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神化論 after  作者: ユズリ
再生する意味
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再生する意味 6

 



 ユエに促されてローズたちが案内されたのは、施設内で皆が食事などをするのに使う広間だった。

 

「かわいい、この子ー。ぷるぷるしてるー、冷たいー」

 

「きゅいぃ~」

 

「なんか旨そうだよなー」

 

「きゅいぃ?!」

 

「食べちゃ可哀想だよ、怖がって震えてるよ」

 

「きゅいぃ~、きゅいぃ~」

 

 ギースやフォルト、フィーナといった幼い子どもたちは可愛い魔物のうさこに夢中になり、うさこはあっという間に彼らに取り囲まれてローズたちから引き離される。

 そうして子どもたちは部屋の隅でうさこと遊び始め、その間にジュラードたちは席についてユエに事情を語る事となった。

 

 

「飲み物どうぞ」

 

「あ、ありがとう」


 エリがローズたちにお茶を用意する。ローズは礼を告げて温かく湯気の立つお茶を受け取り、エリは彼女と共にいるマヤをじっと見つめて何か悩む様子を見せた。マヤはエリが悩んでいる意味を察してか、「大丈夫、アタシはお茶いらないよ」と彼女に告げる。エリはそれを聞き、納得した様子で頷いた。

 そのままエリはマヤ以外にお茶を配り、ユエはそんな彼女に「イリスは?」と聞く。こういうことをするのは大体彼の役割だから、ユエは気になったのだろう。するとエリは「わからない」と困った様子で首を横に振った。

 

「多分部屋にいると思うけど……」

 

「そうか……」

 

 先ほどローズたちと顔を合わせた時のイリスの様子が尋常ではない怯えを孕んでいたのでユエは気になったが、しかし今は彼を良く知っているらしいラプラもいるし、とりあえず彼の事はラプラに任せて自分はジュラードたちの話を聞くことにしようと考える。

 

「それで、えっと……あぁ、まずは自己紹介をした方がいいね。あたしはユエ・メイリーン、この孤児院の院長をやってる」

 

 ユエがそう自己紹介をすると、ローズも「ローズ・ネリネです」と軽く頭を下げながら自分の名を告げる。するとうさこと遊んでいた子どもたちから、「お姉ちゃん、聖女様みたいだね」と言う声が上がった。

 

「ホントだー。あのぶっ壊れた像の人に似てるな」

 

「そっちの髪しばったお姉ちゃんも似てるね。双子?」

 

 ”ぶっ壊れた像”とは、この前の異形の襲来で壊れた礼拝堂に元々あった聖女像のことだろう。子どもたちがローズやアーリィを見て興味深げにそう話し始めると、ユエは彼らに「お前たちはむこうで遊んでな」と言った。

 

「大事なお話するからね。邪魔しちゃいけないよ」

 

「はーい!」

 

「きゅいぃ~」

 

 ユエが声をかけると、子どもたちは素直に返事をして、うさこと共に部屋を出て行く。少し静かになった部屋で、ローズたちは改めて自己紹介を始めた。

 

「それで、こっちの彼女はマヤと言います。事情があってちょっと小さいんですが……」

 

 ローズがいつも通り自分の胸に居座るマヤを紹介すると、ユエは一瞬驚いたような顔をするも、「まぁ、あたしも普通よりでかいからね」と言って、何か納得した様子で笑う。

 

「あたしくらいでかい人間がいりゃあ、反対に小さい人間も世界にはいるだろうね」

 

「ははは……」


 色々受け入れる器のでかいユエに、ローズはどう反応したらいいのか困ったように笑う。しかしユエの反応は、根掘り葉掘り追求されるよりはよっぽど有難い反応ではあった。

 

「で、彼がユーリ。その隣がアーリィです。あとさっきの水色のぷるぷるした可愛いのはうさこです」

 

 うさこの紹介はいらないんじゃ……と、思わずマヤは思ったが、とりあえずローズは全員を紹介する。ユエは改めてローズたちの顔を見渡し、その後ジュラードに視線を移した。

 

「それでジュラード、この人たちは医者なのかい? リリンのあの病を治す為に来てくれたって言っていたけども」

 

「それは……」


 ユエが聞くと、ジュラードは一瞬説明に迷うように視線をさ迷わせる。彼は結局ローズに助けを求める視線を向け、ローズはジュラードの代わりに口を開いた。

 

「すみません、私たちは医者では無いんです」

 

「医者じゃない……じゃあ一体どうやってリリンの病気を治すつもりだい?」

 

 訝しげな様子のユエに、ローズはまずは「いえ、確実に治せるというわけでもないんです」と前置きをしてから、こう説明を続ける。

 

「ただ私たちは”禍憑き”という病を始めとしたここ最近の世界各地の様々な異変について興味があり、推測される原因からもしかしたら”禍憑き”がどういう理由からの病気なのか探れるんじゃないかと考えています。あるいは私たちの持つある力が、”禍憑き”の治療に役立つかもしれない。だから私たちはジュラードと共にここに来ました」

 

 ローズの言葉に、ユエは半信半疑な顔で「どういうことだ?」と問う。

 いきなり説明をして信じてもらえる話では無いとはローズも理解していたが、しかしそれでも説明をしなくては何も始まらない。ローズは「長い話になるのですが……」と、自分たちがジュラードと会いここまで来た理由をユエに語り始めた。




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