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薄暗い部屋の中心にぽっかりと黒い穴が空いていて、そこが入り口だった。
入り口を通り抜けると、曇天が空を覆いゴロゴロと雷が鳴っている。大地は乾燥してひび割れ、生えている木々は枯れているのか、痩せ細って葉もつけていない。
遠くの岩陰で黒いフードをかぶった人物が男を見ながらほくそ笑んでいた。
冷たい風が肌に当たる。
かずさ「なんて寂しい場所なの……」
信也「急ごう」
しばらく進んで行くと、男がいた。
男の顔半分は鳥の毛で覆われて、袖からでている手は爪が長く伸びた虎の手と化している。
男の立つ崖の先には真っ黒い泥の海が広がっている。
そこに水晶を投げ入れていた。
とぷっ!とぷっ!
煌めく光が闇に飲み込まれているみたいだった。
「もうやめようよ! なにしているのよ!」
男は振り向く。
「もうなにをしているのかわからないんだ、僕はだれなんだ、何が目的なのかもわからない、ただこれをやめちゃだめなことだけはわかるんだ、とめないでくれ」
「なにそれ! おかしいよ! そんなことをしてもおねえちゃんは喜ばないよ」
「おねえちゃんって誰のことだよ、僕の邪魔をするな!」
かずさは男の言葉を聞いて絶句する。
「頭が、頭が痛いんだアアア!」
男は頭をかかえながら呪文を唱え始める。
「我が絶対の下僕として、この領域に召喚せよ! 出でよ!」
黒い地面に黒紫の輪が無数に浮かび上がり、色々な動物を継ぎ接ぎしたような不氣味な生物が這い出てきた。
大量のそれらは地面を見えなくするほどの数だった。




