女性を助けました
どうもユウスケっす。
異世界でパパになりました。
冒険者になるため王都に来たまではよかったんすけど……。
チンピラ共に絡まれてる女性がいまして。
まぁ、結果から言えば、
当然の如く勝利しました!
俺は、逃げ出した男達の後ろ姿を漠然と見ていた。
さっきの怒りの爆発で、どこか気が抜けてしまった。
それでも見とかなきゃ。
もしかしたら、まだ何か仕掛けてくるかもしれないし。
まぁ、ないだろうけど。
あぁでも、顔とか覚えて置いた方がいいよなぁ……。
「あ、あの……」
「はひゃっ。……な、何でしょう?」
やべぇ、男達に集中し過ぎた。
後ろに人いるのすっかり忘れてた。
いきなり声掛けられて、思わず変な声でちゃったよ。
この女性も笑ってるし。
あぁ、恥ずかしいぃぃ。。。。
「あ、ごめんなさい。笑うつもりは……」
「いえ、いいんです。むしろ笑ってください」
ふふっ。と思わず吹き出してるこの女性。
さっきまで遠目だったし顔ちゃんと見てなかったから、結構大人っぽく見えたんだけど。
よく見たら、俺と変わらないくらいの歳か?
「助けて頂いてありがとうございます。この御恩は決して忘れません」
「い、いえそんな!大した事じゃないですから。それより、大通りまで送ります。1人じゃ心細いでしょうから」
うん。我ながら紳士の対応。
これが本物の男というものだろう。
「フフッ。それではお願いしますね」
彼女は朗らかに笑い、綺麗なお辞儀をした。
それは見とれる程に。
少しテンパった俺は、それじゃあ行きましょうか。
なんて言いながら、つい彼女の手を取り、歩き始めてしまった。
…………。
しまったぁぁぁあっ!!!
最後の最後でしくじったぁぁあ!
やっちまったよ。
いつもミーアと手繋いでるからその癖で……。
初対面の男に手を繋がれるとか。
気持ち悪い以外の何物でもないだろ……。
彼女を見ると、顔を俯けて下を向いている。
あぁーこれで確定だ。
絶対嫌がってる。だけど助けてもらった手前断れない。
そんな感じだろう。
手を離すタイミングも失ったぁ〜。
あぁぁあ、俺としたことが……。
俺がそんな妄想をしている時、
彼女が嫌悪感からではなく、恥ずかしさからの赤面を隠すために俯いていた事実を、俺は知らない。
少しして、俺は被害妄想から帰ってきた。
そして、冷静に彼女のことを考えてみた。
にしても、なんであんな路地裏にいたんだ?
なにか理由でもあったのかなぁ。
聞きたいが、女性のプライベートを聞くわけにもいかないし。
ましてや初対面だし。
まぁ、初対面なのに手を繋いじゃいましたが……。
彼女に断りも入れずに。
多分、嫌がられてるだろうなぁー。
やばい、なんか涙が……。
そんなことより、さっきは必死で気づかなかったけど、
めっちゃこの子可愛い!
整った顔立ちからサラサラの髪の毛。
綺麗な服に包まれ、例えるなら一輪の花…ってこれはベタか。
でもそれくらい可愛いな。
それに加えて丁寧な言葉遣い。
そして、あの綺麗なお辞儀。
もしかして、いいとこのお嬢様。みたいな?
そしたら余計に、何であの場所にいたのか気になる。
んー、考えてもさっぱり分からん。
分からんけど……。
やっぱめっちゃ可愛い!!
今そんな子と手を繋いでんだよなぁ。
あぁ、女の子の手ってこんなに柔らかいんだ。
ミーアの手とはやっぱり違うなぁ〜。
ずっとこのまま手を…………。
なんて、もう逆に開き直って今の時間をエンジョイしていた俺だったが、
「……すみません。あの、もう大通り…です」
「え?あ、本当だ」
気がつくと、いつの間にか大通りに着いていた。
そして俺は、着いたにもかかわらず手を離していなかった。
「あぁ!すみません。いきなり手を繋いじゃって……。それに、いつまでも掴んだままで」
「い、いえ!いいんです。私は平気ですから」
気を遣われる始末。
ちくしょう、俺のバカヤロー!!!!
「……それに、嫌ではなかったですし」
「え?今なんて?」
小さ過ぎて聞こえなかった。
マジでなんて言ったんだ?
俺への罵倒だろうか。
多分そうだろう。
予想通りなら、俺の心は砕け散る確定だ。
「いえ、何でもありません。それより、再度お礼を言わせてください。先程は助けて頂き本当にありがとうございました。お礼はいつか必ず……」
「いやいや、本当に大丈夫ですから。当然のことですし」
「それでは私の気が収まりません!何かお礼を!」
そんな事言われてもなぁ。
現時点で困っていることなんて、何も…………。
あぁっ!!
ギルドの場所!!!
「あの、でしたらギルドの場所教えてもらえませんか?この後登録に行く予定なので」
「冒険者になられるのですか?」
えぇ、まぁ。と言いながら、ちょっと恥ずかしい俺。
この世界では当たり前なんだろうけど。
こう、面と向かって言われるとなんかむず痒くて。
「そうですか、それでしたら……」
と、事細かにギルドまでの道を教えてくてた。
熱心にそれでいて丁寧に教えてくれたため、直ぐにギルドまでの道を覚えられた。
大通りの時計を見ると、時刻は朝6時ちょっと過ぎ。
時間もそんなに経っていないし。
この分なら、走れば昼までに2つか3つクエストをこなせそうだ。
よし、待ってろよミーア!
美味しいご飯お腹いっぱい食べさせてやるからな!
「それじゃあ俺はこれで。道教えてくれてありがとうございました」
俺はお礼を言い、その場を去ろうとした。
すると、彼女が服の袖口を掴み俺を引き止めた。
「……あの、宜しければ、お名前を教えていただけますか?」
「いいですよ。俺の名前はユウスケって言います」
「……ユウスケ様。わかりました、ありがとうございます!私の名前はアイリスです」
以後お見知りおきを。と、彼女はまたあの綺麗なお辞儀をした。
それはもう、見とれちゃいました。
さようならを交わし、俺はギルドへと走っていった。
その後ろで、騎士団がアイリスを迎えに来ていたのを、俺は後々になって知ることになる。
いそげぇぇえ!
早く、早くギルドに登録するんだぁぁあ!!
朝っぱらから波乱の出来事があったけど、それも無事解決。
後はギルドに登録し、ギルドカードを貰う。
そして生活費を稼ぐ!
今日のノルマはちょっと大変だけど、ミーアの笑顔を見るためだ。
パパ、頑張っちゃいます!!!
こうして、俺の異世界稼業が始まります。