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第6話 night of fireⅡ

襖を慎重に開けると、奥座敷があるであろう空間は真っ暗だった。視界に墨をぶちまけたように何一つ見えない。


「きゃっ!!」

「かや乃っ!?」

突然何かが両足に絡んだと思った瞬間、抵抗する暇もなく、そのまま暗がりに引きずりこまれる。

「行かせへんでっ!」

尾をかや乃に絡ませてマコルも闇に飛び込んだ!


ーーー


私、ローラーコースターって、ほんっと苦手なのよね。高いところもダメだし。

でも…、一回だけフロリダに遊びに行った時、あれはスパークマウンテンだったかな?

そんな乗り物にみんなで乗って、激しいアップダウンに気持ち悪くなっちゃって……。降りた後、必死でバーに掴まっていたから両手が硬直して棒みたいになっちゃった!

みんなに笑われたわ。


そう言えば


あの時


一瞬気が遠くなって……夢を見たんだっけ。


大きな木の下でみんなで遊んでた。私達、いつもあの木の下で集まってたんだ。地面に絵を描いたり、追いかけっこしたり。落ちている枝でチャンバラごっこしたり。


ん?チャンバラ?チャンバラって何?


って……あれ?


みんなって誰?


わたし……って




誰だっけ?




ーーー



「……の!…や乃!かや乃!!」

「まぁ…マコちゃん?」

「しっかりせい!敵の結界の真っ只中やで!」

2、3回頭を振り、やっと焦点が安定して体を起こす。視界を確保しているのは、二階くらいの高さに等間隔に備え付けられている松明だ。その火に照らされて黒い岩肌が前後左右続いている。まるで洞窟の中にいるようだ。

頭上を見上げれば、果てしない闇が広がり、心に不安の雫がポトリと落ちてきた。ゆっくり体を起こして周辺を警戒するが、妖者の気配は感じられない。


「この闇に紛れて絶対おるはずや。試しに燕やら蜂やら飛ばしてみぃ!」

「Oui、偵察ならコレがいいかな。」

と、かや乃が技を繰り出そうとしたその時……


聞こえ始めた。


「まただ……赤ちゃんの泣き声。」

「ワイにもはっきり聞こえるで。こりゃ、本体のお出ましやな。」

赤ん坊の泣き声は闇の中から徐々に大きくなり、洞窟全体に響き渡る。


「そこっ! Mai danse(燕の舞)!」

炎の円から5匹の燕が飛び出し、向かって左手、泣き声がする方向に放つ。


ゔぅぅぅおん!


暗い闇の向こうから、何かが燕をことごとく撃ち落とした。

警戒し身構えた瞬間、今度は松明に照らされはっきり見えた。黒い帯状のモノが複数、暗がりから飛び出してかや乃の手足を拘束する。マコルも尾ごと全身を縛られた。


「しまった…!」

「フゴフゴっ…ゔー!」


泣き声は更に大きくなり…


ついに、その姿を同化させた闇から浮きださせた。

全身が真っ黒な帯状のもので巻かれている……体型からみて男だ。頭から手足の指先までくまなく覆われていて、顔も肌も認識できない。

いわゆる黒ミイラ男とも呼ぶべき妖者は、体をくねらせながら一歩、今一歩と近づいてくる。


「あなたが…学校を襲った張本人ね。」

答える代わりに、身悶えしながら赤子の泣き声を響かせる。近づけは近づくほど、肉が焼け焦げたような臭いが鼻につく。

よく見れば黒い帯状のものは、焦げた包帯だ。かたち崩れることなく、ミイラ男の手足からいく筋にも分かれ、かや乃とマコルを拘束し続けている。見た目と放つ声のギャップもあいまって、全身に鳥肌が立った。


「ねぇ…どうして赤ちゃんの泣き声なの?何があったの?何がそんなに憎いの?」

手足に痺れを感じながら、浄霊の基本である霊的スピリチュアル相談カウンセリングを始める。


ミイラ男は一層泣き声を高めると、腰や肩からも包帯を放った。

かや乃の首や顔、体全体にも巻きつき、焼けた臭いがさらに強くなる。


「ウグッ…ゴベバ、ジャベベバビ(これじゃ、喋れない)。」

あまりの息苦しさに意識が徐々に遠のく……


(まずい…このままじゃやられる……)




薄れていく意識の中、再び赤ん坊の声が聞こえてきた。ただし泣き声ではなく、とても嬉しそうな、キャッキャッという笑い声。

その笑い声とともに、頭の中にイメージが浮かんでくる。


一人の女性が赤子をあやしていた。笑い声の主はその赤子だ。女性はまだ十代だろう、梅柄の着物に、日本髪には金のかんざし、胸に抱いた我が子を愛おしそうに見つめている。

その横には、まげを結い、藤色の小袖を纏った男性が女性の肩を抱き、口を突き出したり、目を大きく開いたりして、赤子をあやしている。この男性も二十歳はたちそこそこにしか見えない。若い夫婦だろうか。


