再会 11
アーリィを見ないようにして彼女の示す張り紙に視線を向けると、確かにそんなことがそこにはしっかりと書かれていた。
「な、なんてことだ……」
世にも恐ろしすぎる注意書きを目の当たりにし、ローズはまたガタガタと恐怖に震える。なぜなら注意書きは自分にも摘要されることを理解しているからだった。すなわち自分も素っ裸で正々堂々湯船に浸からなくてはいけないということなのだ。
そしてローズが絶望している一方で、彼女の胸から這い出たついでに勝手にローズの魔力で虹色に透き通る綺麗な羽を背中に生やしたマヤは、一人で浮遊してアーリィに近づく。それに気づいたローズは、マヤに声をかけた。
「あ、マヤ! お前勝手に飛ぶなって……それ地味に魔力の消費多いんだぞ? 今はまだ魔力回復期間中なんだから……」
「そ、そんなことよりローズ……大変よ……こんな、こんなことが……」
今度はマヤが声を震わせ、何かに対して驚愕した様子となる。ローズは不思議に思いつつも、彼女の方を見ると必然的に素っ裸なアーリィを見ることになるので、とりあえず背を向けたまま「どうした?」と問うた。するとマヤはこう続ける。
「アーリィの胸が成長してるのよ……っ!」
「な……っ!」
ローズは咄嗟に『何を言ってるんだ!』とツッコミそうになり、そのツッコミは色々誤解を生みそうだと即座に判断して口を閉ざす。代わりになんと発すれば正解かと悩んだ末に、ローズは背を向けたままマヤに「そうなのか?」と聞いた。
「間違いないわ。だって以前はホントのホントにペタンコだったのに、今はこれ、ふくらみが……Aかしら? ギリギリA? いえ、やっぱりAは無いのかしら……っていうか、これどういうことなのよ!」
「あの、そんな詳しく教えてもらわなくてもいいからな……」
ローズがまた顔を赤くして照れると、アーリィもまじまじ観察される事に恥じらいを感じたらしく、ちょっと赤面しながら両手で自分の胸を隠した。
「マヤ、あの……」
「アーリィ、これは一体どういうことなのか説明してくれる?!」
「え、えっと……どうって……」
小さくても迫力あるマヤに怖い顔で問い詰められ、アーリィは恥ずかしそうに小声で答える。
「ユーリが……」
その一言だけでマヤは全てを理解したのか、全てを聞き終える前に「あいつを殺しに行こう」と、彼女は表情の一切無いぞっとする顔で言った。
「ローズ、行くわよ。ユーリを葬りに」
「お、お前はだからどうしてそう直ぐにあいつを殺そうという発想をするんだ! ダメだって!」
「マヤ、止めて! ユーリを殺さないで!」
ローズと涙目のアーリィに止められて、マヤは渋々ユーリ抹殺を諦める。マヤが本気で残念そうに「チッ」と舌打ちすると、三人のコントを眺めていた脱衣済みミレイが、「おねえちゃんたち、まだぁ?」と退屈そうに声をかけてきた。
「みれいもうさこも、もうとっくにふくぬいでるよー?」
うさこは元から裸だろうが、こちらも堂々と素っ裸になったミレイがそう報告する。とにかくまだ脱衣していないのはローズとマヤだけということになり、ローズは「す、すまん」とミレイに謝った。そして彼女もいい加減恥を捨て、覚悟を決める事にした。
「そうだ、私はアリア私はアリア私はアリア……よし、自己暗示が利いてきたような気がする!」
「うん、まぁさっさと服脱いでくれればアタシは何もツッコまないけどね。あ、そだ……」
ローズが自己暗示をかけつつ服を脱ぎ始めると、その間にマヤはアーリィに何かをこっそりと耳打ちする。アーリィは「なるほど」と頷き、そして企む笑顔のマヤと共にローズに背後から迫った。そして彼女は背後からローズの肩に手をかけて、耳元で囁くように呪文を唱える。
『cONnEct.』
「!?」
囁かれたアーリィの呪文の直後に、ローズは自分の体にほんの一瞬曖昧な違和感を感じる。だが何がなんだかわからないままに違和感は即座に消えて、ローズは驚きながら何かをしたアーリィを振り返った。




