第11話、ショーロード上の戦い
それから、スカ湖は静けさを取り戻しました。渉夢たちは管理人のチーにあいさつを済ませ、スカ湖を発とうとします。
ここで渉夢は、ビリービングに小まめにピースの楽譜をチェックするよう言われたことを思い出し、楽譜の最初の曲をらららと歌ってみました。
すると、何と、ピースの楽譜はチーの家の中へひらひらと飛んでいったのです。
「す、すみません、お邪魔します」
「いいけど」
渉夢たちは、チーに断ってから家の中にあがり、ピースの楽譜を追いかけました。
彼女の家の中に入ってから、1番奥の部屋まで来ると、ピースの楽譜はそこに入り、花瓶の置かれたテーブルの上の四角い貯金箱の近くにパラパラと重なり落ちます。
「この部屋のどこかに、ピチスお兄ちゃんの仲間たちがいるって、お兄ちゃんが教えてくれているんだね」
と、テーブルの上の生けてあるスズランのような花を見ていたオープです。オープが指で花に触れると、風鈴のような音が鳴ります。
「楽譜歌詞の狭い中、1人埋もれながら歌うって、どういう意味だろう?」
渉夢はピースの楽譜を全て拾い、歌詞の5節目を見たあと、部屋の天井を見上げました。
「狭い中は、この部屋の意味な気がするけど、1人埋もれながら歌うって歌詞が、ぼくにはよく分からない」
ファオも渉夢の隣で腕を組みながら、部屋の天井を見上げます。
「ということは、狭い中は、この部屋自体の意味じゃないのかもな。この部屋の中にあるもののことかもしれない」
ビリービングは、片手を腰にやり、部屋の中を見渡しました。
「みゃ、みゃみゃみゃ、みゃみゃ、3人続けて、狭い中って言って、どうしたのっ!」
ここでクログーが笑いのツボにハマります。
「クロ、笑いすぎじゃないか。そんなに笑うところじゃないと思うが……」
ファオがクロに言いました。クログーは笑うだけ笑うと、寝たふりを始めます。
「都合が悪くなるとそれだ」
寝たふりをしているクログーに、細目の渉夢です。
「もー、ピチスお兄ちゃん、1人埋もれながら歌うって何に埋もれながらなのー?」
考えているうちに、イライラしてきたか、オープが頭を両手でかきむしります。
このとき、ふと渉夢の視界に貯金箱が入りました。渉夢は貯金箱を手に取り、ピースの仲間はここにいるかもしれないと閃いたようです。ピースの楽譜曲の1節目を歌います。
すると、貯金箱は壊れ、小麦色のショートボブの髪型をし、薄いピンクのドレスを着た女性がお金まみれになって現れました。ENCOURAGEのディアルでした。
「あれ、場所が変わってる。わたくし、さっきまでお金に埋もれそうになってたわよね。ここ、どこ?」
ディアルは部屋の中でキョロキョロとします。彼女が首を動かしているうちに、頭についていたお金が取れていきました。
「あなたたち、貯金箱を割ってしまったの!?」
貯金箱が壊れた音が外まで聞こえていたか、スカ湖の管理人のチーがやってきます。
「すみません!」
渉夢は頭を深く下げ、謝りました。けれども、チーは気にしていなく、ENCOURAGEのディアルの姿に感激しています。
「ディアル!?」
「あなたは、スカ湖の管理人のチーさん?」
ディアルが彼女の方を向きました。
「うち、いいえ、私の名前を知ってたのですね」
「うん、スカ湖は異世界ミュージーンのバイオリン大陸の大事な自然。それを管理するあなたも大事な人」
「とても嬉しいお言葉を頂戴いたしました」
チーは嬉し涙を流し、ハンカチで涙を拭いました。
「ふふっ、いいえ。あら、あゆむちゃん?」
ディアルはチーにニコッと笑ったあと、渉夢の姿に気付き、声を掛けます。
「こ、こんにちは!」
彼女はディアルにぺこっと頭を下げました。