「本当に、常之進じょうのしん様に笑った顔がそっくりですわ…。」

「そうか?お八重やえ、そなたにこそ似ているように思うぞ。ほら、この目元。ん?そうか、楽しいか?そうか、そうか!」


(この人たち……襖の絵の人たちだ。)


場面が変わり、おそらく深夜、小皿にともされた灯のみが部屋を照らしている。そこには先程の夫妻が赤子を挟むように川の字で就寝していた。平和な寝息と外から聞こえる鈴虫の多重奏アンサンブルだけが静かに響いている。


そんな安息の夜に似つかわしくない、不穏な音が突如駆け抜けた。

ドタドタドタっと複数の足音が屋敷を右往左往するのがわかる。

悲鳴、

怒号、

そして厄難の宣告が、こだまする……。


「ひっ…火だぁ〜〜!火をつけられた〜!囲まれてるぞぉ〜!

逃げろ〜逃げろぉぉぉ!」


騒がしい足音と叫び声に常之進が飛び起き、それに気づいた赤子が鬼胎の泣き声をあげる。お八重は我が子を懐に抱き、明るくあやし続けた。少し固い表情には、ある種の覚悟も見て取れる。

常之進は枕元の刀を手に、障子をはねのけ外を伺う。部屋の外は、この家の従者であろう人々が退路を求めて駆けずり回っていた。うち一人、40代くらいの同じく髷を結った従者が駆け寄ってきた。


「火をつけられたましたぞ!早くお逃げください!狙いは……がぁっ!!」

突然、目を見開き仰け反った。そのまま前のめりに倒れる。

その後ろには日本刀を構えた侍が一人、持つ刀は鮮血で鈍い輝きを放っている。顔は黒い布で覆われ表情は見て取れないが、唯一露出した目には冷たい光を宿していた。

同じような格好をした侍、いや暗殺者アサシンと呼ぶべき男達が次々と姿を現し始める。


「お主らっ!どこの手の者か⁈」

刀を構え、鍔迫り合いを始めるが、囲まれた常之進は多勢に無勢、応戦虚しく切り倒されてしまう。


(えっ!まさか……)


暗殺者達は部屋の中へ押し入ると、赤子を抱いた母親に非情のやいばを向ける。

お八重は布団の上で姿勢を正し、赤子に乳をやっていた。

「お願いでございます。この子だけは助けてくださいまし。まだ生まれてひと月もたっておりませぬ。わたくしは嫁いだ時に覚悟を決めておりますれば。この子に罪はございませぬ……どうか…どうかご慈悲をっ!」

こうべを垂れ、我が子だけでも助けて欲しいと懇願するお八重。


(お願い…やめて……)


暗殺者はかたなを脇構えに、足音をたてずに近づくさまは、まさに死神のそれだ。


(やめて……!)


非道の切っ先が翻った!


(いやぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!)





頰を伝う涙で意識が戻る。わずかだが、首に絡む力が弱くなった気がした。

(これは…この妖者の記憶……妻と幼い我が子を殺された恨みなの?………無念の思いがどんどん入り込んで来る…)


まるで目の前で起きたかのように見せられた出来事に、かや乃は同情を禁じ得えなかったが、そこに付け入る隙を与えてしまった。妖者の霊力が体を侵食していく。包帯から黒く染みのように、制服、皮膚に広がっていった。


「フゴゴーッ! ブバンべー!」

「マコ…ちゃん…ダメ…か、も……」

紺のブレザーも赤いリボンも黒く染まり、顔面まで真っ黒に覆われようとした、


その時、



ブオォォォォン!!


凄まじ風圧と共に、かや乃とマコルは後方へ吹き飛ばされた!

拘束していた包帯はことごとく断ち切られている。


「グッ…ゲホッ!マコちゃん大丈夫?」

「ワイは平気や…、猫の体は柔らかいさかいにな。それより……オマエ、遅いやないけっ!覇王はおうんとこのやろっ!?今まで何しとったんや!」

二人と妖者の間には、体高3mmはあろうかという狼のような姿の霊獣が美しい銀翼を背に立ちはだかっていた。

うるさいなぁと言わんばかりにマコルに一瞥くれると、前方のミイラ男に向き直り威嚇姿勢を取る。翼を大きく広げ、前足の爪は霊力を帯びて光り輝く。


ミイラ男は驚いたのか、はたまた怒り心頭なのか、より体をくねらせながら泣き声をあげる。両手から包帯をいく筋も放つが、いづれも黒狼の眼前で弾き飛ばされ、力なく地に落ちた。


黒狼は右前足をズドンと一つ踏み出すと、その衝撃波は地を這い、ミイラ男の真下まで走る。それは5本の光の刃となり真上に突き出した!


