表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/1

忘却ガールと記憶ボーイ

大きな時計が目を引く全校生徒500人ほどの北海道にある真海高校〈しんかいこうこう〉


どこにでもいる至って普通の男子高生

雨傘 纏〈あまがさ まと〉


どこにでもいる至って普通の女子高生

野川 涼子〈のがわ りょうこ〉


これはそんな幼馴染2人の物語ー。



ジリリリリジリリリリタンッ


纏「ん〜朝かぁ」


少し長めの黒髪の纏は、重たい瞼を擦りながら纏はカーテンを開ける

2階から見える女の子はいつも変わらずこちらを見て手を振る

少し茶色がかった色をしたボブがよく似合う目がぱっちりした女の子だ


纏も手を振り返す

朝食も食べずに制服を着て玄関から出る


そんな毎日の繰り返し

纏はそんな日々が好きだった


涼子「纏!おはよ!」

彼女はいつも変わらず元気に挨拶をする



纏「おはよう、昨日ハレトーク見た?ベロ長い芸人」

涼子「なにそれ、きも〜」

纏「メンドーソバメシのベロ2mあんの」

涼子「見ればよかった!」


涼子は最近ハマっているメンソバのベロに興味津々だ


纏「それにしてももう2年か〜短かったなぁ」

涼子「ね、雪もこーんな積もってる」


手を広げながらクルンッと廻る涼子

2月に寒々しく降り積もる雪は太陽に美しく照らされていた


涼子「今日、早退するかも」

纏「なんで?」

涼子「頭が凄く痛くてボーッとするの」

纏「全然平気そうだけど」

涼子「ウソ、いつもより静かじゃん」


わざとらしく腰を曲げ両手を下げうなだれる涼子


纏「ズル休みは許さんぞ〜」

涼子「ほんとだってばー」


そうこうしている間に教室の前で別れる


涼子「あ、じゃあまた帰りねー」

纏「おう」


音都「ひゅーいつもあついねー!」

彼は寺井 音都〈てらい おと〉纏と同じクラスのお調子者だ


纏「うるせーただの幼馴染だって」

音都「ほんとーかー?」

纏「そんなこと言ってお前が好きなんだろ〜」

音都「ばっ、ちょっ、おっおおお、おまえうるせーぞ」


慌てふためく音都にニヤケ顔で見つめる纏


纏(好きなのか)


今日もまた知識を得た纏であった


体育の時間、隣のコートで涼子のクラスがバレーボールをしている

涼子は綺麗なフォームからスパイクを決めてこちらを見てドヤ顔で親指を立てた

そんな運動神経抜群の涼子に纏は笑顔で返した





時間割も4限になり、救急車の音が聞こえだした


音都「おい纏、お前じゃね」

纏「んなわけねーだろ」


教師A「そこ、静かに」


纏、音都「「はぁい」」


教師B「すみません、ちょっと」

教室のドアが開き隣の教師と話をしている

さすがに皆、聞き耳を立てる


教師B「...のが...さんが...倒れ...代わ...お願い...」


纏(倒れた?嘘だろ)

音都「マジかよ...大丈夫かよ」






学校が終わり、急いで涼子のいる病院へ向かう纏

病室へ行くとベッドにいる涼子の姿があった


纏「大丈夫か涼子!」

涼子「あ、纏〜大丈夫みたい」

纏「よかった心配したぞ」

涼子「へへへっありがとう」


元気そうな涼子を見て安堵する纏


しかし静かに涼子が口を開く


涼子「でもあたしね、頭の病気なんだって、でね、手術しないといけないみたいなの」

纏「そうか...難しいのか?」

涼子「ううん、でもね、忘れちゃうかもしれないんだって、だ、だからね、伝えたいことがあるの」


纏「そんな、万が一だろ万が一」

涼子「お医者さんが可能性は高いって」

纏「そんなの病院変えれば!」

涼子「ダメだよ、ここ以外に大きな病院はないもん」


纏「そ、それでもさ...」


言葉に詰まる纏を被せるように涼子が喋る


涼子「ね、伝えたいこと言ってもいい?」


纏「う、うん」

涼子「あたしね、纏のこと好きだよ、ずっと前から」


纏「えっ」

纏は一瞬、時が止まったかのように目を丸くした


涼子「体育祭で頑張って走ってた纏も宿題忘れて怒られてた纏もあたしが風邪ひいたとき心配してくれた纏もみーんな好き」

照れながらも涙を流し、涼子は今までの想いを伝えた


纏「涼子...」



纏は想いを伝えられて自分の想いにやっと気付いた



纏「俺も涼子のことが好きだ、いつも元気で、人のこと思える優しい涼子が」

涼子「纏...ありがとう...だけど...どんなに忘れたくなくても、きっとあたしは纏のことを忘れちゃうと思う」


涼子は布団に大きなシミを作るほど涙が溢れでる


纏「俺は忘れない、涼子が俺のことを忘れても絶対に忘れない、だから記憶がなくなっても俺は涼子と一緒にいるから!」

涼子「...ダメだよ、あたしはあたしじゃなくなるんだもん...辛いよ...」


纏「じゃ、じゃあ思い出させる!何年かかっても絶対に」


纏と涼子は手を取り合い泣いている


〜♫面会時間終了のお時間です

アナウンスが流れ面会時間の終わりを告げられた


看護師「そろそろお時間ですので」


涼子「あたしは纏と同じ気持ちで嬉しかったよ...だから...あたしのことは忘れてね...纏...」

纏「り、涼子!そんなことできるわけないだろ!」


涼子「ありがとう、纏...じゃあね...」

纏「涼子、俺は思い出させるからな絶対に」


纏と涼子は別れ、1人になる

涼子は涙を流しながら呟く


涼子「大好きだよ...纏...さよなら」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