第一話 ヒカリ
「ねぇ……あんたさぁ目障りなんだよね。消えてくれないかな?」
クラスの女子が小馬鹿にするように声をかけてくる。
だから私も、それ相応の対応をする。
「じゃあ見なきゃいいじゃない?」
「馬鹿にしてんの?あんたの席は一番前、見ないようにしたって見えちゃうのよ」
もちろん馬鹿にしてます。というように言ってやる。
「じゃあ先生に言って席を変えてもらえば?」
こんな会話は日常茶飯事だ。ごく普通の学校でのいじめ。
日常ではないと思うのは小学生まで。もう、こんなのは慣れた。
父親がイギリス人。母親はキャバ嬢。当り前のように髪の色は明るい。
ちなみに名前は斉藤叶高校2年。誰も知らないような店でバイトをしている。……っていうか店かな?
多分みんなが知っているとしたらこっちの名前
天月滴
いまじゃ結構有名な歌手。兼作詞家。
作詞中心に仕事をするから知らない人も多いかも。
っていうより顔も公開してないし、ライブもしてないし。
「ふぅ……あんたには分かんないのか。日本人じゃないもんね」
毎回おんなじことを言ってくるのでやられる側も飽きてくる。
バリエーション増やせよ。とか思ってくるわけで。
ただ先に言っておくけど、私はマゾじゃないから。
「そうね。私は純粋な日本人じゃない。ハーフだから」
「日本語通じてるよね?」
そっちのほうが通じてないんじゃないの。と言いたくなるのをこらえる。
「ちゃんと日本語で返事してるじゃん」
「さすが。キャバの娘だわ」
成り立たない会話を打ち切るように返事をする。
「そりゃどうも」
本当にバカばっかりだ。
そんなことは言われ慣れた。
なのにそんなことばかり毎日言いに来る。
いい加減学べばいいのに。
鶏は3歩あるくと忘れるんだっけ。
じゃあ鶏以上ではあるね。
「もうキリないや。話通じてないんだもん」
話通じてないのはどっちですか……
「じゃあ諦めれば?」
「またね。あ……またもないか。もう死ぬんだもんね」
またか……
まぁいいや。いつ何があっても平気だし。
今度は何が来るか。
なんだっけ前の……大学生ぐらいだったよな。
弱い……あっけなかったやつら。
私を犯したいならもう少し強くなってから来なさい。
……って無理か。
私に勝てるのはあいつだけ。
永田颯
会いたくないなぁ
「あれ? 叶じゃね?」
「あぁ。颯か。何してんのよこんなとこで」
会いたくないと思った瞬間会ったし。
「ん?俺?」
相変わらずの馬鹿だ。
会いたくはなかったけど、会ったからといってがっかりもしない。
とりあえず会話をつなぐ。
「ほかに誰がいるの」
頭を抱えたように言ってみせると、思いだしたかのようにしゃべりだした。
「頼まれたんだよ。んで、お前を探してた」
見当は付いた。ただ、あいつらが私たちのことを知っていたとしたらマズイことになる。
「あいつらか。いつ知ったんだよ……」
「さぁ? まぁ。金はもらってないけどな。渡されたけどもらわなかった」
やっぱり金で買ってたのか。どこから出てくるんだよそんな金。
「馬鹿だね。あんたなら成功できたかもしれないのに」
「んー。成功してもうれしくないし?」
意味深な笑みを浮かべているあいつが気に食わないので、あえて適当な返事をする。
「なにが……」
あいつは究極の馬鹿らしい。
いや。知ってたけど。
首をかしげてきょとんとしている。
「まぁでも。久々に会いたかったし?お茶でもどう?」
「ばーか」
さっき仕掛けておいた魔雷針が爆破する。
「いつ仕掛けたの。こんな物騒なの」
幼稚園児を叱るかのように言うあいつに、幼稚園児のような言葉を返す。
「さっき?」
ふぅ。とため息をついて話し始める。
「まったく。俺じゃなきゃ死んでたでしょう」
「あんたじゃなきゃ魔雷針なんて使わないよ?」
そうでしょう? と言わんばかりに言う私。
あいつは分かってましたという表情をして言う。
「だろうな。ナイフ一つで大丈夫ってとこ?」
百連花火も発射。また無傷なんだろうけど。
「花火は人に向かってしちゃいけないって習わなかったの?」
「あんたは人を超えてるよ。十分」
火遊び注意は小学生までと付け足した。
あいつも、魔法使いみたいなものだから。
正式になんて言うのかは知らないけど。
「叶に言われたくないし」
「じゃあ帰るから」
会話を無理やり終わらせた。
んで、早足気味に帰ろうとしたら……
「俺、明日からおんなじクラスだからね」
「はぁ?!」
明日からは大波乱の予報。