「アギャャャャ!!!!オギャァァァァ!!」


全身を串刺しにされながらも啼泣は赤ん坊のそれだ。

ミイラ男はそれでも体をくねらせながら全身から包帯を解き放つと、それは波打ちながら黒狼に襲いかかった!


銀翼を前方に展開して防御姿勢に入るが、包帯はその翼全体に巻きつくと激しく焔を上げた。霊力を帯びた焔は、確実に黒狼の体力を削いでいく。が、四つ脚を踏ん張って低い姿勢を取り耐え、防御姿勢を崩さない。


「かや乃、あんさんが動けるようになるまで守るつもりや。行けるか?」

「なんか、全身が痺れたみたいになってて…少し感覚が鈍いの。」

麻痺パラレシスの効果や。もう少しかかるな、とりあえず立てるか?」

マコルは尾を器用に使いかや乃を立ち上がらせる。制服や顔に広がった黒い染みはほとんど引いているが、麻痺の効果は続いているようだ。

「でも、私がやらなきゃ…ゔっ!!」

何とか足を一歩踏み出そうとしたその時、左足に激痛が走る。

「まさか…」

見下ろした左足首は、焼け焦げた女の手に掴まれていた。その先には地べたを這うような姿勢で女の上半身が確認できる。黒く炭になりかけた着物を羽織り、陰鬱な目でかや乃を凝視する。

「さっきの……痛みが引いたから大丈夫かと思ったけど、憑いてきたのね。悪いけど、アナタに足止めされてる暇がないの。」

左手の指輪に力を込め祓おうとした時、


(お願いします。助けてくださいまし……お願いです……あの子を……)

聞き覚えのある声が心に直接語りかけてくる。

「えっ?私、アナタを…知ってる?」

(お願いでございます……あの子に罪はございません…助けてくださいまし……)

髪も肌もすっかり焼けてしまっていたが、よく見れば生前は端正な美人だったのだろう。その顔には、今や涙が滝のように溢れていた。

濁ったその両目を真正面から見据える。

貴女あなた…もしかして…?あの子って……まさか…⁈」


深呼吸一つ、左手を肩の高さにまっすぐ広げる。

「La guérison du lapin(兎の癒し)」

手のひらからまん丸い鬼火が一つ飛び出すと、地に着いた弾みでウサギの姿に変わる。ウサギは鼻をピクつかせながら女の周りをピョンピョン跳ね回り始めた。

徐々に女の姿が濃くなり、生前の姿を取り戻し始める。黒焦げの着物は明るい色に染めなおされ、焼けた腕は白い肌に。

ウサギが小さくなっていき、消える頃には、鮮やかな赤の静御前を纏い、金の帯をした日本髪の女性が三つ指をつき頭を下げていた。金のかんざしがキラキラと揺れて輝いている。

