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騎士RPで行くVRMMO  作者: ぺたぴとん
3/3

第3話 ジョブクエは戦闘方法を学ぶ場

 簡単なものをつまんだのちログインすれば、マップを見つつ目的地である騎士団兵舎へと向かう。


 それにしてもこの街は広い。マップに名前が書かれているこの街、アファ・スティスは円形の街だ。首都を知らないからこの規模がどれほどのものなのか分からないが、それでもマップに全体を表示させれば大きさはけっして小さいものではないことが分かる。

 

(いや、街もすごいけど人もすごいわこれ。人っていうかAIか、この場合)


 周囲をきょろきょろと見ながらそんなことを考える。

 荷馬車が通りすぎ、露店前でやり取りする人を避け、店からの呼び込みを丁寧にいなす。前にやっていたゲームではそんなことはなく、話しかけられる場面といったらクエスト関連でしかなかった。入れないエリアがあったりはするけども。


 ぼんやりとそんなことを考えつつ歩いていれば、マップに示された目的地の赤い点まであと少しのところまで来ていた。


(お、あれか)


 街の外に近づいていくにつれ、他より一階分ほど高い建物が見えてくる。同時に掛け声もだ。

 

 その建物が目的地である騎士団兵舎だ。


 騎士団兵舎はギルドと同じ造りのようではあるが、こちらはどこか静かな印象を覚える。使われている材料が明るい色合いのものではないのもあるだろう。

 けれど決して音がないわけではない。威勢の良い掛け声が遠くから聞こえてくるが、十中八九訓練中だからだろう。声の出どころを探してみれば、塀に囲まれた敷地の内側、遮蔽物として存在する雑木林の向こう側から聞こえていた。

 建物以外で見えるとしたら、門の両脇にいる警備の二人ぐらいだ。


 さて、確か訓練場は裏口から入ればよいとブスルトゥさんから聞いている。目の前の門は明らかに正面入り口だろうし、ぐるりと反対側に回るとしよう。


 塀を沿うようにして行けば、ブスルトゥさんの言葉通り裏口があった。加えて警備であろう男性が一人いる。


「あの、すいません」

「何用だい?」


 声をかければ、中年の男性が反応する。普通に答えようとして、ちょっとだけ止まる。ここは背筋を伸ばし、悠然とした騎士をイメージして丁寧に答えよう。ちょっとしたことでもRPは意識しておかないと……!


「冒険者ギルドにて、こちらで騎士団の訓練に参加することができるとお伺いしたのですが」

「お名前を伺っても?」

「アーヴィングと申します」


 名前を告げて会釈をする。ど、どうだろうか、変なところない? ないよね?騎士が本職である相手にロールプレイをするというのは、どこか変なところがないだろうかと不安になる。


 名前を聞いた男性は小さく「ああ」と呟いた。


「冒険者ギルドから話は来てるよ。旅する者ではっきり騎士になりたいと言った人、まだいないからよく覚えているさ。とりあえず訓練への参加でいいかな?」

「ええ、ぜひ!」


 話が通っていたことに安堵しつつ、勢いよく男性の言葉に頷く。その勢いが少し大げさだったのだろう、微笑ましそうにこちらを見ながら彼は口を開いた。


「勢いがあって良し! といっても、まずはしてもらうことがあるんだけどね。この紙にペンで名前を記入してもらえると助かる。ああ、諸々はこっちにあるから」


 そう言いながら警備の男性が横にずれると、そこには小さな机が置かれていた。木製のそれの上には紙とペンが置かれている。紙を見ればすでに何名もの名前が書かれており、かなりの参加者がいるのだと分かった。


 とりあえず上の書き方を真似すればいいか。そう考えて名前を記入する。


「書き終わりました」

「ありがとう。……うん、確かに・・・君の名前はアーヴィングだね」


 書き終えて渡した紙を見ながら男性が呟く。その言葉にふと疑問を持った。書いただけで分かるというのだろうか。


「ああ、不思議そうな顔をしているね。このペンで偽名を書いたら赤くなるんだよ」

「それは何と便利な。赤くなったら追い出されるのでしょうか」

「いやいや、ちょっと兵舎に来てもらってお話しをね、うん」


 そう言って男性はくっくっと笑うが、こちらも笑えば良いのか正直困惑してしまう。真剣な顔をしたままというわけにも、ましてや無表情というわけにもいかない。


 結局のところ、一番無難な苦笑を浮かべるしかなかった。


 こちらの反応に気づいたのか、男性は意地の悪い笑みから申し訳なさそうな表情へと変える。


「ああ、すまないね。名前も書いてもらったし、このまま小道を進んでいくといい。その先に訓練場はあるよ。訓練担当の教官には、既に参加志望の件が伝えられているから心配せずにね」


