再会 9
「お、メシか!」
「今日はローズさんが作ったの?」
テーブルに料理を運んできたローズにレイチェルが問うと、ローズは「アーリィとマヤと一緒にな」と答える。それを聞いていたジュラードは、マヤは一体どうやって料理したのかと、気になるなら聞けばいいものを彼はまた一人で深く悩み始めた。
ジュラードが悶々と悩んでいると、アーリィもコップなどを持って調理場から居間にやって来る。今日はローズとマヤが協力したので未知の料理の心配は無く、ユーリは安心して料理を待った。
「それにしてもアーリィってば料理上手になったわよねー」
今はローズの付けているエプロンの胸ポケットの中に納まりながら、マヤは関心しながらそんなことを呟く。それを聞いてアーリィは照れた様子となった。
「そ、そうかな……?」
「うんうん、上手くなったよ。だって水とか調味料とか、ちゃんと計量用のカップとかスプーンとか使って計ってたじゃない」
「え、マヤ……それどういう……」
マヤの発言に気になる部分があったので、思わすユーリは二人の会話に割ってはいる。するとマヤはユーリにこう答えた。
「いえ、だって以前のアーリィはそういうの大体目分量で物凄い量をガーッて入れてたし」
「そうだったのか……」
どおりで以前はやたら水っぽいご飯が炊きあがってきたり、砂糖の塊なんじゃないかって疑うような甘さの玉子焼きが登場したりしたわけだと、ユーリは納得する。するとアーリィは真面目な顔でこう弁解した。
「だってローズもマヤもそういうの量って料理してなかったから……ちょっと前に近所のお料理上手のイースさんに料理のコツを聞いたら、『ちゃんと材料を量って作れば大丈夫』って聞いて初めてそういうのが必要って知ったの……」
「あぁ、私とかマヤは大体作る料理の調味料の分量を覚えてしまっていたからな。でも最初はやっぱり量って料理してたんだぞ?」
「そうなんだ……知らなかった」
アーリィが驚いた様子でローズの言葉に頷く。しかしぶっちゃけマヤも目分量で料理していたので、彼女は苦笑しつつもとりあえず「そうそう」と相槌を打っておいた。
「まぁでもアタシは常識的な量でちゃんと料理してたし、あれで上手くいってたしぃ……」
「なんだ、マヤ?」
「なんでもないわよん、独り言」
不思議そうな顔をするローズに対してマヤは笑って誤魔化し、彼女は「ほらローズ、早く料理並べちゃわないと」と言う。ローズはハッとした様子で「そ、そうだな」と頷いた。
「はー、食った食った」
食事を終え、ユーリはソファーの背もたれに体を預けながらそう満足そうに言う。
案の定ローズやマヤがいたので、今日の食事はかなり美味しかった。いや、勿論普段の食事も美味しいのだけど……と、ユーリは心の中で誰に言い訳をする。そうして彼はお腹が満たされた後の行動をふと考えた。
「メシ食ったら風呂だけど……今日は人数多いから、全員入り終わるのに時間かかりそうだよなー」
ふとユーリがそう呟くと、テーブルを拭いていたアーリィが顔を上げて「ならお風呂屋さん、行く?」と彼に聞く。それを聞いてユーリは『なるほど』といった顔をした。
「あぁ、先月目抜き通りに出来たあれか。そういや行った事ないし、丁度いいから行ってみるか」
「お風呂屋さん、ですか?」
レイチェルが聞くと、ユーリは「そーそー」と頷く。
「温泉じゃねぇんだけど、公共浴場が近くに出来たんだよ。うちの小さい風呂に順番に入るよりは、あっちに行ったほうが楽だと思うから行ってみようぜ」
「風呂か……」
「へぇ~。なんか皆で入るって面白そうですね」
ジュラードとレイチェルがそれぞれ興味を持ったふうな顔をすると、調理場で食器を洗っていたローズが彼らの元に戻ってきて「何の話をしてたんだ?」と聞く。ユーリは彼女にこう答えた。
「この後皆で風呂屋行こうぜって話してたんだよ」
「風呂屋……?」
ユーリのこの一言を聞き、ローズは何となくいやな予感がした。




