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地球侵略マニュアル   作者: 野口マリック
5/8

其の五

1500字くらい、多分最短。

こんな感じで、視点が入れ替わるごとに切れていくと思いますー


「ちょっと、酔っ払ってるでしょ?」

「ぜーんぜん」

「酔ってるじゃん、ほらお水」

 顔をワインと同色にさせてふらついている詠子に、紡美は水を手渡した。なんだこれはと言わんばかりの表情で、ぽけぇっと水面を見つめていたが、やがて飲み干した。


 こんなことになるなら勧めるんじゃあなかったと後悔した。お酒が弱いとはアピールしていたが、まさか酒乱持ちだとは知らなんだ。

「デザートはあるべよ?」

 方言がでている。完全に(かせ)が外れているようだ。

「ちょ、声大きい……」


 

 紡美は軽からぬ後悔を胸に覚える。泥酔してしまった以上、詠子のアルコール分解が早いことを祈るしかない。

 仕返しにとスマートフォンを取り出し、録画を開始する。ネットに公開なんて非道な真似はしない。ただ、これをみて、慚愧(ざんき)に耐えない思いをしてもらおう。

「生徒は先生に杯を注ぐものれす!」


 呂律が回っていない。早速撮れ高が取れた。

「酒癖悪っ、はいこれで最後」


 突き付けられたグラスにワインを並々と注いだ。ボトルは空になった。

「……ぷはぁ」

「ちょ、イッキしたら死んじゃうよ」

 詠子はただでさえお酒に弱い。急性アルコール中毒で倒れられてしまったら、たまったもんじゃない。さっさと帰らせるべきだと判断した。


「デザートはぁ?」

 同じことを何度も繰り返し言うのが、酔が回っている証拠だ。詠子は酒が入ると図々しい性格に変貌してしまうという性質があるのだと、紡美は肝に銘じた。

 甘物を与えれば落ち着いてくれるだろうか。ティラミスが目に付いたが、確かブランデーかリキュール、どちらにせよアルコールが配合されているので、ティラミスは論外だ。


 詠子はチョコレートが好きだったはずだと思い出す。

「ハイハイ、このガトーショコラなんてどお?」


「よかろお!」

 オーバーに首肯したせいで眼鏡がズリ落ちた。

 ツンとした高い鼻に、可愛らしいとも中性的な顔立ちとも言える、彼女によく似合う眼鏡だ。


 店員にオーダーを済ませ、詠子にお手洗いを促した。これで少しでも酔い醒めてくれれば僥倖だ。

 ものの数分でトイレから帰ってきた詠子は、シャツがウエストからだらしなくはみ出ている。

 鏡を見なかったのか眼鏡もズリ落ちたままなので、手早く身だしなみを整えてあげた。

 手は洗ったのだろうかと見てみれば、手首まで湿っていたのでちゃんと洗ったようだ。


 詠子を席につかせ、運ばれてきたガトーショコラとティラミスを頂いた。

 会計を済ませ、伝票の料金を見せれば覚醒するだろうかと思ったが、「ごちそうさんでーす」と傲慢にも頭を撫でられた。見事なまでの豹変ぶりだった。


 コートを着させ店から出ると、寒風が耳をもぎ取りにかかってきた。

 紡美は父親譲りの丈夫な肝臓に感謝した。酒豪とまではいかないが、強い自信はある。

 夜道に女性二人が千鳥足でふらついていていたら、その結末を予想するのは容易だった。


「送るよ」

「いい、大丈夫!」

 二人の家は反対方面だ。遠慮するところを間違えているような気もするが。

「そのふらつきようじゃ、何の説得力もないんだけど」


「酔ってないべさ」

 田舎育ちの頑固なこの女に、これ以上の説得を試みたところで不毛だろう。親切を足蹴にされるだけだ。

 詠子のアパートはそう遠くない。時間的にも深夜とは言い難い。危険はないと判断していいだろう。


「はあ、気をつけてね」

「ごっそさんした」

 詠子はほぼ習慣による無意識で歩き始めた。

 そして、歩き出してから数分の事だった。

「そこのお姉さん、俺と遊ばねぇか」

どうも、野口マリックです。

……特に言うこともなく、すんません、はい。

次回は、またパラテラ卿が奔走します。慣れない地球では異星人はきっとこうなるだろうと、考えました。お楽しみに

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