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Moon-Drop  作者: 水瀬雫
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第二話 アカリ

「ほら。席に着け!」


担任が入ってくる。

周りの会話から考えるに、転校生が来るとか。

おおよその見当はついてるけど。


「っと。早速だが、転校生を紹介する」


「うっそー」だの「どんな人?」だの騒ぐクラス。

説明きいてりゃすぐわかるだろうが。


「ほら、静かにしろ。紹介しねーぞ?」


担任に言われて静かになる。

小学生かよ……


「永田くん。入って」

「はい」


んで、またざわつくわけだ。

……そうでもないか。

まぁ、見た目はいいからね。


「はじめまして。永田颯です。よろしく」

「しばらくは斉藤!世話しろよ?」

「なんで私……」

「友達だから?」

「友達だった記憶はない」

「叶冷たい……」


周りがざわつく。

一番驚いてるのはいじめの首謀者。

ってことは知らなかったのか。

知ってたのは喧嘩が強いとかその程度ってことだ。

んじゃあ、上手くはめたつもりだったんだろうな。


「じゃあ解散。チャイムまでには席に着いとけよ?」

「「はーい」」


「なぁ、叶?」


唐突に話しかけてくるあいつ。

適当にあしらうように返事をする。


「何?」

「案内して?」


何を言い出したのかと思った。


「たぶんあんたなら迷わないよ」

「ほめてくれるの。でも、一応案内して?」


ほめたつもりじゃないけど。

周りで「私だったら行くのに」とか言ってるのに頼めばいいのに。


「放課後ならあいてる」

「じゃあ放課後ねっ」


強制的に決められる。

まぁ、私が空いてるって言ったからなんだけど。


「何あれ、冷たくない?」と野次られる。

まぁ、それでいい。こいつとなれ合う気はない。

こんな悪魔とはね。


とたんに頭痛が走る。

「っつう……」

おんなじことが何度かあった。

あの事件のあと、颯と会ったときはよく起る片頭痛。

この頭痛が追いやった記憶を呼び戻す。

だからこそ、会いたくなかった。

天使で悪魔なあいつに。

唯一の私の灯だったあいつは、いきなり私の目の前から消えた。

「これ以上、叶を巻き込むわけにはいかないから」

そう言い残して。

それが今、目の前にいるわけだ。

まったくあいつの行動が読めない。


お昼になり、私はいつもの静かな空間。屋上にいた。

今日は快晴。雲ひとつない。

私の心の中とま逆の世界。


「叶?お昼一緒にどう?」


屋上まで来たあいつが言う。

ここまで来れる癖に、案内必要ってどういうことよ。


「私、お昼食べないから」

「あんたそれ以上痩せてどうするの。また俺に負けちゃうでしょ」


誰がダイエットだって言ったよ。と突っ込みたくなる。


「いつやったって結果は同じでしょ」

「いや、叶の仕掛け《トラップ》にはかないません」


自分で防いで、傷一つない奴が言ったところで説得力も何もない。


「昨日だってトラップ3つもやったのに無傷でしょ」

「いや、ひとつは気付けなかったよ」


ほら。と足の傷を見せる。もう治ってきてるし。


「みんながみんなこのくらいですんだら素晴らしいよ」


あいつの顔のすぐそばで小さな爆発が起こる。


「誰もいなくてよかったね」


と嫌味に笑ってみせる。


「だから、こんなものを人に向けて撃っちゃダメだって。怪我しちゃったでしょ?」

「大丈夫だよ。あんただから」


ふと思い出す。

やっぱりあいつと二人きりで話すと暖かくなる。

今でも私にとっての灯なんだなと痛感させられる。

あいつがいたから今までこれたんだなと。

あいつがまた来てくれたことで、希望が見えた気がした。


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