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神化論 after  作者: ユズリ
再生する意味
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再生する意味 4

 男はそう言うと過去を懐かしむような眼差しで笑い、「マダラは元気か」とアゲハに聞く。アゲハはますます目を丸くして、こう叫んだ。

 

「お、お父さん! あなたを助けたのってお父さんですか?!」

 

 男の口から飛び出した父の名にアゲハは驚き、男はおかしそうに小さく笑う。そして彼はアゲハに言った。

 

「やはりあいつの娘か……無鉄砲そうなところがよく似ているな」

 

「あはは……おじいちゃんにそれよく言われて注意されます……あ、お父さんは元気ですよ!」

 

 苦笑しながらアゲハは答え、そしてかつて父も自分と同じように勝手に家からこの刀を拝借して、世界に飛び出して行ったのだろうかと考えた。

 

「で、でも驚きました。まさかお父さんと知り合いの人だったなんて……」

 

「そうだな……俺も驚いた」

 

 アゲハはもう一度男に「名前、やっぱり聞いちゃダメですか?」と聞く。男は今度は「ジュウベェだ」と自分の名をアゲハに告げた。

 

「ジュウベェさんですか……あ、私はアゲハです! アゲハ・ユズキ! あの、ジュウベェさんって何か困ってる事ありませんか?! 私に出来ることならなんでもお手伝いしますよ!」

 

 アゲハは再びお礼を迫り、ジュウベェはそんな彼女に困った様子で苦笑を向ける。

 

「いや、俺は今は困ってなどいない」

 

「えぇ~、そんなぁ……」

 

 アゲハはがっくりと肩を落とし、そんな様子の彼女を見て、ジュウベェはこの彼女の反応に対してたった今困った様子で苦笑した。

 真面目人間のアゲハなので、助けられたらとにかくお礼しないと気がすまないのだろう。それと彼女の個人的な感情として、渋く魅力的で剣の腕も立つ彼とこのまま別れるのは何か惜しい気もしたのだ。

 するとジュウベェは気を落とすアゲハに、こんな言葉を向ける。

 

「しかし先ほども注意したが、この辺り一帯は今のような危険な怪物で溢れている。お前が何故こんなところをうろついているのかは知らんが、女子一人でこんな場所をうろつくのは危険極まりない。俺がお前が目的とする場所まで護衛してやるがどうだ?」

 

「え、えええぇ? そんな……いいんですか?」

 

 お礼をするどころか、ますますジュウベェの世話になりそうな展開に一瞬アゲハは恐縮するも、しかしもうしばらく彼とともにいられるかもしれないという事態は素直に彼女も嬉しい。

 

「知人の娘をほっとくわけにもいくまい。ここで会ったのも何かの縁だ。お前さえよければ、この森を抜けるまでくらいならばついてってやろう」

 

 そう言って男臭い笑みを向けるジュウベェに、アゲハは胸が高鳴るのを自覚しながら「は、はい」と頷いていた。

 

「その、ジュウベェさんがそう仰ってくださるなら……父の話とかついでに聞きたいですし!」

 

「そうか……ならば行こう、アゲハ。俺もマダラが今どうしているのか興味がある。よければ話を聞かせてくれ」

 

 ジュウベェのその言葉に、アゲハは使命感を持ったような気合の入った眼差しで「はい!」と頷く。


「もう何だって聞いてください! 何でも話しますよ、私!」

 

「はは……それは嬉しいが、しかし忍びの者がそんなことで大丈夫なのか?」

 

「あ、シノビ的にはお喋りだとまずいんですけど……でも……えーっと……」

 

 困った様子で悩むアゲハを見て、ジュウベェは彼女の姿にまた友人の面影を見つけて微笑んだ。

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

「ハァ……ハァ……ハァ……」

 

「……また今日も熱が高いな……」

 

 目を閉じながら苦しそうに呼吸を繰り返すリリンを見ながら、ユエは苦い顔でそう呟く。彼女の傍にはウネが立ち、病に苦しむリリンを前に心配そうな表情をしていた。

 

「彼女は病気なの?」

 

 ウネが問うと、ユエは「あぁ、そうさ」と答える。

 

「一体どんな病を……?」

 

 続いたウネの疑問に、ユエは小さく溜息を吐いてこう答える。

 

「発病するのはごく稀な病だけども、治療法の無い厄介な病気さ……今のところ”禍憑き”と呼ばれて人々には恐れられている」

 

「禍憑き……」

 

 ウネの興味をもったふうの呟きに、ユエはこう続ける。

 

「真綿で首を絞めていくように、じわりじわりと命を削り奪っていく最悪の病気だよ……長く苦しめた挙句に行き着く先は死……死なせたくなんて無いのに、でもあたしらには今出来る事は苦しみを和らげる努力しかないんだ」

 

「……恐ろしい病ね」

 

 そう言うしかなくて、ウネはユエにそう告げた。

 ユエはリリンの額に冷やしたタオルを乗せながら、ウネに語りかける。

 

「あんたらは異世界から来たんだろう? 何かこの病について知ってることとか無いかねぇ」

 

「……いえ、私にはわからない。ごめんなさい」

 

 ウネが申し訳無さそうにそう正直な返事を返した時、二人のいるリリンの部屋にフィーナがやって来た。

 

「せんせぇ、お兄ちゃんが帰ってきたの!」

 

 フィーナは部屋に入ってくるなり、少し興奮した様子でそうユエに言う。ここまで走ってきたようで、少し息も切れている。

 ユエが顔をあげて「お兄ちゃん?」と聞くと、幼い少女は首を縦に振った。

 

「それって……」

 

 ユエが聞き返すと、フィーナはこう彼女に返事をする。

 

「お兄ちゃん! ジュラードお兄ちゃん!」

 

「えぇ!?」

 

 フィーナの言葉に、ユエはひどく驚いた様子で驚愕の声をあげた。




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