「頭下げてばかりだな、お前」
渉夢の仕草にツッコむビリービングです。
「ディアルさん」
「オープちゃん、久しぶりな感じね」
「はい、お久しぶりです。あの、ピチスお兄ちゃんたちのことですが……」
ピースたちが失踪したことをオープが話すと、普段にこやかなディアルは、深刻そうな顔をします。
けれども、何人か仲間たちを発見できたことも少女が話すと、ディアルはゆっくりと立ち上がり、
「そう、コンティーニュたち3人は見つかったのね」
と、ほっとしていました。しかし、また深刻そうな顔に戻ります。まだ見つかっていないピース、ファインド、ラビングが心配なのでしょう。渉夢は彼女の気持ちを察し、
「ディアルさん、ピースさんたちは、どんなことがあっても、見つけます!」
と、強く示しました。
「ありがとう、あゆむちゃん。あなたは、どんなことがあっても進んでいくことを大事にね」
「はい」
渉夢はディアルの言葉のプレゼントをしっかりと受け取ります。
「あたしも、ゴーとピチスお兄ちゃんたち全員、見つけ出します!」
オープも片手を胸に当て、ディアルに強く示すと、彼女はオープの前でしゃがみました。
「オープちゃん、しばらく会っていない間に明るくなったね。あゆむちゃんと、クロネコちゃんと、そこにいる人のおかげかな?」
「はい、クロネコの名前はクロバーで、そこにいる人はフリー俳優のファオさんです」
オープは渉夢たちを見て言ったあと照れます。
「オープちゃんの大事、できたんだね。良かったわ。フリー俳優のファオさん、あの人は大丈夫そうね。問題は、ビリービングくんね」
ディアルはオープとファオと交互に視線を動かし、にこやかな表情で言いました。
「………」
ビリービングはディアルの視線から目をそらします。彼女が少々、苦手なのでしょう。
「あなたは、大事な人やもの、1人1つもないって、2年前からずっとそんな感じね。現在、あゆむちゃんたちと、わたくしたちの仲間を捜してくれていることは、とても嬉しいわ。でも、あなたは、このまま大事な人やものが1人1つも見つからないままでいいの?」
ディアルが真顔でそう言うと、
「……いいんじゃないですか。そんなの見つからなくたって生きていけますよ」
ビリービングは目を閉じ、微笑します。
「本当はそんなこと思っていないでしょう。あなたがそれだと、地球に帰ったあとも心配よ。わたくしはあなたを見ていると、悲しくなってくるわ」
「………」
ビリービングはディアルの言葉をこれ以上、耳にしたくなかったか、管理人のチーの家から早足で出て行きました。
「ビリービングくん……」
渉夢は彼の名を口にし、彼の出て行った方向にいたチーを何となく見ます。
「ビリービング、辛そうな顔をしてたよ。放っておくと心配だ」
「………」
チーの言葉を聞き、渉夢はこのとき、ビリービングがスカ湖で自害するといった行為が頭にすっと浮かんでしまったのです。そのあと、彼女は1人、チーの家を出てスカ湖へ向かいます。
すると、やはり、ビリービングはスカ湖の中に入ろうとしていたのです。
「みゃー、ビリービング!?」
先にチーの家から出た渉夢にすぐ追いついたクログーが、彼を呼びますが、彼は振り返らずスカ湖にそのまま入ろうとしていました。
「ビリービングくん、何やっているの!」
渉夢は彼をスカ湖の前で通せんぼうし、すごい剣幕で怒鳴ります。
「………」
ビリービングは渉夢を無視し、スカ湖の方に入ろうとすることを続けていました。
「だめ!」
オープも彼を止めに来ますが、ビリービングのこれまで見たことのない怖い表情に少女はびくっとなりました。
「ビリービング、どうして、湖の中に入ろうとしているんだ!」
