冒険者になろうとしました
あ、どうもユウスケっす。
急いでるんで、以下略!
「ゼェ…ゼェ………フーッ。つ、着いたぁ〜」
あぁ〜疲れた。
アイリスと別れてからずっと走ってたからな。
10分全力疾走は流石にキツかったなぁ。
「……よし!落ち着いたし中に入りますか!」
さっさと登録して稼がなければ!
早くミーアに会いたいし。
俺はゆっくりとドアを開けた。
ここは、ギルド『魅惑の騎士』。通称チャーム。
名前からして如何わしいが、王都公認のれっきとした正規ギルド。
ここスターチスでは唯一の冒険者ギルドで、約300人以上の冒険者が登録されている。
仕事ぶりも良く、街の人達からも信頼されている街のマスコット的な存在のようだ。
他の国からこのギルドの名を聞きつけ、わざわざ登録しに来るような人もいるらしい。
外見はさながらちょっとしたお城って感じだったけど。
中は空間が開けてて、開放感に溢れている。
辺りを見回すと、
入ってすぐに正面にカウンターが見えて、受付嬢が座っている。
何人かいるが、俺的には真ん中の子がタイプだな。
幼い顔立ちで、クリクリの大きな瞳。
ブロンドのショートボブに、華奢な体。
何より、不釣り合いな巨乳ってところがなんとも言いがたく……。
ゴッホンっッ!!!
えー、左奥には、落ち着いたカウンター席の酒場があり、こんな時間から飲んだくれている奴らがいる。
かなりの呑んべぇさんだ。
右奥は普通にレストラン。テーブルが沢山あり、きっと昼頃になると賑やかになるんだと想う。
「中々いいところだなぁ」
ポロッと本音が口からこぼれた。
本当に、なんか温かい空間な気がする。
よく分かんないけど、どこか落ち着けるというか、なんと言うか。
「あ〜らっ、坊や分かってるじゃなぁ〜い」
気がつくと、俺の隣に俺よりふた周りくらい大きな男の人がいた。
「かわいい坊やねぇ。見ない顔だけど、新規の方かしら?」
「え、えぇ。……そ、そうです」
この人、見るからにオネエさんだ!
体格はガチガチのムキムキ。
めっちゃ鍛えてあるし。
ってか化粧濃すぎ!
俺化粧とかよく分かんないけど、目のところめっちゃ派手!
ダンディーな顎鬚とミスマッチすぎる。
あと唇!
厚すぎる唇に、真っ赤な口紅。
そして、極めつけはこの服装。
赤紫のタンクトップに、ライトブルーのショートパンツ。
センスは良いんだけど、筋肉でどっちもピチピチだし。
よく見るとムダ毛処理バッチリだ。
ツルッツルで、肌が光ってるし。
「坊や、どうかした?」
「え?あ、いや、何でもないです!」
「フフッ。緊張してるのね。……カワイイ子」
今背筋がゾワッとしたんだが。
ってかこの人何者?
オネエさんは、こっちよ、着いてらっしゃい。
と言いながら、俺を受付に誘導してくれた。
「ローラちゃん。この子冒険者になりたいんですって」
「あ、ギルドマスター。おはようございます」
そう言うと、ローラさんはぺこりとお辞儀した。
さっきの好みの女の子だ。
いや、ちょっと待て。……え、この人がギルドマスター!!??
ただのオカマじゃないの??
あ、言っちゃった。
正面、驚きが隠せない俺。
そんな俺に気づいたのか、ローラさんも何とも言えない表情をしていた。
「ちょっとローラちゃん?お仕事お仕事!」
「あ、あぁすみません。冒険者の新規御登録ですね。それでしたらこちらの書類にサインをお願いします」
俺は出された書類に目を通した。
今更だが、俺はカグヤのお陰でこの世界の文字の読み書きが出来る。
本当に今更だけど。
「えぇ〜っと、なになに……?」
本契約による命の保証は、こちら側は一切致しません。
自己責任でお願いします。
尚、ギルドマスターはマダムとお呼びください……。
って、最後のいる?
