其の二
ダイエットしてるけど、一向に体重減らないです。難しいですね。ツイッターで散々呟いてるんで、ここに残すネタがないっす。オモロイこと言えなくてごめんなさいねほんと
2
「君は凄いな。私なんて一町もズレた」
王宮前に着地し、大門をこじ開ける。
翌朝が出発だけあって、皆宮内を忙しなく歩き回っている。
タゲェティブ大臣の異動は王に判断してもらうしかない。パラテラ卿は足早に王室へ急ぐ。
貴族が集い仕事をする場と王が生活する施設は別にある。
王族が住まう別館へ繋がる連絡通路の入り口に佇む、二人の見張りに止められた。
「立ち入り禁止だ。王の御寝が間近である」
王族が再び性交可能になる年月は、一般兎人より短く、約14年。ニュービーン姫が14歳であることから、かなり近いだろうとパラテラ卿は察した。
「お勤めご苦労、急用でな」
タゲェティブ大臣は門兵の肩に手を置いた。
「大臣様!どうぞお通りください」
「急用なのだ!」
ニュービーン姫までも付いて来ようとするが、見張りに抑えられる。
「姫様はご遠慮下さいませ」
「なんでー!?」
「王のお体に障るからです。さ、こっちへ」
喚く姫を背に受けながら、パラテラ卿は薄暗い廊下を歩く。階段を上がり王室の前に立つと、タゲェティブ大臣に訪ねる。
「ここで待たれますか」
「うむ、そうしていよう」
タゲェティブ大臣に一礼し、扉を叩く。
「失礼致します、こちら第七班長パラテラであります。明日の侵略作戦にタゲェティブ大臣殿が侍ると仰られているのですが」
静寂が流れ、睡眠中かと諦めようとした。
すると抑揚のない声音が返ってきた。
「入れ」
パラテラ卿が入室すると、王は正面で鎮座していた。王は裸だが、机が遮っているのでその全貌はみえない。
880歳らしい貫禄で、王は手を組んでいた。頽齢期はまだ先のようだ。
「まさか本当に来るとはな。……まあよい、件の用件は認めてやろう。しかし、タゲェティブが消える損失は大きすぎる。…………そうだな、他の乗組員を全て兎国に残す」
「つまり三人で作戦を遂行するということでありますか」
「そうだ、異論はなしだ」
他の搭乗員が残るということは、パラテラ卿に沢山の仕事が舞い込んでくるという意味である。
「なに、君の分まで彼女はやってくれるさ」
パラテラ卿が否定しようとしたその時だった。
「おい、出たぞ!」
しゃがれた声で、隣で事務に勤しむ傍付の女に呼び掛けた。
女は飛ぶように王の膝元まで移動し、ひざまづいた。
もう一人は窓から飛び出していった。
すぐに王の準備が整ったのだと悟った。
「ああ、気にするな。この歳になってからというもの、勃ちが悪くてな。妃が来るまでこうして下準備させている」
「左様でございますか」
萎靡を訴えたが、嘆き悲しむ素振りは見せなかった。
一度も事をしたことのないパラテラ卿にとっては、王のしきたりといえども多淫が過ぎて仕方がない。
「作戦の指揮はハカナ中将だったかな」
「左様でございます。……変更をその様に伝達しましょうか」
「今報告書を書くから……筆を何処に置いたかな」
王は机の上をまさぐり始める。
「あ、これをお使い下さい」
パラテラ卿はいつも携帯している筆に、携帯墨を浸けて渡した。この二組は備忘録などに使い、庶民にも親しまれる安物だ。
そんな安物では無礼だと怒られることを懸念したが、そんなことはなく、王は素直に受け取った。
この場に側近の護衛でもいれば、不届者と叱咤されたことであろう。
パラテラ卿は、王が品の、しかも雑貨に、高級か否かを気にする性格ではないことを知っていた。
「おお、……………よし、これを中将に渡せ」
署名をした紙に筆を添えてパラテラ卿に返却した。
四つ折りに折り畳んで専用の封に閉じた。
「御厚意に預かりありがたく存じます。では」
「うむ」