と、ファオも彼を止めに来ますが、彼は何とファオを突き飛ばしたのです。
「わっ!」
ビリービングに突き飛ばされたファオは、スカ湖の浅いところで倒れ、びしょ濡れになります。
「ファオさんに何てことするの!?」
「しつけーんだよ!」
怒る渉夢にものすごい形相で睨んだビリービングです。
「今のビリービングくん、すごく怖いよ。怖いけど、放っておけない。死んじゃだめだよ、ビリービングくん!」
と、渉夢が彼の腕にしがみつくと、彼は暴れだします。渉夢は彼を離しません。
暴れているビリービングを、渉夢が彼の腕にしがみつきながら止めていると、ビリービング激しく抵抗します。それにより彼女のシュシュがほどけてしまい、セミロングヘアになります。
「お前、いい加減、離せよ!」
「ダメダメダメ、湖に入って死ぬ気でいるでしょう!」
「わー、しつけー!!」
ビリービングは乱暴に渉夢の腕を振りほどきましたが、そのときに彼はふらっとなったか、うつ伏せの状態で転びます。
そこを渉夢はビリービングの背中の上を、垂直に抑えつけるようにのしかかりました。転んだ彼は一瞬、動揺しますが、渉夢を自分の背中から引き離し、立ち上がります。そこをまた渉夢が彼の腕にしがみつき、
「ビリービングくん、死んじゃ嫌だ。いなくならないで。いないと嫌だ……」
と、すごく悲しそうな表情で言ったのでした。
「………」
ビリービングは渉夢の表情を見て、自分がいけないことをしようとしてしまったことに後悔し始めます。
そして、ビリービングは腕にしがみつきながら、悲しそうにしていた渉夢に心臓がキュッとなっていました。彼は、身動きが取れずにいました。
渉夢はビリービングから離れ、地面に落ちた水色のシュシュで1つしばりをし、
「あのとき、場所がエレクトタウンのゲーセンだったから、ビリービングくんにまだ、ちゃんと私、頼めていなかったよね。ENCOURAGE、一緒に捜して下さい」
と、真っ直ぐ、ビリービングの顔を見て言ったあと、にこっと笑います。
すると、ビリービングは微笑み、
「ああ、よろしくなゴー」
と、渉夢のことをゴーと呼び、握手を交わしたのでした。
「うん」
渉夢はビリービングにゴーと呼ばれ、嬉しそうな表情で頷きました。今度は彼にゴーと呼ばれることを渉夢は拒みません。
「ゴー、ビリービング」
オープが駆け寄り、
「これで、ぼくらは友だちだな」
ファオがビリービングの肩に手を置きます。
「オレ、あんたらと友だち的な関係にまだなってないよ」
ビリービングがファオからそっぽを向くと、
「と・も・だ・ちだろぉ」
後ろからビリービングに抱き、耳元でささやいたファオです。
「や、やめてくれ……」
耳に弱かったか、ビリービングはぞわっとなります。
家の前で渉夢たちの様子を見ていたディアルと、スカ湖の管理人のチーもほっとしたか、顔を見合わせ、笑っていたのでした。
そうして、改めてビリービングが仲間なり、渉夢たちは、スカ湖の管理人のチーにあいさつを済ませ、スカ湖をあとにしました。
ディアルは、渉夢たちと行動をしています。澄んだソプラノの高音で歌いながら、ついて来ていました。彼女の歌を聴いているうちに魔法が掛かってきたようです。先ほどの件による渉夢たちの服の汚れがきれいになり、びしょ濡れになっていたファオの服が乾いていきます。
「あゆむちゃんたち、このあと、いつもどうしてるの?」
ディアルに聞かれ、
「ゴー、ピースの楽譜は?」
ビリービングが渉夢に楽譜を見るよう促します。
「うん、今、出す」
「ビリービングくん、さっきよりは元気そうね。それに、優しくなってきたじゃない」
ディアルが言うと、彼は首を横に振りました。