まぁ、いっか。見るからに呼んで欲しそうだし。
目をキラキラさせて俺見てるよマダムさん。
「え、えと……。宜しく…お願いします。……マダム」
「あぁ〜ん。その恥じらいながら呼ばれるのアタシ結構好きよぉ。アタシあなたの事好きになっちゃいそぉだわぁ〜」
「……アハハ」
別に恥じらってた訳じゃないんだけどなぁ。
俺は、流しながら書類にサインしようとした。
その時、酒場から怒鳴り声が聞こえた。
そちらの方に目をやると、男達が喧嘩をしていた。
よく見ると、知っている顔が……2つ。
エレンとランディ。
あいつら、冒険者だったのか。
まぁ、魔法使ってたし当然と言っちゃあ当然か。
なんて呑気なこと言っていられない。
今にもバトルが始まりそうな雰囲気だ。
「あの子達、一体どうしたのかしら。止めに入らないと」
そう言いながらマダムさんは喧嘩の仲裁に行った。
俺も何気なく着いていってみた。
マダムさんが止めに入る頃には、既に両者とも臨戦態勢。
今にも魔法が飛び交いそうだった。
「あなた達、いい加減にしなさい!他の人に迷惑でしょう!」
一体何があったのよ。
と、マダムが聞いた。
すると、知らない方の男2人が、
「あ、マダム。聞いてくださいよ。俺らはただ、こいつらが珍しく顔に傷つけてたんで、『ケンカにでも負けたのか?』って言っただけなんすよ。そしたらキレて襲いかかってきやがって……」
「手ぇ出したの向こうだけっすよ?俺らは手なんか出してないっすから」
と言った。
んー、どうやら俺がエレンとランディ倒したのがまずかったのか。
しかもフルボッコだからなぁ。
あの男達の話聞く限り、きっと負けた事あんまないんじゃないか?
プライドも多分高いだろうし。
そのプライド、ズタズタにされてその直後に、
『負けたのか?』だろ?
まぁ、キレるよね。
でもあいつらが悪いよ、女の子泣かしたんだもん。
「エレン、ランディ。喧嘩に負けたぐらいで騒がないでちょうだい!」
「うるせぇ!俺っち達は負けてねぇ……」
うわぁー、落ち込んでる。
やり過ぎたかな。
ちょっと反省。
「それによ、てめぇらは前から気に入らなかったんだよ。俺っち達の事、悪く言ってるよな?」
「俺らが知らないとでも思ってたのかよぉ!」
めっちゃ煽ってるよ。
その挑発に向こうも乗っちゃったし。
やばい。
マダムさんの抑えが効いてない。
どうするかぁ。
元はと言えば、この原因を作ったの俺だし。
仕方ない。止めに入ろう。
さっきの一件で自信ついたし、何より俺が解決するのが筋ってもんだろ。
「あの、マダムさん。俺が止めます」
「え、だめよ坊や!あなたじゃ無理よ!」
俺はマダムさんの制止を無視して、男達の間に入った。
「その位にしましょうよ」
「「「「あぁん?」」」」
いや、その反応今日2回目なんですけど。
男でサンドイッチされるのもね。
「お、お前は……!!」
あー、驚いてる驚いてる。
そうだよねぇ〜、自分を倒した奴が何故かここにいるんだもん。
そりゃビックリするよ。
さっきぶり!
会いたくはなかったよ!
「な、なんだ?お兄ちゃん、危ないから引っ込んでな!」
「巻き込まれると、痛いじゃのすまねぇぜ?」
「そうよ!坊やじゃ無理よ!早く戻って!」
うん、信用されてないね。
一部を除いては。
あの2人は俺の実力知ってるから、引いてくれると思う。
だけどこっちの2人は……、
「早くどけってお兄ちゃん!」
「お前も殴られてぇのか?」
無理そうっすね。
仕方ない、やるか。
「おい!そいつに手を出すな!」
「俺らみたいにやられるぞ!」
その言葉に、ギルド内が騒めく。
え、あの子がエレン達を?
うちのギルドでも、実力は上の方だぞ?
あの体格でランディを倒したのか。
みたいな声が飛び交っている。
正直、目立ち過ぎた。
なんか、恥ずかしいな。
でも、そのお陰でこっちの男達も大人しくなった。
戦わずに済んでよかったぁ。
喧嘩の仲裁、大成功です!
「さて、と。マダムさん、手続きまだ途中ですよね?今日中に何個かクエストやりたいんで、早く登録させて下さい」
「エレン達があんなに怯えるなんて。……坊や、一体何者?」
「あぁ、俺っすか?俺は……」
冒頭でやれなかったんで、今やるとしますか。
俺、ユウスケっす。
異世界でパパになりました。
そんで今日から、冒険者っす!!!