理由を聞きました
あ、どうもっす。
俺、井上ユウスケっす。
いろいろあって異世界に転生しました。
そしたら、
「パパ〜?ねぇパパったらぁ〜」
子供、出来てました。。。
何で子供がいるんだ。
えぇー、訳わかんねぇーよ。
あの女神、いいものって幼女??
俺をロリコンと勘違いしてるのか。
俺は今の現状が理解出来ず頭が痛くなった。
「パパあたまいたいの?」
俺が調子が悪くて変だと思ったようだ。
頭を抱え座り込んでいる俺を見たら、無理もないか。
ミーアは優しく俺の頭を撫でてくれた。
なんて優しい子なんだ。
何故俺がパパと呼ばれているかについては、今は考えないことにしよう。
「いたいのいたいの、とんでけ〜」
いきなりの事で俺も反応に困ってしまった。
これって、痛くなくなるおまじないだっけ?
「いたいの、なおらない?」
「お、おおぉ!いたいの飛んでったぞー」
俺を心配してやってくれたのか。
本当に優しい子なんだな。
それに比べて俺は、自分の事で手一杯。
この状況の確認はまた後で、だ。
それより、この子を不安にさせちゃいかんだろ。
今俺に出来ることは──。
全力でミーアのパパになること!!
俺を手厚く看病?してくれたミーアを悲しませるなどもってのほか。
受けた御恩はしっかり返すのが男ってもんだ。
だから、今はミーアのパパを演じる他ありはしない!
どういう訳か、今は俺がミーアのパパだからな。
子供の面倒を見るのは親の務め!
炊事、洗濯、掃除、何でも来やがれ!!
俺が決意を固めた時、俺の家に戸がノックされた。
「すみませーん。誰かいませんかぁ〜?」
あれ、この声聞き覚えが……。
誰だっけなぁ?
俺が記憶を辿っていると、ミーアは躊躇いなく戸の方に行き嬉しそうに戸を開いた。
「こら勝手に……」
「ひさしぶり!おねいちゃん」
お姉ちゃん?知り合いか?
俺は背の小さなミーアから、来客へと目線を移していった。
するとそこには、俺をこの世界に送ってきた張本人がいた。
黒いコートやフードは被っておらず、一般人が着そうな服を着ていた。
ここだけ見ると、本当に可愛いのだが。
「カグヤ、なんでお前が?」
「お久しぶりです。というか、2時間ぶりですね」
いやいやいや、答えになってねーよ。
それに何が、『ニコッ』だよ。
ちょっと可愛いじゃねーか。
「あのねあのね、ミーアね、パパのね、いたいのなくしたんだよ!」
「そうなの。ミーアちゃん偉いねぇ〜」
そう言いながらカグヤはミーアの頭を撫でている。
ミーアも嬉しそうな顔してるなぁ。
まるで姉妹みたいだ。
って感傷に浸っている場合じゃない。
何故俺がパパになってるのか問いたださなければ。
だけど、なんか、今めっちゃいい雰囲気なんだけど。
俺が入る隙なくね?
ちょっと厳しいってぇ〜。
いや、男ならいけ!
俺は首を横に振り、迷いを消しながらカグヤだけを引き連れ外に出た。
ミーアには、
「直ぐに戻るから、いい子で待ってなさい。」
と父親気取りで言ってみた。
自分でやっててあれだが、なんか体がムズムズする。
俺に手を引かれてるカグヤも、俯いてプルプルしてるし。
笑ってんだろ。絶対笑ってるよね?
「笑って…ブフォッ………無いですよ?」
最後に平然装っても無駄だろ。
だって途中で笑っちゃってんじゃん。
いいよ、もう。隠さないで笑えよ……。
こんな事で凹んでしまう俺だった。
そうだ、忘れてた。
俺って結構打たれ弱かったんだった。
「あそこにするか」
ヒビの入った俺のハートを癒していると、
あの家から300m位離れたところに森が見えた。
丁度いいからそこで話すことにした。
ここなら誰も来ないだろうし。
何より大声が出せる。
大声のせいでミーアを起こしてしまったからな。
他に害がないとも限らないし。
「大声は嫌いです。うるさいですもの」
「お前の意見は聞いとらん!ってかマジで心が読めるのな」
「はい。まぁ、読めないこともありますが」
へぇー。そんな時もあるのか。
もっと詳しく能力について……、
って、興味持ってる場合じゃない。
聞きたいことは色々あるぞ!