扉の前で再び深く一礼し、退室する。入れ違いざまに裸の女性が部屋に這入っていったので、今宵の妃なのであろう。
腕を組んで俯いていたタゲェティブ大臣がパラテラ卿の影に気付く。
「―なんだって?」
「タゲェティブ大臣が任務に参加するならば、他の隊員を全て兎国に残留させるとのことです。また、ハカナ中将にこれをと」
タゲェティブ大臣は顔を上げた。含み笑いをしている。
「そうか、まあ、私は少人数が好きだから寧ろ喜ばしい」
自信あふれるその態度に、背中を預けてもいいのだろうか。
タゲェティブ大臣は補足した。
「パラテラ卿や、まあ気楽に観光しよう」
上司が職務怠慢を促してくると、自分も責務を放棄してしまっても構わないのではないか、とすら思えてくる。
「……とぉりあえず、ハカナ中将のいらっしゃる本部へ参りましょうか」
「そうだな。地球に行って何するかもよくわからんし。してパラテラ卿」
「何でございましょう」
「堅っ苦しいから尊敬語を使わないでくれないか」
……反論したところで、だ。
「∣畏、わかりました」
門番とじゃれあっていた(煩わせていた)ニュービーン姫を回収し、別棟の作戦会議室に足を運ばせた。先刻までパラテラ卿が船を漕いでいた部屋でもある。
薄暗い講堂の真ん中に、ポツンとライトが照射されている机があった。純白の礼装の上着を椅子の背もたれに掛けて筆を走らせているハカナ中将を発見した。彙報を纏めている様子だ。
パラテラ卿が息を吸い込んだ刹那、タゲェティブ大臣が口を開いた。
「ハカナ中将、ちょっといいかな」
名を呼ばれて顔をこちらに向けた彼は目を剥く。
「これは大臣!私どもにご足労戴くとは、一体どうされたのでしょうか」
大臣直々に遣わすあたり、余程の事態ではないと憂懼したのだろうか、ハカナ中将は身構えて直立不動の姿勢をとった。
面倒臭そうに手で払ってから、おもむろに王直筆の承諾書を取り出して、投げつけた。
「これは王の……どういう旨でしょう」
「察せ馬鹿者。パラテラ卿以外の班は留守番だ」
ハカナ中将は口をあんぐりと開けた。さっきまでの威厳はどこへやら。
「畏まりました。……えー、では概要を説明をしてもよろしいでしょうか」
「うむ」
「……地球侵略作戦ですが、任務は主に二つ。一つは、五三年前と比べ、人間はどれほど技術を進化させたかと、軍事力の推定です。もう一つは、改めて人間の生態を深く観察することであります。この際、決して暴力沙汰は起こさないようお願いします。地球に行くに当たり、身体を人間の構造に近づかさせて戴きます。幸いにも、外見は同じなので、内部を改造し、地球の環境に適させます。……地球人は、火星やその他の天体に生命体がいるのではないかと思っているようです。兎国に目を向けられていないのは、兎人にとってはありがたいのですが、この情勢がいつまでも続くとは限りません。人間の技術は日進月歩に進んでいます。今のうちに手を打たなければなりません。皆様のご健闘とご活躍を、お祈りさせて戴きます」
ああ、後、と付け足す。
「この仕事は絶対にしないでください。……王の朶雲は拝見しました。後はお任せを」
決め台詞が中々出てこなかったので、腹が次第に痛くなってきたところだった。
「なるほど、……ではパラテラ卿、用は済んだから帰ろうか」
「それはぁ……」
「無論君の屋敷だ」
「あ、終わったー?」
「ニュービーン姫は城に……」
「やだ」
これから五年間、この我儘な上司と王族を連れると想像すると、吐き気を催すパラテラ卿であった。
三人の貴族は、窓を開けて跳び立った。
どうも、野口マリックです。前書きで書くことがないので、もちろんここに書くこともありません。
今日連続投稿ってことを言い訳にさせてくださいな
えー、今回結構短い。すんません。でも次はそこそこあるので、よろしくお願いしますね