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ヒステリー・パニック!  作者: シュガームーン
6/17

弐.護衛の仕事には危機感を持て 壱

少し遅くなりました

書くのって大変ですね


「源内さん。書類の整理、終わりましたよ」

「あ、ありがとー。じゃあそれ、龍馬サンの机に置いといて」

「分かりました」



 ゴールドラッシュ事件から数日後、主に源内さんや玄白さんから事務処理を教えてもらい、何とかそれなりに少しずつ慣れてきた。

 ……というよりも何日も同じ職場で働いたこと自体がほぼ無かったので、ちょっぴり感動で泣いてしまった。


 職場と皆さんに凄く感謝してます。


 コンコン、と扉をノックする。


 この建物の二階、今自分が立っているこの階は仕事用のフロア。

 何か仕事が入るまでは全員がこのフロアで遊び…いや、待機するらしい。

 全員に机、椅子は最低限配置されていて、必要なものは各自で補充は自由。

 そのフロアにはまた別の部屋へとつながる扉もあり、談話室やトレーニングルーム、仮眠室、医務室、そして


「誰じゃ?」

「直哉です。書類を持ってきました」

「おう、入れ」


 ここ、社長室など……いや龍馬さんが一応頂点ではあるから一応この部屋の主ではあるんだが、社長って感じはしないし……。

 私情は置いておき、失礼します、と部屋の扉を開ける。


「よう、直哉。事務の調子はどうだ?」


 中に居たのは龍馬さん。まぁ、当たり前か、と机に書類を置いた。


「楽しくやらせてもらってますよ。源内さんや玄白さんが教えてくれるので」


 俺がそう言うと龍馬さんは呵呵、と笑う。


「玄白は元がお人好しだし、源内は後輩が出来て嬉しそうだしなぁ!」

「あれ……源内さんが自分の前に入ったんですか?」

御主おぬしの前……、まぁ、半年くらい前か。

 その間にもパラパラ新人は来るには来るが、全員辞めちまった」

「ああ……なんかそんなこと言ってましたね……」


 何となく察した。

 此処は結構ハードな職場だ。いや、職の内容だけじゃなく、一日一回は二階の待機フロアに襲撃が来る。


 ナイフやら銃弾やら飛び交うこと飛び交うこと。

 ………またそれを返り討ちにする先輩方も凄いのだが。


 つい最近でいえば、小野さんが自分の倍もあろうが大男を一瞬で投げ飛ばしたことだろう。…あの時は呼吸が止まった、本当に。


 ………改めて考えると凄い所に入ったなぁ。


「龍馬ぁぁあ!!」

「ほわっ!?」


 ここ数日を思い返していて、突然の怒号と扉の開く音に妙な声が出た。振り向けば、そこには一人の男が……








 黒く癖のついたツンツンしている髪。黒い目には怒気が込められ、端整な顔は怒っていて、笑っていて、それらが混じった表情をしている。灰色の着物と紺色の袴の和装姿。腰には刀が提げてある。


「おう、慎太しんた、出張お疲れさん」


 何事もないように龍馬は笑ってヒラヒラ手を振る。男はカツカツとその表情のまま龍馬に寄っていき、手に持った書類を彼の顔面へと突きつけた。


「この書類は何だと思う?」


 怒りのこもった低い声で問う。龍馬はまだ全く笑みを崩さない。


「はて、何じゃろうか」


 笑ったまま顎に手を添え、首を傾げると部屋の温度が数度程下がったような、そんな寒気がした直哉。


「請求書だよ馬鹿野郎」

「請求書……? ……あぁ」

「お前は俺に一体どれ程の心労を与えれば気が済むんだ 帰ってだぞ? 帰ってすぐに仕事を渡すとは鬼畜か?鬼か?悪魔か? いや別に答えなくていい選ばなくていい 俺の今一番欲しい答えは何故請求書が発行されたのかとお前がこの状況で何故それ程満面の笑みに成っているかだ ブチのめすぞ貴様」


 いつの間にか首を掴んで揺さぶっている男だが龍馬はあっはっは、と大きく笑っている。


「いやあ、すまんなぁ。頑張ってくれ!」

「ふざけるな!!」

「ちょっ…ちょっと!? 危ないですから!!」


 手に込められている力が更に強まり首に食い込んでいっているのを見て、流石にやりすぎだと思ったのか、慌てて直哉がその間に割って入り、その手首を掴む。


「っ? お前は……」

「龍馬さんとどういう関係かは知りませんが、手を離して頂いてよろしいでしょうか」


 直哉は手に力を加えて、でもできるだけ事を荒立てないように言葉を選ぶ。

 男は一時、直哉の登場に呆気にとられていたが、すぐ眉をひそめて龍馬に問う。


「龍馬 この少年は……」

「新入りの志賀直哉じゃ」

「誘拐か」

「違う」


 やはり龍馬はじと目で見られている。

 男はため息をつくと龍馬の首から手を離す。直哉も男の手首から手を離した。


「新人か こんな職に就いてくれるのは嬉しいが、同時に常識人が歪んでいくのは嘆かわしいような……」

「え」

「みっともない姿を見せ、申し訳ない。俺は中岡なかおか慎太郎しんたろう

 海援隊隊員兼『陸援隊りくえんたい』隊長を務めている」

「へ?」

「よろしくな、新人」


 今までの怒気が嘘のように、男・・・中岡は友好的に微笑む。


「え、隊長? 陸援隊?」

「そっ、陸援隊のトップ」


 龍馬が立ち上がり、んんっと大きく伸びをしつつ答える。


「そして……儂の相棒的存在じゃ」


 な?と首に手を当て、コキ、と鳴らしニッと笑う龍馬に、中岡はふん、と鼻を鳴らしただけだったが反論はしない。


「そう思ってくれているなら、少しは俺に回ってくる後仕事のことも考えろ。放浪自由人」

「断る」

「おまっ……!!」


 即答する龍馬に怒りが再び湧き上がる中岡だが、抑え、飲み込んで、一度深呼吸。


「……請求の件は俺じゃどうにもできん…。渋沢しぶさわ殿から護衛任務を頼まれているから直接交渉しよう。構わんな?」

「そう言うと思ったぜよ、慎太



 というわけで、直哉」



「へっ?」

ぬしもついて行ってこい」


「はぃっ!?」「おい」


 龍馬、爆弾発言投下。


「慎太に小町もついていれば、安全はほぼ保証されておるようなもんじゃき。死にゃせんよ」

「待て、龍馬。そんなに急ぐ必要も無いし、第一経験が浅い。護衛任務はまだ早くないか?」

「何を言うちょる」


 異議を申し立てる中岡に龍馬はニヤリと笑う。


「そっちの方が面白かろうが」

「面白半分な理由で決められてるのはたまったもんじゃないんだが」

「中岡さん気持ち分かります、分かりますけど








  その手は抑えて!!」


 震える右手を上げる青筋を立てる中岡を必死に止める直哉。その様子を龍馬はニヨニヨ見て笑う。


「そういう訳で頼むぜよ、慎太」

「ブチのめす」

「だあああ中岡さん抑えてぇぇえ!!」



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