「オレは優しくないよ。そんな性格的なもの持ってない」
「やっと、あなたの大事、見つかりそう?」
「大事……」
ビリービングは渉夢を見つめていました。彼の視線に気づいた渉夢は笑い、
「また人のシュシュ、取ろうとしてるでしょう。もうその手にのらないよ」
片手で後ろをしばっているシュシュを抑えます。
「みゃー、渉夢、楽譜はー?」
「今、出すところ。リュックの中、ブルースーパーで買った花のパンでいっぱいで、ちょっと取り出しづらかったの」
渉夢はピースの楽譜をようやく取り出し、楽譜の1節目を歌い、リコーダーで吹きました。このとき、リコーダーからクラリネットの音が出ます。
クラリネットの音が響くと、渉夢が持っていたピースの楽譜から光の音符がたくさん現れ、渉夢の回りを1周します。
そして、ピースの楽譜に歌詞の6節目だけが自動的に書き込まれていきました。オープがそれをのぞき込み、渉夢からピースの楽譜を借りたあと、歌い出します。
このとき、オープは渉夢と同じ背丈の女の子に変身していませんでした。ボギーノイズを相手にするときだけ、ピースの楽譜が渉夢の手元にあると、オープは渉夢と同じ背丈の女の子に変身するようです。これに先に気づいた人物は、ファオでした。渉夢たちにも、このことを話していました。
「僕らは~、囚われのENCOURAGE~、熱き心持つ者の~、1人目の前でいつでも歌う~。この歌を歌う君よ~、熱き心で~、闇に立ち向かって欲しい~。負けるな~、ゴー!」
「ロッビ、歌うめぇ」
ファオは拍手を送ります。
「また意味不な歌詞を……」
ビリービングが小さくため息をつくと、
「ビリービング、意味不言わない!」
オープに叱られます。
「だって、これじゃ、どこ行ったらいいのか、さっぱりだ」
「わたくしはわかったかも」
オープの歌声を聞き、歌詞も耳にしていたディアルが思いついたようです。
「ディアルさん、わかったのですか?」
渉夢が尋ねると、
「うん、ピースはもしかすると、あなたたちをラグタウンに案内をしたいのかも」
ディアルは先を指さしました。
「あの、どっちに行ったらいいですか?」
次にオープが尋ねると、
「ラグタウンはね、スカタウンから北にあるショーロードを通りすぎたところにあるの。この町を北に抜けて、真っ直ぐよ」
「ショーロードに行けばいいのですね。真っ直ぐなら簡単ですね。わかりました」
ディアルの話を聞き、こう返事をしたファオでした。
「じゃあ、わたくしは、ワールドタウンへ帰るわね。あゆむちゃんたちのこと、コンティーニュたちに報告してくる」
ディアルはポケットに入っていたタブラムネを食べます。そのあと、ト音記号の音符に覆われ、姿を消しました。タブラムネを食べたことでワープの魔法が彼女に掛かったのでしょう。
ディアルのワープ後、渉夢たちはスカタウンから北のショーロードを歩いていました。
ショーロードは楽譜の五線譜の上にト音記号やヘ音記号、さらには二分音符が並べてあった道路でした。
渉夢たちは道路に描かれた音符の上を歩くとき、靴音でショーロードを楽しんでいました。
そのときです。渉夢たちが進む先に、メガネをかけ、上はピンクのセーター、下は藍色のミニスカートに黒のタイツ、茶色いブーツを履いた黒髪のロングヘアの女の子が立っていました。
夕葉未莉でした。その後ろに、人間の男の子の姿になったボギーノイズのエージェと、十六分音符のボギーノイズのビーボと立っていたのです。
「未莉先輩……」
「進実さんとお仲間さんたち、あんたたちをこの先へは進ませないよ」
「あれがゴーの先輩か」
ファオが未莉を見て言います。
「あれ、ファオさん、初対面でしたっけ?」
