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枯れた花と流星群

作者: 炎の人

急に書きたくなったので書いてみた。

 目が覚めると日が暮れていた。寝苦しい夜が続き、布団をどこかへと蹴飛ばしていたようで起き上がってみれば床に落ちていた。

 起こした体が元のベッドに戻らないように立ち上がると俺は窓を開けるためにカーテンを開き、窓の鍵を外した。そして、窓を開けると生ぬるい風が入ってきた。無いよりマシなその風が今はどうしてか鬱陶しかった。

 ふいに下へ視線を向ければ、枯れた花がそこにはあった。確か菊の花だったか。似たような花だったような気もするが興味もない。花瓶に刺されていたその花は今にも花瓶から落ちようとしているように見えた。


「捨てるか? もう必要もない花だし」


 そう呟いてから俺は自身がその気がないことを知っていて何も行動に移せないでいることを思い出した。かれこれ一週間は同じようなことを言っている気がする。それだけ経ってもなお、未練を捨てきれない己の愚かさに嫌気が差す。しかし、どうしようもないほどに俺自身の心は彼女に奪われたままなのを実感し、俺はベッドにうつ伏せに寝転がった。


「あれから一週間、か。相田さんはどうして、あいつを選んだんだろう?」


 夏休みになる直前。俺はクラスメイトの相田花子に告白をした。一目惚れに近かったのかもしれない。どこかのドラマで消しゴムを拾ってくれた人に一目惚れをしたというのがあったがあれに近い。ただ俺に笑顔でプリントを渡してくれただけ。たったそれだけで俺は彼女に恋をしてしまったのだ。

 だが、相田さんは俺ではなく、隆二を選んだ。俺の幼馴染である隆二は昔からモテる奴で彼の周りには女性がいない日はなかった。そんなモテる上に女も選び放題の隆二が相田さんを選ぶなんて考えられない。だが、現実として隆二は相田さんを選んだのだ。そこに否やも唱えられない。相思相愛ともなれば俺に付け入る隙きはないし、横入りする勇気もない。

 急にあの時の、断られた時の言葉を思い出して何だか泣きたい気分になった。


「私じゃあ、あなたに相応しくない、か。そんなのどうでもいいんだけどな。ただ隣にいて欲しいだけだったのに」


 風が窓から入ってくるのを感じて俺はそちらの方へと視線を向ける。するとそこには枯れた花が花瓶から落ちているのが見える。黄色い花は色褪せて見える。よく見えれば黒ずんでいるところさえあるように見え、俺がどれだけ世話を怠っていたのかを示していた。

 それを見てどうしてか俺は相田さんへの想いを諦める気持ちになった。花も命が終え、二度と元に戻ることがない。だとすれば、俺もきっとこの想いをいつかそういう日もあったのだと笑える日が来るのかもしれない。

 花が枯れたのを仕方ないと思っているように。

 世話をちゃんとやらなかったことを後悔しているように。


「明日から学校か。まぁ頑張ろう」


 いつか俺の記憶からもこの焼け焦がれるような想いが懐かしめるようになるのだろうか。そんな風に思うがどうしてもそのようなイメージが思いつかない。

 けれど、時は待ってくれないのだ。俺は見えない痛みを胸を抱えながらも眠りにつく。

 せめて隆二と相田さんの幸せを願えるような気持ちになれることを祈りながら。


 流星群が見えるという夜、俺は涙で頬を濡らしながら枕を抱いて眠った。

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