女性はおもてをあげると、強い意志を携えた目でかや乃を見つめた。

「力を、貸してくれる?」

かや乃の問いかけに、日本髪の女性は再び頭を下げた。


一方、ミイラ男と黒狼の戦いは膠着状態に陥っていた。激しく燃え盛る焔を羽から振りほどこうとするが、まるで赤子の泣き声が泣き止まぬように焔は勢いを増す。

四肢にも包帯が絡みつき、動きを止めていた。

「このっ!くそっ!ギーッ!!」

その包帯を尾でペチペチ叩いたり、噛み付いたりしているのは猫又のマコルだ。

「ワイは頭脳労働専門なのにー!」


突如、何かに感づいたかのように黒狼が抵抗をやめ、マコルに視線を送る。

「んっ?何や?」

さらに視線は真後ろに送られ、つられて見ると、

「お願い!ほんの少しでいいから、時間を稼いで!」

全身から鬼火を噴き出させたかや乃が立っていた。高まる霊気が風を起こし、後ろにまとめた髪もスカートも激しくなびいている

。その隣には見知らぬ日本髪の女の霊が立っていた。


「がってん承知の助や!ほれ、そろそろ本気出さなぁ!」

黒狼に向かって檄を飛ばすと、言われんでもとばかりに咆哮を上げる。

「ガァァァァ!」

全身に力をみなぎらせると、あっさりと縛り付けていた焔も包帯も弾け飛ぶ。

再び威嚇姿勢をとると、ミイラ男は泣くのをやめ、くねらせていた体を硬直させた。

すかさず銀翼を大きく羽ばたかせ、霊気を伴った風は妖者を吹き飛ばし、ドスッと岩壁にめり込ませる。


「今やっ!!」


両手のひらを合わせて前方へ。右手を上、下に。その動きに合わせて炎の弓が出現する。左手を日本髪の女に差し出し、

「さあ、こんなことはもう終わりにしましょう。貴女を待っているわ。」


日本髪の女〜お八重は一つ頷くと、全身が光りに変わっていく。その光はかや乃の左手に収まると、金色こんじきの矢に姿を変えた。

その矢をつがえて、ゆっくり引き絞る。全身からみなぎる霊力は青白い炎となり、次第に上方にせり上がっていく。それは大柄で屈強な男性の姿となり、かや乃と同じように弓矢をかまえた。

さらに高まる霊力に呼応して、指輪の石が輝き出す。

紫の光に照らされ、男性の上半身はもう一つ高く上がると、下半身は馬の体を持つ人馬ケンタウロスが出現した。


(私、少し思い違いをしていた。単なる魔物退治、浄霊する私達はいわゆる正義の味方。みんなを守ってあげられる力を手にしていることに意味があると思っていた。

でもそうじゃない。私がこの力を持って生まれた意味は…多分……妖者みんな解放じゆうにするためだ!)


ミイラ男は、ビクッビクッと少しずつ体をうねらせ、食い込んでいる壁から脱しようとしていた。


「かや乃!早よせい!」


(いま、助けてあげるよ。)


鬼火がかや乃を中心に放射状に広がると、右回りに円陣を組み、さらに燃え盛る!


「ハァァァァァッ! 一発必中!Un coup de cheval(人馬の一撃)!」

かや乃と人馬ケンタウロスが放った矢は炎を上げながら一つになり、妖者の胸に突き刺ささった!

直撃した矢は、ひときわ大きな光を放つ!

岩壁を真昼のように照らした光は、花開くように膨らんだ後、ミイラ男の胸に…まるで吸い込まれるように消えた。

日本髪の女が妖者を抱きしめたように見えたのはまぼろしか……?


つかの間の沈黙。


矢が刺さったであろう箇所から、夜明けを告げるかのごとく優しいが溢れた。その陽に照らされ、黒かった包帯が真っ白に変わっていく。人型がドサッと崩れると、中にモゾモゾと動く気配がした。

そっと近づき包帯の山をほどく。そこには赤子の霊が静かに寝息を立てていた。


「送ってやり。」

「うん。辛かったね、まだこんなに小さいのに。さぁ、お父さんとお母さんが待ってるよ。」

起こさぬように優しく抱き上げると、目を閉じて呟く。


「Le voyage de la mouette(カモメの旅)…」

かや乃の背中から一つ鬼火が上がると、カモメの姿に変わった。周辺を一周すると、赤子の上に止まり、両脚が変化して揺り籠を作る。

その中に赤子をそっと寝かせる。純粋無垢な表情に思わず見入ってしまうが、小さく顔を振ると両手で揺り籠ごとカモメを持ち上げる。その勢いに乗ってカモメは闇の彼方へ消えていった。


鬼火の光が消えるまで、かや乃はジッと闇空を見つめていた。



「強力な妖者やったけど、何とかなったなー。これも参謀のワイの力量や〜。なぁ、覇王のとこの!」

マコルは尾で黒狼の足をペチペチと叩く。労をねぎらったつもりだが、黒狼は緊張の表情を崩さず、あたりを警戒していた。


「騒動を起こしていた妖者は浄化できたんだよね?戻らなきゃ。」

深呼吸一つ、スカートの埃を払いながら言うかや乃の言葉に、マコルが息を飲む。

「そうや!結界を作った張本人を祓ったのに、元に戻らへん!どーゆーこっちゃ⁈」

「グルルルゥ…」

三人?は背中を合わせて周りの様子を伺う。一帯はまだ黒い岩壁に囲まれ、上空には果てしない闇が広がっていた。

緊張の糸が再び張り詰めた…その時、その糸を弾くように


ポン♪ ポン♪


ドン♪


ポン♪

ドン♪


乾いた音〜太鼓を打つような音が聞こえたと思ったら、そこに乗せて少し掠れた笛の音が響き始める。


この時、日本の伝統芸能には無学だったかや乃は、ただの太鼓や笛の音と認識していたが、能の音楽、お囃子はやしだと気付いて血相を変えたのは……


「アカン!アカンでっ!これはホンっマにアカンやつや!

