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第37話 傍観

「しかしまあ……派手だねえ、どうも」 


 司法局実働部隊隊長室。そこで三次元映像装置を頬杖をついて眺めながら、司法局実働部隊隊長嵯峨惟基特務大佐は薄ら笑いを浮かべていた。


「まるでこの第三勢力の介入は想定していたような顔じゃないですか?」 


 机のそばに立って厳しい表情を浮かべているのは司法局実働部隊管理部長の高梨渉参事だった。


 画像の中の肉の塊、それまではただ周りを取り囲んで浮かんでいる東都警察の切り札の法術機動隊の攻撃を受けても平然と周囲の破壊を続けていたそれは、すでに新しい敵に攻撃を受けて五つに切り分けられ、それぞれがうめき声を上げて苦しんでいるように見えた。


「ずいぶんと趣味の悪い奴等だな」 


「兄さんには見えるんですか?私は切り刻まれた結果しか……」 


 高梨の言葉に嵯峨はニヤリと笑った後ポケットからタバコを取り出して火をつける。


「なあに、三人の法術師が干渉空間の時間軸をずらして加速をかけていたぶっている。万が一の事態に備えて一撃でけりをつけてやるって言うところが無いのはどこかに売り込みたいのか……そう言う趣味の連中なのか……」 


 嵯峨が伸びをして煙を吐くのを見つめた後、再び高梨は画面に目をやった。もはやこの事件の端を作った物体はただの肉片としか呼べない存在になっていた。高梨に見えるのは重傷を負った機動隊員を仲間が助けている様子と手の空いた隊員が肉片を回収しては走り寄ってきた鑑識らしい帽子の警察官に渡している光景だった。


「信用のおける情報にはこの騒動に関わっている組織の姿はないですね。まあ同盟に批判的な武装組織や過激な環境保護団体が犯行声明を出したけどどうせ……、あんな化け物を作り出すような技術も資金も無いくせに」 


 しばらく目をつぶっていた高梨の言葉に嵯峨は満足げにうなづく。高梨は少し落ち着きを取り戻すとすぐに自分の腕時計形の端末を起動させた。


「司法局本局に連絡を取ってみます」 


 高梨は同盟本部の司法局に直通の通信を入れる。


「司法局の本部ビルからはそう遠くないからな。何人か野次馬してるんじゃないのか?」 


 そう言う嵯峨が見ている画面に周りのビルから現場を覗き込んでいる人々の顔が写る。


「でも良いいんですか?」 


「何が?」 


 高梨の困ったような声に嵯峨はタバコを灰皿に押し付けながら答えた。


「一応今回の件は嵯峨茜警視正やクバルカ中佐が動いていたんでしょ?それでもこのような事件が防げなかった。もしかしたら……」 


「俺の責任問題になるって言うのか?それならアイツ等に協力しなかった所轄の警察署長の首も全部飛ぶな。あいつ等の行動とそれに対応した警察の幹部とのやり取りのデータは探せば出てくると思うからね」 


 あっさりとそう言ってのけた嵯峨を困ったような表情で高梨が見つめている。


「そんなだから兄さんは嫌われるんですよ」 


 高梨の言葉に嵯峨は思わず舌を出す。


「さて、これを見て本局はどう動くかな……それと今回の騒動を引き起こした連中も……」 


 まるで他人事のように嵯峨は伸びをして混乱が収まろうとしている画面を消した。



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