と、試しに心で言ってみた。
やべぇ、ふざけてしまっている。
「分かりました。それでは説明しますね」
「……マジで通じた。」
「あの、聞く気あります?」
ごめんなさいと謝罪し、
俺は話を聞くことにした。
「先ず知りたいであろう、ミーアちゃんの事についてから説明しますね」
「おう頼む。何が何だかさっぱりだからな。目が覚めたら隣に幼女がいて。焦ったのなんのって」
「それはどうでもいいですが」
どうでもいいって言っちゃったよ。
仮にもあんた女神だろ?
人にもっと親身になれよ!
「ウザいので無視しますね。ミーアちゃんですが、本当の両親を先日事故で亡くしました」
俺への罵倒と衝撃の真実のダブルパンチ。
俺にとっては前者の方が威力ましましだった。
が、無視出来ないのは後者の方だ。
「そして、悲しみからミーアちゃんは自らも命を絶とうとしました。」
「それってまさか……」
「はい。自殺未遂、というやつです」
マジかよ。
こっちの方が無視出来ないって。
さっきのミーアからは想像がつかない。
俺もちょっとだけしか話してないが、とても自殺するようには見えなかった。
まして、命を絶とうとした後の顔には尚更見えなかったが。
「その辺りの記憶は操作しました。両親が死んだ事も、自ら命を絶とうとした事も」
「記憶を操作って、そんな事していいのかよ?それに神々のルールは知らんが、女神がたった1人の子供にそこまでするのって本当はダメなんじゃないか?」
元いた世界でもそうだ。
俺の場合、国会のこととかよく分からん。
だから、例えを簡単、尚且つ身近にすると、
学校の先生が1人の生徒に対して必要以上に構う。
こんな事で昔、騒ぎになったのを覚えている。
つまり、上に立つ者が下の者。
しかもたった1人に対し、特別に働きかけてはいけない。
みたいな事だろう。
俺の考えはどうやら当たっていたみたいだ。
バツが悪そうにカグヤは俺から目線をそらした。
そして顔をうつむけると、悲しそうに話し始めた。
「彼女は…特別なんです。彼女の父親はユウスケ様と同じ、別世界からの転生者でした」
俺以外にもいたのか。
まぁ、考えられない事ではないか。
しかし、
「だけど、その事が理由って訳でもないだろ?」
「はい。ユウスケ様にはお話する義務があります。ので、なるべく簡潔にお話しますね」
そう言ってカグヤは顔を上げると、キョロキョロしだした。
するとお目当てのものが見つかったようで、目線の先へ走っていった。
そこには人が2人座れるような岩があった。
どうやら座って話をするつもりらしい。
さっきはそのための岩を探してたのか。
「ミーアちゃんを待たせてるので、簡潔に話すつもりですが。それでも少々長くなってしまいます。よろしいですか?」
「あぁ、構わないよ」
そうだった。ミーア待たせてるんだっけ?
すっかり忘れてたぁ。
「……最低ですね」
「なっ……」
「それではお話しますね」
まるで何事も無かったかのように話し始めた。
さっきも言ったが、ガラスのハートってこと忘れるなよ。
今の、結構キタわぁー……。
俺にかまう素振りを微塵も見せず、カグヤは話した。
ミーアのお父さんはダンテというらしい。
前世では、暴行、窃盗、恐喝。
悪事なら殺人以外全てやり尽くしたような男だったという。
自分の罪を顧みずに悪事を働いていた彼だが、ついに天罰が下った。
交通事故で死んだ。即死だという。
当然の如く、天界に送られ審議にかけられると判定は地獄札だった。
最初本人もあーだこーだ言っていたらしい。
地獄札は転生までかなり長い時間を要する。
毎日早く転生させろと喚いていたそうだ。
だか、いつからか騒がなくなったそうだ。
不思議に思った神々は彼を観察したらしい。
すると、どうやら彼は同じ地獄札を付けていた女性に恋をしていたらしい。
そこから彼は変わった。
乱暴な言葉遣いをやめ、素行もとても良くなった。
自分の転生を待つ間、神々の仕事を手伝うとまで言い出したらしい。
何故そんなに変わったのかと誰かが尋ねたそうだ。
すると彼は、
「彼女は、俺と違って元からの悪だった訳では無い。話してて気がついたんだ。そんな彼女を好きになったんだ。だったら、元から悪の俺でも、彼女の隣に相応しい男になりたい。そう思って変わろうとしてるんだ」
そんなイケメンな事を言ったらしい。
いや、あんたも素はめっさイケメンですやん。
ツッコミたい欲望を抑え、続きを聞いた。
長くなったので次回に続きます