おいっ!覇王んとこのっ、何とかせいっ!!」

黒狼は一瞬不満げな表情を見せたが、事の重大さを察したのか、首を振り背に乗れという仕草をした。

「かや乃!こいつの首根っこに掴まるんや!直ぐに脱出するで!」

「えっ?マコちゃん、急にどうしたの?」

「えーから早く!洒落にならんで!」

状況が飲み込めず戸惑ったが、霊力を消耗しているかや乃は大人しく黒狼の首の付け根〜キ甲部分にしがみついた。

ピョンとかや乃の背に飛び乗ると、マコルは二本の尾を伸ばしクネクネと空中に紋様を描く。それは紫に輝きながら、後方の空間いっぱいに広がった。


「とりま誤魔化しやっ!頼むで!」

黒狼が屈強な爪で虚空を縦に切り裂くと、光の亀裂が生じた。

「飛び込め〜〜っ!!」

翼を広げ後肢を軽く蹴り上げると、宙に浮き亀裂に吸い込まれていく。

後ろに響く能楽器の音が、徐々に遠のいていった。


ーーー


不意に目の前が開けた。

見渡す限り青い空……空っ?

と、思った瞬間、かや乃は重力の法則に従って地上に落ちていった。


「キャーーーーー!!!!!!」


えっ?私の人生これで終わりなの?酷くない?土曜日は引っ越しだから、日曜日に鐘子しょうこちゃん達と吉祥寺の有名なメンチカツを買いに行って、ムーンロードを散策して、ウチで新居祝いするって決めたのにーーーー!!


「って、あれ?!」

唐突に体が軽くなり宙に浮くと、誰かに抱き抱えられたような感覚がした。


「おいっ!お前、嶺岸だろっ⁈

どこ行ってたんだ?みんな探しまわったんだぞっ!」

ギュッとつぶった瞼をそっと……そぉっと……恐る恐る開けると、太眉の頑固そうな男性の顔が視界いっぱいに広がった。彫りの深いなかなかの男前だ。


「えっ……?私、どうしたの?」

「どうしたじゃないっ!非常警報装置の誤作動で防火扉が閉まって開かなくなったんだ。30分くらいで復旧したから…、そのまま避難訓練を開始して点呼を取ったら一人だけ行方不明になってるじゃないかっ!どこかに穴でも開けない限り出られるわけもないし……伝説の神隠しかと思ったぞ!」


妖者の結界を脱出したと思ったら、空から落っこちるし。助かったと思ったら、見知らぬ男性に抱えられて、なんだか怒られているし……。

「って言うか、これって……」

まさかの人生2回目、絶賛お姫様抱っこ中だった。前回は意識がなかったが、今回は違う。男性の体つきが制服越しにも鍛えられた体格だと分かると、心拍数が急上昇し、顔が熱くなる。

「えっと…あの……」

「散々校内を探し回って、いったん校庭にでたら、俺の上から落ちてくるじゃないかっ!間一髪間に合ったから良かったものの。

どうせ渡り廊下の上に出て足でも踏みはずしたんだろ⁈」

と、顎で示すのは校舎2階から体育館に通じる渡り廊下だ。廊下の上には、鯖虎さばとらの猫が尻尾を振りながら気持ち良さそうに寛いでいた。

「入学早々、何を考えているんだっ⁈あんなとこは猫が日向ぼっこでもする所だ。お前は猫かっ?猫なのかっ!?

そもそも、渡り廊下の上に出るには3階の窓から雨どい沿いに移動しなきゃいけないし。そんな危ない事を…。」


くどくど続くお説教を聴きながら、何とか助かったんだと胸を撫で下ろす。あの赤ちゃんもきちんと成仏させることが出来た。赤ん坊が何故あんな強力な力を得るに至ったかは疑問だが、そこまで突き詰める気力は無かった。


ふと、さっきの猫はマコちゃん?っと顔を上げると、今度はまともに男性と目が合った。

「おい、俺の話を聞いているのかっ⁈」

ひときわ大きな声で叱られた途端、不安と安堵と混乱と疲労と恥じらいが一気にかや乃を襲った。


「すっ……すみませんっ…グスッ、すみ… いぃぃぃ〜……」

様々な感情が堰を切ったように溢れ出すと、とめどない涙が頬を伝い、両手で拭うことに必死になる。

「ちょっ!泣くなよ!俺が悪いみたいじゃないか?

