友情ごっこがおしまいなら、次のステップにいけるよね?
『体育館裏で待ってる。ひとりで来るように』
それだけ書かれた手紙が学校の靴箱の中に入っていた。
丁寧に包装されていて、気合を感じるそれに、私は膨らませていた。
「これは?」
私ごと盾野しろの靴箱にわざわざラブレターのようなものを入れてくれる。
そんな素敵な人がいるなんて。
まだ寒い日々が続いてるけど、ついに私にも温かい日差しが舞い降りるのか。
ゆったりと体育館裏に行く私。
そこには友達のはこちゃんが待っていた。
「ふふっ、よく来てくれたね、しろちゃん」
にやりと微笑む、はこちゃん。
その姿は大胆な告白をするように大人びている。
「どうしたの、はこちゃん。こんなところに呼び出して……」
機体しながら、彼女の言葉を待つ。
するとにっと笑いながら、彼女が大きな声で言葉にした。
「あたしたちの関係はこれでおしまいよ」
「えっ?」
その一言にきょとんとする。
関係が終わる。今の関係じゃなくなる?
「友情ごっこだったのよ、私たち」
「友情、ごっこ?」
つまり、いままでの間柄は嘘?
友情を演じていただけ?
「罰ゲームでさぁ、アンタと一緒にいただけなのよ。アンタとの友情ごっこはここまで。これから先は別の生き方をしてくってこと」
「それって……」
別の、生き方。
それって、それって、もしかして……!
「私と、恋人になってくれるってこと!?」
思わず目が輝く。
わざわざ罰ゲームで友情を演じていた。
つまり、私にはチャンスがあったということだ。
「は? え……えっ?」
「関係、終わるんだよね?」
「ま、まぁ」
「友情ごっこ、おしまいってことだよね?」
「そうだけど……」
「つまり、これから先はラブラブゴーゴー!」
「いや、その理屈はおかしいっしょ!? 大体何よ、ラブラブゴーゴーって」
「いちゃつける関係ですけど?」
友情ごっこから、ラブラブゴーゴーに。これは最高なのではないだろうか。
なんだかイケイケな感じもするし、素晴らしい。
「……いい? 落ち着いて聞いてほしいんだけど」
「はい」
「あたしとアンタは半年くらい一緒にいたわけっしょ?」
「そうだね?」
「で、その間なにもなかったわけじゃない? 精々やったことといったら一緒に遊んだりしたくらい」
「うーん、友達関係だったねぇ」
「そこからラブラブになるのはおかしくない?」
「あー、それは……」
確かの彼女の言う通りかもしれない。
今までの私たちは友達としての距離を保っていた。
一緒にゲームしたり、カラオケしたり、それなりに楽しかった日々がいっぱいだった。
「でも、それは友情ごっこだったということなのは間違いないよね?」
「ま、まぁ、そうだけど……」
「つまり、ここからが本番ということで……」
「ちょっと待て、何したいのよアンタ!?」
後ずさるはこちゃん。
なんだか急に可愛らしく見えてきた。
「ふふっそれは……友達同士じゃできないイチャイチャ」
「ぐ、具体的には?」
「二人きりの部屋カラオケ部屋でカップル同士でキスしてべったりくっつくとか」
「は、破廉恥よ!」
「ダメ? 甘えるだけなら違反じゃないよ?」
「そもそも、私とアンタじゃ釣り合わないわよ!」
「どうして?」
「女の子同士よ? 普通おかしくない?」
それが常識と言いたそうに言葉にする彼女。
なるほど、照れているのかもしれない。
そう思った私は積極的にアプローチしていく。
「別の生き方、するんでしょ?」
「ま、まぁ、そうだけど……」
「私と一緒に生きてみない?」
「友情ごっこは終わったんだけど……」
「ふふっ、こっからが本番ってことで」
「わっ」
体育館裏の壁にトン、と手を添える。
誘ってきたのは彼女なのに、積極的にならないなら、私が積極的になるべきだ。
そう思って仕掛けていく。
「はこちゃん」
「ひゃ、ひゃい」
「お友達ごっこの関係から、恋人になっちゃお?」
ぎゅっと彼女の身体を抱きしめる。
温かいはこちゃんの全身を私が包み込む。
静かな吐息が聞こえる。
「で、でもあたし……」
「なぁに?」
「アンタと離れる為に来たわけで、離れる為にやって来たから、ええっと、その……」
「ふふっ、そうだとしても……」
耳元でそっと呟く。
「私は、はこちゃんと一緒にいるとき可愛いなぁって思ってたよ? だから、はこちゃんの可愛いところもっと見たいなぁ」
「うっ、うぅ……!」
恥ずかしそうに頬を赤くする彼女。
体育館裏という環境も相まってドキドキしちゃう。
「はこちゃんは、見てみたくない? 私の可愛いところ」
「……えっと、その……」
「聞かせて?」
ゆったりと彼女の目を見つめる。
すると、彼女は上目遣いになりながらも、小さく言葉にした。
「みて、みたいかも……」
「なら、決まりだね。これからは友情ごっこから、恋人さんってことで」
「う、うん……」
「じゃあ、せっかくだし……」
そっと頬にキスをする。
それだけではこちゃんは真っ赤になってしまい、私に強く抱き着いてしまった。
「これからもよろしくねのキス」
「……そんなの、ずるい」
「じゃあ、はこちゃんもやってみればいいんじゃない?」
「あたしには、まだ、はやい、かも……」
そう言って顔を背ける彼女。
そんなはこちゃんを見つめながら、私は静かに呟いた。
「友情ごっこ、楽しかったね」
「そう、だね」
「これからも、恋人さんとしてよろしくね」
「……うん」
甘い空気がいっぱいの体育館裏。
ただ、静かに甘える私とはこちゃんがそこにいた。
後日。
投稿する道の最中にはこちゃんと出会った。
「お、おはよう」
彼女は昨日のことを思い出しているのか顔が赤かった。
「可愛かったよ、はこちゃん」
「……昨日のことは昨日のこと! 普段のあたしはあたしだからね! そこは覚えておいて!」
「ふふっ、わかった」
プイっと顔を背ける彼女も恋人さんらしくてほっこりする。
「そ、それから」
「なぁに?」
「……罰ゲームから始まった縁だったけど、こういう関係になれたのはその……悪くなかった、かも」
「そっか、それならよかった」
「言いたかったのはそれだけ! ほら、行くわよ! はやくしないと遅刻しちゃうんだから!」
「そうだね、一緒に行こう」
まだ冷たい風を感じる時間。
不思議な縁から繋がった関係が、どこまでも温かく感じた。




