「暴走は精霊自体が正気を失っている状態だ。しかも今は禁術で術者の命を実体化の力に変えている最中。実体化した精霊の暴走など、災厄以外の何者でもない。あのままでは雷精獅子を押さえつけることも叶わん」

「そんなっ」

 早く実体化を解除せねば、術者が死んでしまう。

 なのに、精霊が暴走しているためそれが出来ない。

「お父様! 暴走を静める手段はないのですか!?」

 一縷の望みを託し、問う。

 だが、返って来たのは。

「……………………………………………………。……ない」

 極めて無常なものだった。


 暴走とは正気を失い、自らの身を顧みずに限界を超えた力を出し続ける、極めて危険な状態。

 そして、それを鎮める手段はないという。

「そんなっ! ではっ――」

 あまりのことに絶望に彩られた呻きが咽の奥から漏れる。

 しかし、誰もが目を合わせない。

 それはお父様ですら例外ではない。

 辛そうに、ただ辛そうに目を伏せる。

 と、真横から、今までことの成り行きを見守っていたルーナちゃんが声を出す。

「本当にないのか? 長い歴史を持つ国だ、前例が無いわけではあるまい」

 目を向ければ、探るような目を皇国貴族たちに向けていた。




 僅かな沈黙が流れ、伯母様が呟くように、呻くように声を出す。

「…………ある。だが、ない」

「詳しく申せ」

 意味の分からない伯母様の言葉をルーナちゃんが追求する。

 伯母様は僅かに躊躇うように黙り込むが、ルーナちゃんの眼力に押され、訥々と語る。

「皇国十二精霊の一体に、慈愛の権能を持つ精霊がいた(・・)。その者のみが暴走し傷ついた精霊を癒す力を持っていた」

「……いた、とは?」

 ルーナちゃんが問う。

 いたとは過去形。つまりは……。

「だが、今はいない。三年前に契約者共々行方を眩ませたのだ……」

 血を吐くような言葉。

 叶わぬ願いに絶望する現実。


「精霊の名は?」

 ルーナちゃんが再三の疑問を発する。

 再度の沈黙。僅かな時間の後、言葉が続く。

「皇国十二精霊の一体。皇国四翼に名を連ねる大精霊。言うのも悔しいが、恐らくは精霊王ノアに次いで強大な力を持っていた精霊だ」

 そして、伯母様が、その名を告げた。




 それは運命の名であり、奇跡の名。



「冬雪と慈愛を司る大精霊、名を氷精白鶴(スノウクレイン)。――」



「――契約者の名はソフィアージュ・フォン・ラピスだ」

ご感想・ご意見・各種批評・間違いの御指摘などをお待ちしております。


更新できたことにびっくりw


ただでさえ忙しいのに、研修がはじめる前日に Let`s Go 例大祭!


ああ、忙しい!


そして眠い……。

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