ああっと、わかった。俺が言い過ぎたよ。なぁ、すまんって……。」

そうじゃない、アナタが悪いんじゃないって首を振れば振るほど、どこに溜め込んでいただろうと思うくらい熱い涙が湧いてくる。


「小沼先生、そのくらいにしましょう。無事見つかった事ですし。」

「高梨先生…。」

「えっ…えぐっ…ゔっ……せんせぇ〜」

白衣をひらめかせやってきた高梨は、大丈夫よ、と言わんばかりにかや乃にウィンクを送る。

「年頃の女の子ですし、そろそろ降ろしてあげてくださいな。」

「あっ…はい……降ろすぞ、いいか?」

負い目を感じたのか、歴史と体育を受け持つ風間ヶ丘高校の教師、小沼剛士こぬまつよしはかや乃をそっとグラウンドに降ろした。

かや乃はスカートがめくれないように両手で抑えながら、ゆっくり立ち上がる。涙も少し落ち着いたようだ。

「さ、とりあえず保健室に行きましょう。話はそれからよ。」

高梨に促されて東棟へ歩き始めた、が、いったん立ち止まる。小沼へ向き直ると、

「ご心配かけて申し訳ありませんでした。入学式の時も助けていただいたと聞きました。その時のお礼もしないうちに、再びご迷惑をおかけした事、重ね重ねお詫びいたします。」

と、深々と頭を下げた。

「いや、とりあえず無事だったならいいんだ。俺も言い過ぎた。」

頭をかく仕草が子供っぽいなと思いつつ、もう一度礼をすると、高梨の方に駆け寄った。

「よく出来ました。」

高梨に頭を撫でられながら、笑顔を取り戻した。

良い先生ひとだなって思った。


ーーー


高梨と保健室に入ると、思わぬ歓迎が待ってた。入った早々、ギュッと抱きしめられ、

「かや乃さん、良くやりましたわっ!さっすが私が見込んだだけのことはあります。っていうことは、わたくしの鑑識眼が素晴らしいって事ですわね!

あっ!うーたん♪もお世話になったみたいで〜聴きましたわ!ご活躍なさって!これも私の見る目が正しいってことで……」

「おい、困ってんだろ。少し離れろや。」

「何言ってますの?女の子同士なんだからいいじゃありませんか?ヤキモチですか?」

「んなわけねーだろっ!」

「ですわよね、だって國木田は〜」

「おいっ!お前なっ!」

「お二人とも、まぁまぁ。嶺岸さん、びっくりしてますよ。」

「まぁ、みちる!最近、國木田の肩ばかり持つじゃありません?満まさか⁈」

「んなわけないじゃないですか〜。」

「お前いーかげんにしろよ!」

「でもみっちゃん、最近きれいになったよね?好きな人できたの?」

「もぉ、ゆうちゃんまでぇぇ。」

「皆さん、今回の功労者を置いてきぼりですよ…。」

礼奈に抱きしめられたまま、見ず知らずの面々に話しかけられ唖然となった。


「ほらほら、みんないったん落ち着いて。」

高梨の制止に、かや乃に群がっていた一同がいったん距離を取る。

知っている顔は、一人、二人。

「ごめんなさいね。みんなあなたのこと心配してたのよ。無事だってわかったから、早く会いたがってて。生徒会室まで連れて行くって言ったんだけど。」

高梨はロングヘアーをかき上げながら、楽しそうな顔でベッドに腰掛ける。みせつけるように長い左足を払って脚を組むポーズは魅力的な他ない。

「さ、会ったことある人もそうでない人も、ご挨拶をどうぞ。」


早速、首元に青いリボンをした縦巻きロールの少女がひとつ前に出た。

「まずわたくしから失礼しますわ。風間ヶ丘高校、3年A組、生徒会長を務めます覇王はおう礼奈れいなと申します。こちらは私に使える霊獣。」

右足をステップバック、爪先をトンと鳴らすと、礼奈の脚の周りをクルクルと回る黒いポメラニアンが出現した。

「名をうららと申します。愛称は、うーたん♪うーちゃん、うー様。お好きな呼び方でよろしくお願いしますわ!」

黒ポメはお座りをすると、フサフサの尾をフリフリしながらかや乃を見上げている。


(これがあの狼みたいな霊獣なのか……。)


「さっきはありがとう。とても助かったわ。結界から脱出して落ちそうになった時も助けてくれたでしょ?本当にありがとうね。」

かがんで声をかけると、黒ポメはクルッと2回転して再びお座り。

「きっとご褒美のおねだりですわ。とりあえずダイエットクッキーで我慢なさい。」

礼奈から少し大きめのクッキーをもらうと、テッテッテッっと足を鳴らして、ベットの下に潜り込む。


そしてこちらが、と礼奈に促されたのは、身の丈180cmはあろうかという大柄な男子生徒だった。手足が長く、広い肩幅、首元に青と銀のストラップのネクタイを崩しめにしている。

「俺は3年B組、國木田くにきだ総司そうじだ。生徒会副会長を務めている。あまり部活動が盛んな学校じゃないが、ハンドボール部の主将も兼任しててな、生徒会こっちはあんまり顔出さないがよろしく。」