 そう言うと男性は、後ろに伸びる小道を指す。木立の中を伸びる小道は、うねっているせいで先が見えづらい。けれどここまで近づくと、木々の隙間からちらっとだが見ることができる。といっても、警備の男性と同じ服装の人がいる位しかわからない。


 再度、男性に会釈をして長くはない小道を進んでいく。木立を抜ければすぐ先が訓練場だった。


 広さは一軒家を立てることができるほどである。騎士と思しき人と同時に、成人しているであろう男女、加えて俺よりも明らかに年齢の低い子供がそこここに立っていた。服装や挙動を見る限り、プレイヤーが混じっている様子はない。


 ぼんやりと眺めていると、すぐ近くにいた女性がこちらに気づいて近づいてきた。


「旅する者……? あぁ、君が!」


 一見して俺がプレイヤーだと分かったらしい彼女は、一瞬浮かべた不思議そうな表情から理解したそれへと変えた。


「参加者だね、話は聞いているよ。ほら、あそこに騎士じゃない子たちが集まっているでしょ? 彼らも参加者だから、一緒にあそこで始まるまで待っててね。少ししたら訓練担当の教官から話があるから」

「分かりました。教えてくださりありがとうございます」


 一言お礼を述べ、指示された場所へと向かう。なるほど、彼らは訓練の参加者だったのか。紙に結構書かれていた名前を思い浮かべ、確かにこれほどの人数になるだろうなと一人納得する。


 集団に近づけば、自然とこちらに視線が集まる。よく見れば子ども達は年齢の幅が広い。下は小学生ぐらい、上は十代後半ぐらいだろう。緊張していたり、楽し気に友人と話していたりと様子は様々だ。

 一方、既に成人しているであろう男性や女性の姿もある。こちらも不安そうであったり、緊張していたりと様子はそれぞれ違う。


 しかしながら、なぜ子供がここにいるのが何とも気になるが、騎士団での訓練は子供に向けての訓練なのだろうか。いや、でもそれなら他にも大人がいるのが説明がつかない。しかし、今この場で多いのは子供の方である。そうなれば浮いているのは自分だ。


 そこまで考えてしまえば、場違いだという感覚が一気に襲ってくる。これはジョブクエ、気にしない気にしない……うん、ちょっと後ろめのあたりにいよう。


 視線から逃れるように集団の後ろに移動したのと、騎士団の男性が一人、集団の前に出てきたのはほぼ同時だった。刈り上げられた黒髪にガタイの良い男性だ。


「訓練への参加、ありがとう! 私が今回の訓練で指導を担当するアビッサだ」


 そう言って人好きのする笑顔を男性――アビッサ教官は浮かべる。そのおかげか、目の前の子供たちから緊張が少し抜けたのが分かった。

 中にはまだ不安そうにしている子もいるが、それでも最初よりは幾分かましである。


「親御さんたちからは聞いているから、皆はゆっくりと身を守る方法を身につけてほしい。外には危険な魔物がいるからね」


 その言葉で、いわゆる習い事みたいな扱いなのかと理解する。だから子供たちばかりなのか。


 アビッサ教官はそこで一旦言葉を切ると、表情を笑顔から真剣なそれへと変えた。


「同時に今回、騎士になりたいと訓練に参加してくれた志望者諸君には、心からの感謝を。我々も君たちが立派な騎士になれるよう、騎士訓練生として扱ったうえで一対一にて訓練を行う。教えることも、逃走の術に加えて戦闘の基本も教えていくつもりだ」


 彼の言葉に何人かが緊張したのが分かる。その緊張がこちらにも伝わり、俺も背筋を正した。


 その様子を真剣な目つきで見ていた教官だが、ふっと表情を緩める。


「変に気負わないでほしい。この訓練への参加は君たちの都合がいい時で構わないし、途中で不参加になっても構わないというものだ。あくまで君たちの意志であり、その意志に基づいて騎士となるか否かを選択してくれ」


