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親の想いを知りました

あ、どうも。

ご無沙汰してます、ユウスケっす。

今、異世界で生活してます。

1人でじゃないですよ?

既に家族がいます。



まぁ、家族と言っても、

嫁ではなく『娘』…なんですが……。



つまり、俺、異世界でパパになりました。

現在子育ての真っ最中!!!



……なんですが。




「俺、もう無理かもしれない……」




既に心が折れそうです……。






カグヤと話が終わった後、ミーアが腹が減ったと泣いていたので朝食にすることになった。



俺の家は父子家庭で、母は俺が幼くして男と夜逃げ。

それから親父は男手ひとつで俺を育ててくれた。



親父は、仕事は出来るのに家事に関してはからっきし。

それに加え、朝から晩までの仕事。

当然家にいる時間も少なくなるわけで。

俺が家事をするようになるまで、そう時間はかからなかった。



でも2年前、親父は過労で倒れた。

そしてそのまま俺を残して逝っちまった。

そこから俺は親戚の人から仕送りを貰い、一人暮らしをしていた。



だから、まぁ、家事には自信があった。

特に料理には!!

意外と味にうるさかった親父も、結構上手いと褒めてくれたし。

自分でも中々上手いと自画自賛したり…。



……それなのに。



「おいしくなぁ〜い」



「……」



自信あったのに。

そんな事言われたら、心折れますよ。



料理『ペッ』ってしないで…。

ガラスのハートだよ?

脆いよ?直ぐ壊れちゃうよ?

取り扱い注意なんだよ!?

ダンテさん達よく子育て出来たな。

すみませんダンテさん、俺には無理かもです……。



「……ユウスケ様」



「なんだよ。今俺めっちゃヘコんでるから。お前の毒舌受けきれる自信ないよ。まぁ、料理の自信はたった今無くなっちまったがな…」



「いえいえ、お料理自体は美味しいですよ?ただ……」



「ただ、なんだよ」



俺は若干カグヤに八つ当たりしながら聞いた。

するとカグヤはもう1度料理を食べ、

献立の問題ですよ。と言った。



献立?

つまりは、味じゃなく作ったものがダメだったって事か?



「そうです!その通りです!」



こいつ、また勝手に心読みやがって。

まぁ、今に始まった事じゃ無いし。いっか。



「それで、この献立の何がいけないってのさ」



つまみ食いが止まらない女神に聞いた。

お前、さっき自分で要らないって言ったくせに。

お前が食ってるの俺の分なんだけど。



まぁ、それは置いといて。




俺が作った品は家にあったもので作った。

見たことも無いキノコや野菜や魚があったけど、

どうやら調味料は元の世界と同じっぽい。

それを考慮して作った品は、



葉っぱ系野菜のおひたし。

魚のアラからとった出汁でお吸い物、具はキノコを採用。

魚の身は塩焼きに。

後、それっぽいもので筑前煮を作った。



これの何処がダメなんだ?

至ってまずい箇所なんかないだろ?

むしろいい所しかない。

健康的で、the日本の朝食。って感じだろ?



「本当に何が悪いんだ?」



「……わからないですか?」



分かりません。と、はっきりと言った。



「いや、重大な欠点ありますよね?」



重大な欠点?

そんなのどこにも……

まさかっ!!!!



「気づきましたか」



「おひたしに欠かせない鰹節を入れなかったからか?」



カグヤってば、ズコーッて音立ててコケてる。

リアルでもそんな事する人いるんだ。

あからさま過ぎてちょっと引くわ……。



「違います!ちゃんと考えてください!」



怒られちゃったよ。

ミーアはなんか不思議そうな目で見てるし。

えぇー?何が悪いの?



「お吸い物の出汁妥協したこと?もしくは筑前煮にコンニャク入れなかったとか…。いやでも、コンニャク無いしなぁ。それとも魚の焼き加減が?いや、それは無いな。だったら…まさか、白飯の代わりに麦飯にした事か!」




「違いますって。料理が渋すぎるんです!!!!」



そうやって大きい声出してテーブルをバンッて叩くなよ。

ミーア、驚いて泣きそうだぞ…って、あ〜あ、泣いちゃったよ。

お前もそんな顔すんならやるなよなぁ。



俺は椅子に座ってたミーアを抱っこし、あやした。

ミーアは俺の肩で泣いている。

結構怖かったみたいで、中々落ち着かない。



「何やってんだよアホ女神。いや、バカグヤか?」



「ブチノメシマスヨ、ユウスケサマ」



怒りで言葉がカタコトになってる。

まさかバカグヤって地雷?

ま、まぁ、とりあえず落ち着かせなければ。

えぇーと、話を…話を変えて……。


「そうだった。それで、俺の献立が渋いってどゆこと?」



「え?あ、あぁ、それはですね…」



話を変える作戦が成功して、落ち着いてくれた。

まぁ、からかった俺が悪いんだけどね。



「ユウスケ様?聞いていますか?」



「あ、あぁ。ごめんごめん。それで、なんだっけ?」



「ちゃんと聞いてくださいよ。いいですか?ミーアちゃんはまだ6歳なんですよ?子供の舌というのは苦味に敏感です。なので、おひたしはあまり好まれません。そしてお吸い物。出汁は良かったのですが、具として使っているこのキノコ。これも苦味が若干強いです。」



「へぇー」



そうだったのか。

子供って苦味に敏感なんだなぁ。

確かにピーマンとか苦手な子多いしね。

魚の肝とか。あれも苦いよねぇ〜。

俺もちょっと苦手。

まぁ、何はともあれこれで1つ勉強になりました!



「それで?魚の塩焼きは?」



「あれは、ただ単純に塩振りが甘いです。はっきり言って下手くそです」



最後の最後で心をえぐりにくる女神。

毒舌で〆ないと気が済まないのか!

俺のハートいくつあっても足りないわ!






はぁー、全滅かぁ。

ミーアも喜んでくれると思ったのに。

ダメだったかぁ……。

ん?全滅?

何か一つ忘れてるような?

あ、そうだ!



「筑前煮は?」



「あぁ、筑前煮ですか。それなら……」



カグヤはテーブルの方に目を向け微笑んでいる。

俺もカグヤの後に続いて見てみた。

するとそこには、



「あっ。」



おひたしとか魚とか、ちょっとつついて放ったらかしになっていた。

テーブルには残された料理がずらりと並べられている。

本当に美味しくなかったんだと思う。



だけど、



筑前煮の器だけがカラになっていた。





「パパ」



いつの間にか泣きなんで俺の顔を見ているミーア。

少しの沈黙の後、

ミーアはニカッと笑って。



「ちくぞんに?すっごく、おいしかったよ!」



そう、俺に言った。







あぁ、これか。

これなんだな。

ダンテさん、あなたの気持ち今ならわかります。



子育てって大変だけど、この一瞬、たった少しの事で、辛かった事全部忘れちゃいますね。

俺、まだ子育て始めたばっかだけど、既にこの娘に心をもっていかれちゃいました。



やばいなぁ。

なんか、泣きそうだわ。



俺は泣くのを必死に堪えてこう言うのが精一杯だった。




「『ちくぞんに』じゃなくて『筑前煮』、な?」






ダンテさん、奥さん。

子育て、俺に任せてください。

絶対にこの娘を育てきりますから!




それに、

どうやら俺、子育てに夢中になったみたいっす!




親の想いを知り、改めて子育ての決心をした俺でした。


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