希望と代償 19
「へぇ、あんたたちはマナの測量調査してるのね」
「うん、そうなんだー」
ユーリは服を着たアーリィと共にエルミラとフェリードをジュラードたちの元に連れていき、エルミラはパンツを返却してから彼らに自分たちの事情を説明した。
元々ローズたちとエルミラは知り合いなので、パンツの件も誤解はされずに解決し、エルミラとフェリードは一安心しながら自分たちが今ここにいる理由を語る。
「フェリードの調査でここら辺はフラとリノクのマナの値が異様に高いってわかったから、ちょっとここら辺を今重点的に調べていたんだよ」
「ふ~ん……なるほどね。そう言われれば、ここら辺で感じたマナの違和感の答えはそれなのかもしれないわね」
エルミラの話をマヤは興味深そうに聞き、ローズはパンツが無事手元に戻ってきた事に安堵した様子を見せる。
「いや、それにしても下着が戻ってきて安心したよ。……妙に高かったし、これ」
「つかローズ、お前紐パンツって……じゃあ普段から服のスリットから見えてたあの黒い紐ってパンツの紐だったんだな」
「うううるさい! だってマヤが……っ! マヤが『これ以外認めない、嫌なら穿くな』って無茶を……っ!」
「へー、なるほどねー。服のデザインから実はパンツ穿いてないんじゃないかと疑ってたけど、ちゃんと紐のパンツを穿いてたわけねー」
「み、見るな!」
「いや、今更そんなこと言われても……あんだけ普段から見せといてねぇ」
「ユーリは紐のパンツが好きなの? じゃあユーリの下着は全部荒縄にしようか? ぎゅうぎゅうに縛ってあげるよ、私が」
「ちょ、アーリィ、どうしてそういう結論になるの?!」
「やってしまえアーリィ。ユーリは紐じゃなきゃ寝れないほど紐のパンツが大好きだって以前言ってたような気がするんだ」
「おいローズ、お前余計なこと言うな馬鹿! 言ってねぇだろそんなこと一言も!」
「いっそ動けないように縛ってしまおうかな……私のとこ以外には行かないように」
「だから止めてってばー!」
夜でもハイテンションにうるさい外野は無視して、マヤはエルミラたちと話を続ける。
「それで、やっぱりあんたたちも変な魔物に遭遇したのね」
「えぇ、遭遇したって言うか遭遇しにいったって言うか……とにかくエルミラさんのせいで死ぬかと思いましたよ!」
「はははー、まぁ死んでないからいいじゃない」
マヤたちの会話を聞き、ジュラードは何か気づいたような表情で口を挟む。
「お前たちが調べているというマナの異変とその変な魔物……何か関係があるのだろうか?」
ジュラードのその言葉に、エルミラは「オレもそれが気になったから調べてんの」と答えた。
「でも絶対関係あると思うんだよねー。新しい魔物が出るようになったり新種の植物が生まれたりした場所と、マナの量が異常に増えた場所って大体同じだし。それに時期も……マナの異変後に魔物が生まれているみたいなんだ」
「そうね……何かしら関係がありそうね」
呟きながら、マヤはマナの異変について思う事を考える。それは二度目の”審判の日”、再び世界にマナが満ちるきっかけとなったあの日のことだ。
ウルズのマナとして世界に宿ったウィッチの力で、この世界には再びマナが生成されて満たされ始めているはず。だがエルミラの話から考えるに、世界の異変はその日以降に起きている。
あの二度目の”審判の日”から、世界は希望へと進むはずだった。少なくともマヤはそれを望み、ウィッチと共に還る覚悟をしたのだ。だが実際は希望と共に、今のような異変が同時進行で起きている。
「……一体どういうことなのかしら」
呟くマヤの姿を、ジュラードは心配そうな眼差しで見つめた。
【 希望と代償・了】




