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神化論 after  作者: ユズリ
再会
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再会 13

 ローズとマヤの準備はまだあと少し時間がかかりそうだなと判断したアーリィは、二人をほっといて先にミレイたちとお風呂に入りに行ってしまおうと考える。そうして彼女はミレイとうさこを引きつれ、悲鳴を上げるローズを放置してさっさと浴場へ向かった。

 

 

 

 一方こちらは男湯。

 

 

「あー、いいなたまにはこういう所も。超癒される」

 

「うん、ですよね~」

 

「……あぁ」

 

 さっさと服を脱いでさっさと湯船に浸かった男共は、女性陣より一足お先に湯で癒されていた。

 彼らがまったりくつろぐのは、静かに夜空と風を感じられる露天風呂。

 

「家の風呂ちいせぇからなぁ。こういうでっけぇ風呂はなんかこう、開放感があっていいよな。しかも外ってのがまたなんかいい感じだし~」

 

 風呂屋を大変お気に召した様子のユーリは、「今度温泉行きてぇな~」と呟く。容姿隠しとして頭からタオルを被ったレイチェルも、「あ、いいですね」と彼の呟きに同意した。

 

「でもこの辺で温泉ってあまり無いですよね」

 

「そーなんだよな。ちょっと遠いけど、エルドーラの火山の近くにたしか温泉があったはずだけど……あとはボーダの南の方にいくつかあるとかどーとか……」

 

「温泉はヒュンメイに多くあるらしい」

 

「あ、そういえばアゲハさんもそう言ってた! ヒュンメイは温泉が沢山あるんだって!」

 

「あー、ローズもそんなこと言ってたなぁ……」

 

 レイチェルはアゲハに聞いたヒュンメイ大陸の温泉の話を思い出し、「えっと、なんでも混浴の温泉が多いとか」と呟く。それを聞き、ユーリの目の色が変わった。

 

「よしレイチェル、今度ヒュンメイ行くぞ!」

 

「えぇ?!」

 

 下心丸見えのユーリの即決発言に、レイチェルは呆れた様子で「お店はどうするの、ユーリさん」と言う。ジュラードも真顔で「混浴の温泉に行ったら、お前は目を潰されるぞ」と、ユーリに警告した。

 

「うっ……確かに俺は目を潰されるな……くっ……!」

 

「もう、ユーリさんってば……アーリィさんがいるのにどうしてそういうこと考えるのかなぁ……」

 

 愛する妻に目を潰されたくは無いので渋々混浴を諦めるユーリに、レイチェルが不思議そうな様子でそう呟きを向ける。するとユーリは何か強い使命感を帯びた眼差しを彼に向けて、こう熱く主張した。

 

「馬鹿野郎、混浴風呂は男のロマンじゃねぇか! いいかレイチェル、そこに混浴がある限り、男はそこにロマンを求めて挑まなきゃいけねぇんだよ!」

 

「アホだ……」

 

 ユーリの熱い訴えに、ジュラードは思わずそう正直な意見を呟く。レイチェルもだいぶドン引きした様子でユーリを見ていた。

 

「な、なんだよお前たち! ふつーの男の子なら女の子と一緒にお風呂入れるって言われたら喜んで入りに行くもんだろー?! それが健全な男子の思考じゃねぇかよー!」

 

「お前が奥さんに目を潰される日もそう遠くは無いな……」

 

「うん……ユーリさん、ホント気をつけてね。アーリィさんってマジでそういうことやるタイプに見えるから……」

 

 二人に忠告だか心配だかをされ、ユーリは何故か大きく溜息を吐く。彼はアーリィがいないのをいいことに好き勝手に言い始めた。

 

「情けない……レイチェルもジュラードもホント情けねぇよ。とくにレイチェル、お前まだ十七歳だろ? 十七といやぁ一番性欲盛んな時期、俺だったらそりゃもう男の本能に忠実に生きていたもんだぞ? 暇がありゃ綺麗なお姉さんと毎晩……あ、当然今は奥さん以外とはしてないけどね。とにかく毎晩毎晩……」

 

「や、やめてよ! 僕、別にそういうの……あ、あまり考えた事無いし!」

 

「なんだって! エルミラはどーいう教育してんだよ、男の子に生まれたなら男の子として楽しく生きるべきなのに! 勿体無い!」

 

 顔を真っ赤にして恥ずかしがるレイチェルに、ユーリは「ローズといい、勿体ねぇ男ばっかりだな」と呟く。それを聞き、ジュラードは「ローズ? 男?」と首を傾げた。

 

「あ、いやなんでもねぇよ。それよりジュラードもアレか、女の子に興味無い? っつかお前見るからに枯れてるから、聞くまでも無さそうだな」

 

 失礼なことを堂々とのたまうユーリに、ジュラードはちょっと照れた様子で「別に興味ないわけじゃない」と答える。そして彼はこうも付け加えた。

 

「それに枯れてなんかないぞ。俺もまだ十七だ」

 

「えぇ!? 嘘!」

 

「ぼ、僕と同い年?!」

 

 ジュラードの発言に、ユーリとレイチェルは揃って驚く。その二人の反応に、ジュラードはちょっと心が傷ついた。

 

「……見えないんだな」

 

「あ、いや! そんなことないよ! ただ、そう、すごく落ち着いていて大人っぽい雰囲気だったから!」

 

「そうそう、そうだよ! 決して老け顔とか若々しさが感じられないとか、そういう理由じゃねーから!」

 

「ユーリさん!」

 

「あっ、わりぃ……」

 

 うっかり本音をぶっちゃけたユーリをレイチェルが慌てて注意するも、ジュラードは既に盛大に落ち込んでしまった後だった。

 

「老け顔……若々しさが無い……」

 

「ち、違うってジュラードさん! ジュラードさんって僕なんかよりよっぽど体も逞しいから、頼れる大人の人っていう雰囲気が見えるから僕と同い年には見えなかったんだよ! ねぇユーリさん、そうだよね! あっ、『はい』か『いいえ』で答えてね! それ以外は発言しないで!」

 

「え、は、はい……」

 

 気遣いの塊のようなレイチェルの必死のフォローで、ジュラードもちょっとだけ気分が上向く。彼はレイチェルに救いを求めるような眼差しを向けて、「本当にそういう理由か?」と確認するように聞いた。

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