 教官の説明に内心で納得する。参加者だってそれぞれ用事があるだろうし、プレイヤーだって毎度参加できるわけではない。そういったところへの配慮なんだろうか。

 

 考えている間にも話は進んでいく。このまま一回目の訓練を行うのだが、準備のために少しだけ待っていてほしいとのことだった。今日の訓練に参加するならばそのまま待機、帰る者は裏口から出て、また次にでも参加してくれればいいと彼は言う。


 そこまで言って教官が去れば、参加者は各々の行動に出ていた。一言二言近くの騎士に話して帰る者もいれば、近くの人と話す人もいる。近くにいるため耳に入ってくるが、会話の内容はどれも訓練に関してのことだった。


 自分はこのまま参加でいいかな。ジョブは早々に欲しいし。そんなことを考えていれば、ポーンと軽い音が鳴る。メッセージだ。


<ジョブクエスト『騎士への一歩』をクリアしました!>

報酬:ジョブ『騎士見習い』への変更


<ジョブクエスト『騎士見習いとして』を受諾しますか?>

クリア条件:規定回数、訓練に参加する

報酬:ジョブの取得


 後者のクエストを受諾し、早速とばかりに自分のステータスを確認してみる。見るべきはジョブ欄だ。


 メインジョブ:騎士見習い


 おお、確かに『無職』から変更している。この『騎士見習い』から『騎士』になるには、条件を満たせばいいのだろう。明確に『騎士』を取得できるとは書いていないが、できないとしても何かしら次に繋がる情報は手に入るだろうし。


 他の方法がもしあるのだとしたら、と少しだけ考える。冒険者になってから『騎士』獲得まで、今やっていることよりも効率的な方法が掲示板等で出てもおかしくはない。βからのプレイヤーがもたらす情報の中にあるかもしれないと、そう考えないでもない。

 けれどまあ、掲示板を見ずにそこはのんびり行くのだ。


「私は性分的に攻略勢にも検証勢にもなれないしなあ」

「こうりゃくぜーってなあに?」

「けんしょーぜーって?」


 ぽつりと呟いた言葉を近くにいた子供たちから尋ねられる。

 おっと、てっきり彼らは彼らで話してるから、プレイヤー側に話し駆けることがあるとは思わなかった。


「えっと、攻略勢っていうのは一生懸命強くなって、挑戦する人達だよ。検証勢は、なんていうかな……たくさん研究する人達のことだよ」


 説明があっていない気がしないでもない。けれどどう説明すればいいものか、突然では思いつかなかった。この説明で納得してもらえただろうか。

 ちょっとだけ不安に思っていれば、今度は女の子が笑顔で聞いてくる。


「けんきゅうってなーにー?」


 うーん、説明しにくい!そのうち分かるよ、なんて言葉で済ませたい!けれどそれはそれで収まりが悪いし、とりあえず自分なりに答えておこう。


「研究っていうのは、いっぱい勉強することだよ」


 これで答えになっているといいなと思いつつ答える。噛み砕いて、自分なりに分かりやすいと思える説明はもうこれ以外に思いつかない。これ以上聞かれたら、空を仰いで唸りそうだった。


 対する子供たちは、俺の言葉を聞いてパッと表情を輝かせた。


「お勉強! どんなお勉強するの?」

「教えて、教えて!」

「騎士様みたいにお話しする人も、そのけんしょーぜーなの?」


 増えた!質問する子供の数が増えた!というか、その騎士様みたいにお話しする人って俺のこと?名前長いね?

 

 内心の混乱を抑えつつ確認してみれば、やはりというか俺のことだった。これからその名称で呼ばれるのは嬉しくも恥ずかしい。防ぐためにも自己紹介しておこうか。


「私の名前はアーヴィングというんだ。それと、私は検証勢ではないよ」

「アーヴィングさんだね! けんしょーぜーじゃないのかぁ……それならそれなら!」


 名前を教えれば、子供たちは俺のことをアーヴィングさんと呼ぶようになる。同時に一つ質問に答えればさらに質問されるという展開にもなってしまった。好きな食べ物に色と、何でもないようなことでも子供たちにとっては気になることであり、とても大きな事柄らしい。答えるたびに大きなリアクションが返ってくる。


