25
いやだ。
忘れたくない。
忘れてなるものか。
たとえ苦しくても。
死にたくなろうとも。
悲しくとも。
君を忘れてなるものか。
君との思い出が。
僕自身なんだから。
朝起きて、首から下げた水晶からは何も話しかけてくる様子がない。
(わたしが、あんなことしちゃったからかな……)
萌に筆談で事情を説明して、水晶に話しかけてもらったが、何も反応は返ってこない。
「どうしちゃったんだろうね」
そのうち機嫌なおるから、もう少し待ってみようと萌は言った。
わたし、またあの人が来ると思ったら怖いよ
書いた紙を萌に見せる。
「あたしもこわいよ、でも大丈夫だよ。今日はかずさのおねえさんも近くにいてくれるっていうし」
花はうなずいているが、下をみていた。
かずさはその日、白いネズミに変身して学校に潜入していた。
昼休みに中庭で一人。
花は木陰に座っていた。
水晶を眺めている。
指でつんつんとつついてもポポンはなにも喋りかけてはくれなかった。
(おーい)
やかましかったのが急に何も言わなくなると寂しいものである。
氣のせいか、いつもよりも水晶が綺麗に見えなかった。
どこかうらさみしげな。
ふっとあたりが闇に染まった。
あれ?
中庭にいたはずだけど……