「そうなんですわ〜國木田はもぉそれはそれはハンドボールに夢中でしてね〜。それは何故かというと〜」

「あー、うるさいうるさい。」


再び2人の掛け合いが始まるかと思いきや、

「はいはい、漫才はここまで。入学式でご挨拶させてもらったね!矢偉田やいだみちるよ。2年C組、書記ってことになってるわ。一応写真部にいるけど、あってないような部活かな?よろしくね!」

ポニーテールの明るい髪を揺らしながら、握手を求めるのは、入学式の司会をしていた2年生だ。首元の黄色いリボンは健康美溢れる表情を引き立てている。

「ありがとうございます。こちらこそよろしくお願いします。」

繋いだその手に三人目の手が重なる。


「初めまして。私は霞城かじょう祐希ゆうき2年E組よ。肩書きは副書記。放課後は吉祥寺のカフェでバイトしてるから、基本的に月曜と金曜の集合しかこないけど。良かったらカフェに遊びに来てね。」

満を太陽とするなら、月のような印象をうける。色白で静かな語り口。ただしナチュラルだがメイクはバッチリ、エクステだろうまつ毛は気持ち良いほど上に伸びていた。


「最後になりましたが、僕は徳永とくなが益荒ますら。2年D組。会計担当です。僕は勉強がてら生徒会室によくいますのでよろしく。」

2年生を示す黄色と銀のストラップのネクタイをきっちり締め、おお振りの眼鏡をかけている。恐らく副会長と同じくらいの長身だろうが、毛量のある癖っ毛がさらに丈を増していた。

「益荒君は常に数学で学年トップですのよ。私もよく教わってますわ。かや乃さん、数学苦手でしょ?」

「えっ?何で知ってるんですか?」

「何となくよ。そして、お待たせしました。」


礼奈は生徒会の他メンバーに向き直り、再びかや乃を抱きしめた。

「わが風間ヶ丘高校生徒会の新メンバーよ。副会計の嶺岸みねぎしかやさんです。よろしくお願い申し上げますわ!」

「よろしくお願いします…って、聞いてないんですけどっ!!」

皆の拍手に釣られてお辞儀をしてから、気付く。

「まぁ、ボケとツッコミも鮮やかですわ!」

「にしても、生徒会なのに週に2回しか集まらないし、肩書きって……?」

「ご説明不足でしたわね。この風間ヶ丘の土地の事はご理解いただけましたでしょ?」

「はい、土地の下に妖者の世界が封印されていて、建物自体も封印の一部だと。」

「そうですわ。そしてその封印の監視と、学校に現れる妖者を祓うことを使命としているのが、この生徒会役員ですのよ。」

「ってことは、ここにいる全員っ……⁈」

「ええ、全員霊能師、まぁ学生なので霊能師の卵ですけど。ちなみに顧問はこちら、8頭身の超絶美女、学校のマドンナこと高梨たかなし美樹みき先生ですわ!先生は優秀な結界師けっかいしですのよ。」

高梨は、ハァイ!と軽く手を挙げ、悩殺ウィンクを放つ。

そういえば、入学式の時にグラウンドに見えた腕を一瞬で消した事を思い出した。

「色々お話ししなきゃいけないことはありますが〜お疲れでしょ?今日は先生方や警備員の皆さんが封印の穴がないかチェックしてくださるそうですし。かや乃さんの歓迎会を致しましょう!!