 まあ、気になることは聞きたいもんなぁ。幼い頃なんて俺もそんな感じだったと、以前母から笑いながら言われた気がする。悪いことではないし、まだ時間はありそうだからいいんだが。


「すんません、旅する者の方とお話ししたいって朝から騒いでたんすよ」


 子供たちの質問が少しずつ落ち着いてきた頃、近くにいた青年が苦笑交じりに言う。

 別に失礼なことをされているわけでもないし、腹を立てるようなことは起こっていない。「構わないよ」と言えば、子供たちは嬉しそうに笑顔でさらに話しかけてきた。中には青年と同じ年ぐらいの子も質問に加わっている。


 子供たちから聞かれて、噛み砕いて答える。そのお礼とばかりに、彼らはちょっとした情報をくれた。どこそこの雑貨屋は安くていいだとか、広場に面した武具屋の品は値段が高いだけであまり良いものでもないといった世間話に始まり、この街の水路はさながら迷宮のようだという噂と様々だ。


 その話にこちらもその都度相槌を打つ。楽しそうに話す彼らを邪険にはできなかった。


「おーい、準備できたぞー」


 子供たちの質問の声に被せるように、アビッサ教官の声が響く。声のした方を見てみると、苦笑を浮かべながら教官がこちらを見ていた。


 同時に先程とは風景が異なっていることに気付く。子供たちの質問に答えていて周囲を見ていなかったせいで、大きく変わったように思えた。木製の案山子に箱、机が設置されている。あちらこちらにいた人達、もとい騎士達も集まってきていた。


 そんな騎士達のもとへと、小さな子供たちが集まっていく。追うように向かえば、教官が苦笑と共に出迎えてくれた。


「子供たちの相手、お疲れ様」

「私も話の中で得られるものがありましたし、何より楽しかったですよ」

「はは、それならばいい」


 笑いながら教官はそう言うと、今度は他の参加者にも聞こえるように声を張り上げた。


「よっし、今日は初日。まずはそれぞれ得意な武器を見つけること、その武器で案山子を相手に試しに振ってみることにしよう!」


 アビッサ教官がそこで言葉を区切った瞬間、近くにいた騎士達が箱の傍で同じように声を張り上げる。


「それじゃあ皆、こっちに来て選んでねー」


 間延びしたような男性騎士の言葉がすると同時に、わっと子供たちが集まる。またまた流れに乗るように箱の傍へと寄った。


 ひょっこりと箱の中を覗いてみれば、中身は武器であった。柄から刃までもが木製のそれらは、斬ったりできないようにされている。こうなると鈍器と形容した方がいいようだった。

 武器の種類はざっと見ただけでもかなりある。槍に盾、短剣、大剣……同種のものがいくつかあるのは被った時用なのだろう。それを騎士たちが参加者にあったサイズを選んで手渡していた。


 それじゃあ俺も選ぶか。どれがいいかと考えながら、これだと手に取ったのは木製の片手剣と盾だ。


「お、片手剣と盾か」


 しげしげと手に取った武器を眺めていると、教官が傍に寄ってそう言ってくる。


「はい、やはり最初は定番なものがよいかと」

「それがいい。誰にも当たらないところで試しに振ってみてくれ」


 教官にそう言われ、人混みから少し離れて試しに振ってみる。横、縦に片手剣を振ってみて、盾を構える動作も試した。うん、やっぱり取り回しが簡単な装備はいいなあ。あ、でも他の武器がいいかどうか試してみようか。


 そこからは槍に斧と様々な武器を試してみる。刀や薙刀まで存在しているとは思わなかった。これは東方モチーフのエリアが存在すると思ってもよいのだろうか。


 色々と武器を試した結果なのだが、


「うん、片手剣に盾の組み合わせがお前さんには一番しっくりくるかもな」

「ええ、私もそう思います」


 教官の言葉に、頷きながら答える。


 最終的に落ち着いたのは片手剣と盾の組み合わせである。一週回って元の場所へと戻ってきたような感覚だ。よく見る組み合わせではあるけれど、やはり扱いやすさを考えるとこれがいい。