オープが首を傾げると、
「ああ、故郷のモッズドタウンにまだいたとき、ロッビから、ゴーの先輩の話をコンティーニュさんに話していたのは聞いてたよ。けど、こうして会ったのは初めてだ」
と、ファオは答えました。
「そうだ、ファオさんはあのとき、お部屋の掃除に集中してたから、私とオープがボギーノイズと対峙していたことに気がつかなかったのかも」
と、渉夢がオープに言うと、少女は納得しました。
「先輩、美人だな」
「うん」
ビリービングにそう言われ、渉夢は下を向いてしまいます。
「そこのあなた、地球人でしょう」
ビリービングをひと目見て、すぐ地球人だと分かった未莉です。
「おー、よくわかったな」
「わかるよ。それに、社長からENCOURAGEのことや、あなたのこと、よく聞かされていたからね!」
未莉は口笛の歌でエージェに指示を出します。ビーボは未莉の前に立っていました。
「未莉がお前から抑えてくれだってさ!」
「わっ!」
ビリービングはいきなり、両脇をエージェに抑えられます。
「お前、あの1つしばりをした未莉の後輩といい感じになってたよな」
「どこがだよ。っていうか、お前、スカ湖で見てたのかよ」
「ああ、オレだけばっちりな。お前、かなりネガティブなもの、持っていたんだな。おかげで俺はパワーアップだ」
「しまったな……」
ビリービングは、すまなそうな表情でゴーを見ていると、いきなり眠気に襲われます。エージェが雑音混じりの口笛を吹き、魔法をかけたからでしょう。ビリービングはそのまま倒れ込むように眠ってしまいます。
「ビリービングくん!」
「彼に歌われると、こっちが不利になるからね。これで進実さんたちは戦力ダウン」
渉夢が動揺すると、未莉はにやりとします。
「ゴー、未莉って人、何とかしよう」
渉夢の服の端を引っ張るオープでしたが、
「………」
渉夢は未莉に怯えてしまっています。
「ゴー、聞いてるの?」
「ロッビ……」
ファオがこれはだめだと首を振ると、オープはカーッとなり、
「ゴー、あの人のこと何怖がってるの。どこがそんなに恐ろしいの。うーん、もういいよ、ゴー、楽譜貸して」
オープは1人で戦おうと、渉夢からピースの楽譜を借り、歌を歌おうとしていました。そこを未莉に阻止されます。
「ふふ、やっぱり、あんたが出てきた。ビーボ!」
未莉に笏拍子で指示されたビーボは、
「きゃー!」
ビーボの放つ雑音のすごさに、オープは悲鳴を上げていました。ビーボの雑音を受けたことで、少女は傷だらけになり、倒れてしまいます。
「オープ!」
「最後はあなたよ、進実渉夢」
未莉が笏拍子を打ち、ビーボに渉夢への攻撃を指示したところ、
「ぐっ!」
ビーボの雑音をファオが代わりに受け、彼も傷だらけになり、渉夢の目の前で倒れました。
「ファオさん!」
「思ったより、戦いがあっという間で残念だわ。進実さん、仲間たちをこんな目に遭わせているようじゃ、ENCOURAGE捜すのもうやめたら?」
「そうだ、やめろ、やめろ」
エージェがふざけて未莉の言葉の加勢をすると、
「エージェ、うるさいよ!」
と、未莉は怒ります。
「………」
渉夢はまだ固まったまま、動けません。
「もう、ボギーノイズを退治するのもやめてね」
未莉は渉夢に近づき、冷たくそう言ったあと、思い切り彼女を突き飛ばしました。
渉夢は突き飛ばされたまま、地面に倒れ込み、未莉を見て怯え、体が震え出します。
未莉はそのあと、何も言わず、エージェとビーボとこの場を去ります。
渉夢はゆっくり状態を起こし、傷だらけで倒れているオープとファオ、エージェの雑音混じりの口笛魔法により眠ってしまったビリービングを見て、頭の中が真っ白になったのでした。