國木田、あなたも来なさいよ!」

「わーったよ。谷田たにだに言付けてから行くから。」

谷田という名前に一瞬、礼奈の表情が固くなったのと、同学年とは言え一人だけ苗字呼び捨てに引っかかったが、さすがにこれ以上頭が働かなかった。

「それなら、私のバイト先にどうぞ!今の時間なら奥のパーティールームが空いてると思います。」

「そうですわねっ!あそこのケーキ、どれを食べても美味しのんですのよ!」

「糖質は頭を働かせるのに欠かせない栄養素ですから。ついでに明日の予習を済ませましょう。」

「あ〜ん!私期末の微分積分、平均点ギリギリだったんだ!益荒君、お頼み申し上げますぅ〜!」

「僕のプライドにかけて何とかしてみせますよ。」

「それじゃ私、バイト先に予約の電話してきますね。」

「私のウチの送迎車を手配いたしますわ。15分後に南門に集合しましょう。では〜!」

普段、皐月や藤原といった歳上と話す事の多いかや乃は、会話のテンションについていけず呆然としていた。ストン、と椅子に落ちる。

みんなそれぞれ言いたいことを言って、いったん解散してしまった。


「ふふっ、賑やかでしょ?みんないい達だから、頼りにしていいわ。もちろん何かあったら私もね!」

長く美しい髪を揺らしながら、かや乃の顔を覗き込む。

「あと、週明けに今回の件の報告書レポートを作らなきゃいけないの。少し話が聞きたいから、放課後良いかしら?」

「はい、私も先生に聞いてほしい事がいっぱいあります。」

入学式から1週間余り、びっくりするくらい色んな事があった。特に妖者の正体が生まれたばかりの赤ん坊だった事は、かや乃に衝撃を与えた。


妖者みんなを解放する。


あの時、何故そう思ったのかわからない。でも、その気持ちに自分が生きる意味がある気がした。

そして……


「あれっ⁈」

急に胸がドキドキして、苦しくなった。顔が熱くなる。何で?何だっけ?こんな風になった事が、最近何度か……。


「大丈夫?かなり霊力を消耗したでしょ?」

「あっ…大丈夫です。疲れた時は無性に甘いものが欲しくなるし。皆さんともっとお話したいんで。

私、行ってきます。」

すっくと立ち上がり一礼すると、元気よく保健室を出て行った。


ーーー


「久しぶりね、マコル。」

「ホンマや、美樹姉さん。13年ぶりやろか?あの日以来やな。回復に時間がかかってしもうて。」

いつの間か高梨の隣には、猫又のマコルが座っていた。

「私は戻ってきたわ。私の居場所はもうここしかないから。」

「一人で背負うのはよしなはれ。アレは誰も太刀打ちできへんかったって。」

「私、三十路みそじになったのよ!信じられないわ。」

「百年以上生きているワイには、人間の歳なんぞ興味あらへんが……綺麗りっぱになったで……。」


しばし二人の間に、沈黙が訪れた。

何か失ったモノを探すように、お互いに視線を巡らせる。


「なぁ、嫌なこと思い出させるようやけど、話さなあかんことあんねん。」

「私もよ。」

「ワイからでええか?」

「うん、どうぞ。」

高梨はベッドにゴロンと横たわると、マコルに背を向けあさっての方向を見始めた。

そんな仕草の意味を理解しているのか、マコルは話し始めた。

「あんなぁ、かや乃達と妖者の結界を出るときにな、ワイ、聞こえてん。お囃子の音が。」

高梨は無表情で起き上がると、目線を合わせず言った。

「実は私も…いや、私だけじゃなくて、職員室に閉じ込められた霊能師全員が聞いたの。能楽器の演奏を……。」


二人はしみじみと校庭を見つめ語りあった。


「再会の刻は近いんやな〜。」

「えぇ、この13年間待ち望んだことだわ。」

「一人で立ち向かうのは無謀やで。」

「わかってるわ。でも、私、このために学校ここに戻ってきたの。みんなを解放するために。」

「せやな、今もあいつら一緒におるんやろなぁ。」

「そうね、あんなに仲良かったんだもの。例え妖者の一部になったとしても……ね。」


二人が見つめる校庭には、稲穂のようにユラユラ光を反射してきらめく人の腕が無数に生えていた。


ーーー


雲ひとつない空に弓張月が輝く丑三刻、都立風間ヶ丘高校は静寂に包まれていた。

数多くの学生たちの活気が冷めた学校は、永久凍土のごとく一片の命の気配も感じられない。


そんな校舎に唯一、月明かりに照らされて輝いているのが、東棟と西棟を結ぶ2つの渡り廊下だ。床以外ガラス張りの長方形は、宝石ジュエリーのショーケースのように場違いな華やかをはなっていた。

内、6階を結ぶ廊下にまさにジュエリーのように輝く光が4つ、見て取れた。その光はランダムに浮遊し、次第に音を奏で始める。



ポン♪……ポン♪


ドン♪


コン♪


ポン♪


空気の流れに紛れるように太鼓の音が混じり……


ヒュリュルー♪


そのリズムに絡むように、乾いた笛のが響く。


次第にBPMが速くなり、祭囃子の様相を見せると、パタッと音が止む。


ズズッ…ズスズッ……


何かを引きずるような音と共に、月明かりを全身で反射しながら舞い続ける。女面を被り金の髪飾りはユラユラと揺れる。金と銀の刺繍が散りばめられた着物を纏い、廊下中央まで来ると、再び浮遊した奏者の演奏が始まる。


お囃子にのり、振袖をはためかせながら優雅に舞う姿は光を放ちながら廊下ぶたいを行ったり来たりする。

舞台からのぞむ校庭には、一つ、二つと半透明の腕が生え、舞に合わせて動き出した。次第にグランドを埋め尽くすまで増えた数千本の腕は、まるで観客オーディエンスのように舞に合わせて、put your hands up を繰り返した。

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