 なにより武器を構えた格好が騎士っぽいのがいい。


「得意武器が決まったら個々人で取り回しの練習だ。お前さんは旅する者だし、覚えも早いだろうからいくつかスキルも教えておくとしよう」


 案山子の方を指さしながら言う教官に「お願いします」と返せば、ついて来るようにとの指示を受ける。


 教官の後について、案山子の前へと向かう。他にも何人か、既に得意武器を見つけられた参加者が騎士に教えてもらいながら訓練していた。


「さて、最初だから簡単なことだ。攻撃、防御、後退の三点を意識した行動を練習しよう。構えて!」

「はい!」


 掛け声に引っ張られるようにして意識を案山子へと向ける。つられて上げた大きい返事が口から飛び出ると共に、自分が思う形で盾と剣を構えた。


 そこからは本当に反復練習だ。近づいて斬る、盾を掲げる、そして教官の掛け声に合わせて後退する。馴染んでいないはずの行動でもここはゲームの中、自然と体が動いている。アシスト機能もあるのだろうけれど。


 それにしてもこれは何回繰り返すのだろうか。現実と同じようにかなりの時間をかけるのだろうか。そんな不安が過る。

 

 けれど、その心配は杞憂であったらしい。


「ストップ! やはり旅する者は覚えが早いな」

「そうなのですか?」

「あぁ、旅する者は覚えが早いというのが通説だ。あとは死んでも戻ってくる、とかだな」


 教官の説明を聞いて、まさしくプレイヤーのことだと内心で思う。同時にそのプレイヤーの特徴が違和感なく、そんな存在なのだと受け入れられていることにちょっとだけ驚いた。あやふやじゃないんだね、そこらへん。


 そんなちょっとした会話を挟めば、「よし」と教官が一つ頷いた。


「それじゃあ本格的にスキルを教えていこう。教えるのは三つ、【シールドアタック】、【堅牢】、【バッシュバック】だ。そうだな……ついでに戦闘でも大切な【急所の心得】も伝授しておくか」


 【シールドアタック】はこう、【堅牢】のポイントはこうすること、なんて説明がその言葉の後に続く。教官の手には盾も剣もないが、身振り手振りも交えて各スキルのポイントを教えてくれた。

 

 その教えを聞きつつ、真似をする形でスキルを使ってみる。合わせて、教官はどこに当てれば効果的なのか、急所がどこかを考えるなどのアドバイスもくれた。


 そのアドバイスに従って、何度か目の前の案山子にスキルを打つ。難度か繰り返したのちに、聞きなれたポーンという音が鳴った。しかも3回である。


<スキル【シールドアタック】、【堅牢】、【バッシュバック】を習得しました>

<パッシブスキル【急所の心得】が伝授されました>

<レベルが5になりました。ポイントを取得しました>


 お、レベルまで上がるとは嬉しい。ログを見てみれば、どうにもここまでの行動で一旦経験値が得られているようだった。

 レベルアップしたということはポイントが貰えているはずだと、ステータスで確認する。1レベル上がるごとに3ポイント、5の倍数の時はそこに追加で5ポイントもらえるとのことなので、合計は17ポイントのはずである。……うん、確かに17ポイント貰えている。


「スキルを覚えただろうから、確認してみるといい」

「はい、分かりました」


 そう投げかけられた教官の言葉に頷きながらも返事をする。ポイントの確認が終わればスキルも見てみようと思っていたし、渡りに船とばかりに確認を始めた。


 【シールドアタック】は盾による強攻撃、【堅牢】はVITとMNDを15秒間上昇させてくれる、そして【バッシュバック】は攻撃と同時に後ろへ下がる。名前からして連想のしやすい効果ではあるものの、初めてのスキルというものは心が踊った。

 対して常時発動するパッシブスキルの【急所の心得】は、急所を攻撃した際に威力が上がるというものである。急所を意識した戦闘とはなかなかに難しいが、それでもあって損することはない。


 いやはや、ここまでスキルを覚えることができただけでもありがたいものだ。


「終了! 今日の訓練はここまでとする!」


 今回の成果にほくほくとご満悦になっていれば、教官の声が訓練場に響く。同時にポップアップが現れた。見てみればクエスト欄の訓練参加回数に1と書かれている。

 

 先程響いた終了の合図が一つの区切りだったのだろう。そんなことを考えつつ、浮かんでいるポップアップを閉じるのだった。

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