再会 14
「うん! 本当にそういう理由!」
「そうか……だったらお前は別に俺に敬語を使わなくてもいいんじゃないか? 同い年なんだし……」
「え? あ、そうだね……」
ジュラードに言われ、レイチェルは「じゃあ名前もジュラードって呼ばせてもらうね」と言う。ジュラードはほんの少しだけ口元を緩め、「あぁ」と頷いた。
レイチェルが自分と同じゲシュだからだろうか。仲良くなりたいと、そう思った自分がいた。
大人や、身内以外は同世代にもあまり心を開けなかった自分だけど、いつの間にか自分は自ら、無意識に彼と仲良くなりたいと思うようになっていた。そして今少し互いの遠慮が無くなったことで、嬉しいと感じる自分がいたことにジュラードは驚く。
自分はローズたちと出会ってから確実に変わっていると、ジュラードはそれをまた自覚して無意識に頬を緩めた。
ローズとマヤがまだ脱衣所で揉めている間に、先に浴場に来たアーリィとミレイとうさこ。
彼女らはいくつも種類のある大小様々な風呂を前にして、圧倒され悩んでいた。
「おねえちゃんたいへん、おふろがいっぱいあるよ……」
「うん……どれに入るべきなんだろうね……」
「きゅいいぃ~……」
沢山風呂があるので、アーリィとミレイはどれに入ったらいいのかわからない様子だった。そしてうさこはむわっとした蒸気の熱にちょっと苦しくなってきたらしく、床にへばりついて動かなくなる。そんなうさこの様子に気づいたミレイが、「うさこ、どうしたの?」とうさこに声をかけた。
「きゅいぃ、きゅいぃぃぃ……」
「むー……おねえちゃん、うさこなんかくるしそう……うさこ、あついのにがてなのかな?」
冷えてないと固形を維持できないうさこは、風呂屋がどんな場所かを理解せずここまで来てしまったらしい。アーリィもうさこの様子を心配し、「大丈夫?」と声をかけた。
「そういえばゼラチンうさぎって熱いのダメなんだってマヤが言ってた。ここ、熱いお湯ばっかりだからうさこには良くないのかな……」
「そうなのか……」
ミレイは微妙に柔らかくなったうさこを抱き上げ、「おまえはさっきのとこでまってなさい」と言う。しかし一人ぼっちにされたくないのか、うさこは悲しそうに鳴いて首を横に振った。
「きゅいいぃ~……」
「うさこ、わがままいっちゃだめなんだよ。このばしょは、おまえにはよくないらしいんだから」
「きゅうぅ、きゅぅぅ!」
ミレイが諭すも、うさこは悲しそうな顔でミレイに引っ付く。困ったミレイは「おねえちゃん、うさこいうこときかない~」とアーリィに助けを求めた。
アーリィも困った様子で「どうしよう」と周囲を見渡す。するとアーリィの目に、『水風呂』と書かれた看板が映った。
「!? あれだ!」
「え、なにどうしたのおねえちゃん」
アーリィは不思議そうな顔をするミレイから、「ちょっと貸して」と言ってうさこを受け取る。そうして彼女は「これでどう?!」と言いながら、うさこを水風呂の中にぶち込んだ。
「おねえちゃん?!」
アーリィの突然の行動に驚くミレイだったが、水風呂に浮かんだうさこは「きゅいぃ~」と満足そうな様子で泳ぎ始める。お湯はアウトだが水なら大丈夫らしいうさこを見て、ミレイとアーリィは安心したように笑った。
「よかった、これでうさこも一緒にいられる」
「うん、よかった! さすがおねえちゃん!」
「きゅううぅい~!」
「ん? でもうさこ、ずっとここにいなきゃいけなくなるな……」
「きゅうぅ」
「ならおねえちゃん、このいれものにみずいれてうさこのおふろにしよう!」
ミレイがそう言って、近くにあった風呂桶を持ってくる。アーリィは「それがいいね」と、早速桶に水を入れてうさこをその中に移した。
「おお、いいかんじ」
「きゅうぅ、きゅいぃ!」
今度こそうさこの問題が解決し、アーリィとミレイはうさこと共に『よかった』と喜ぶ。するとやっとこの二人が、服を脱いで浴場にやって来た。
「っ……やっと風呂に入れる……」
何でかぐったりした様子のローズと、反対に生き生きした様子のマヤが浴場に入り、マヤはアーリィたちに「ごめん、お待たせ」と声をかけた。
「ローズといちゃつくのが楽しくて遅くなっちゃった!」
「ま、マヤ、おまえなぁ!」
マヤは一時的にとはいえ元の大きさに戻れた事でテンション上がっているようで、許された時間を全力で有効活用してローズに性的なことをしまくろうと企んでいるらしい。
「だってアタシ、ローズのこと大好きなんだもん」
「っ……!」
ローズは真正面(しかも裸)からマヤに愛を告げられ、完璧に彼女の恐ろしい罠にはまる。赤面したローズに、マヤは愛らしい微笑みを悪魔の笑顔に変えてこう続けた。
「だから今日は大好きなローズに好きって気持ちいっぱい伝える為に、たっくさんあなたを喘がせてよがらせて気持ちよくしてあ・げ・る」
「マヤ、ここ公共の場だからそういうのはちょっと……」
わりと貴重なアーリィのツッコミも無視して、マヤは心底楽しそうに微笑む。その邪悪な笑顔に、ローズの顔色はまた血の気を失って白くなった。
「アーリィ頼む、助けてくれ!」
「無理」
「そんなっ!」
即答でアーリィに見捨てられたローズに、今一番ノリにノッてるマヤが背後から抱きついて囁く。
「さぁて、まずは体洗いましょうかローズ。ささ、こっちこっち。アタシが隅々まで綺麗に洗ってあげるわよん」
「ひっ、お前、胸、当たってる……あぅ、へんなとこ触るなってばぁっ!」
「……ミレイ、お外にお風呂あるんだって。面白そうだからまずそっち行こうか」
「うん!」
騒がしい上に妹の教育によろしくない二人はほっといて、アーリィはミレイとうさこを連れて露天風呂に向かった。