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神化論 after  作者: ユズリ
再会
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再会 3

「ふぅん……みれい、なにかてつだえることある?」

 

「ん~……これの手伝いは危険だから、じゃあちょっとお使いに行って来てもらっていい?」

 

 アーリィがそう言うと、ミレイは目を輝かせて「まかせて!」と答える。アーリィは少し笑いながら、「じゃあ頼むね」と言った。

 

「うんうん、みれいなにすればいい?」

 

「大通りに聖女像が立ってる広場があるよね? あの近くに『ドクドル』って看板のお店があるんだけど、そこに行って魔法薬に使う材料を貰ってきて欲しいんだ」

 

 アーリィは「材料はメモに書いて渡すね」と言い、傍にあったメモ用紙に手を伸ばす。ミレイは余程お使いに気合が入ったようで、物凄くやる気満々な顔でアーリィからのメモを待った。

 

「……うん、こんなものかな? あ、一応地図も描いておいたから」

 

 メモを描き終え、アーリィはそれをミレイに手渡す。ミレイは宝物でも手に入れたかのように、大事にそのメモを服のポケットに仕舞った。

 

「お金はもう先週に支払っておいてあるから、受け取ってきてもらうだけでいいんだ。確か今日受け取りの日だったはずだから。お店の人にこのメモ見せたら多分欲しいもの渡してくれると思う。ちょっと量多いけど、お願い」

 

「うん、みれいいってくるよ!」

 

 張り切って返事をするミレイに、アーリィは「あ、一応袋持ってったほうがいいかも」と言って、工房の棚に仕舞ってあった肩掛け用の鞄を手にとってミレイの肩に掛けた。

 

「おぉ、なんかぼうけんのよかん!」

 

「う~ん……冒険はしないで、危ないから。気をつけて行ってきてね」

 

 苦笑するアーリィに「わかった!」と元気よく返事をし、ミレイは早速工房を飛び出していく。

 

「……走って行っちゃった……大丈夫かな……」

 

 すっ飛んでいったミレイの後姿に若干の不安を覚えつつも、アーリィは再び魔法薬作成の作業に戻った。

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 ルルイエから出発して、徒歩と馬車の移動で四日ほどかけて無事にアル・アジフに到着したジュラードたち。

 彼らは商業都市らしく活気ある街の中を、ユーリとアーリィの店を目指して歩いていた。

 

「さて、アーリィたちのお店は~、っと……」

 

 そろそろユーリやアーリィと久しぶりの再会ということで、マヤはやっと表に姿を現す。彼女はいつもの定位置で、久しぶりの街並みを確認するようにきょろきょろと見渡した。

 

「その、おまえたちの知り合いに会ったら直ぐに俺の妹の所に行ってくれるんだよな?」

 

 ジュラードが確認するようにそう問うと、先導して歩くローズが「そのつもりだ」と答えた。

 

「ただ、あいつらには店があるからな……事情を話せばアーリィくらいは一緒に来てくれるかもしれないが……」

 

「何にせよ、まずは行ってみるしかないわよね」

 

 マヤの呟きに、ローズは「そうだな」と頷く。ジュラードは少し不安を感じる心に『大丈夫』と言い聞かせ、行ってみるしかないというマヤの言葉に「わかった」と小さく返事を返した。

 

 

 

「確か店はこっちの方だったよな?」

 

「うん……前に一回行ったきりだから、ちょっとアタシも道忘れちゃってるけど……多分そうよ」

 

「だ、大丈夫なのか……?」

 

「きゅううぅ~」

 

 三人と一匹が聖女像のある広場の前までやってきた時、ジュラードの目に何か気になるものが映り止まる。

 

「ん……?」

 

 足を止めたジュラードに気づいて、うさこが「きゅいいい~」とローズを引き止める。ローズも足を止めて振り返り、ジュラードに「どうした?」と聞いた。

 

「いや……なんか変な子どもがいるなと……思って……」

 

 不可解なものを見るような表情のジュラードの視線を辿ると、確かにそこにはちょっと変わった子どもがメモ用紙を持ってうろうろしていた。

 

「ねぇローズ……アレってもしかして……」

 

「あ、あぁ……俺も今何かそんな予感がしたとこだよ……」

 

 ジュラードが見つけた子どもを見て、直感的に何かを察したマヤとローズが小声でそう囁き合う。二人はその子どもの姿に、何となく見覚えがあったのだ。正確にはよく似た人を知っていたと言うべきか。

 ジュラードたちの視線の先には、ド派手な桃色の髪が目立つ幼い外見の少女が一人。青い瞳は左右で色の濃さが違い、ちょっと普通の人とは明らかに違う外見をしている。

 

「あれは、まさか……」

 

 特徴的過ぎる特徴の数々が二人の知っていた”あの人”に当て嵌まり過ぎて、ローズは何か確信しながらそう呟く。

 確か以前アーリィに話を聞いたとき、”あの人”はそんな感じに復活したとも言っていたし、それにここにはアーリィたちがいるからもしかしたら遊びに来ているのかもしれない。と、言う事はあの目の前で明らかに何か困った様子でうろうろしているのは……。

 

「きゅ~い~っ!」

 

「あ、うさこ!」

 

 ローズとマヤが色々考えていると、好奇心とゼラチン物質が主成分のうさこが、子どもに興味津々となって飛び出して行く。うさこは一直線に、何かを悩んでいる様子の子どもに近づいていった。

 

 

 

「きゅうぅ~」

 

「わっ! びっくりした!」

 

 アーリィからお使いを頼まれたミレイが、しかし目的の店がよくわからずに悩んでいると、突然目の前にゼリーっぽい謎の生き物が飛び出してくる。驚いたミレイは即座に謎のゼリー生物を解析した。

 

「むぅ……でーたべーすにじょうほうあり……ぜらちんうさぎ……? まものだけどきけんどなし……しょくようにするとおいしい……たべものってことかな?」

 

「きゅいいぃ!?」

 

 『食べる』の言葉にトラウマでもあるのか、ミレイの呟きにうさこは途端にぷるぷる震えて怯えだす。しかし幸いな事にミレイにものを食べて味わう機能は無い為に、うさこは捕獲されて食われずに済んだ。

 

「でもみれい、たべものたべれないからなぁ……おまえがおいしいのかわからない」

 

「きゅいいぃ~」

 

 ミレイが捕食者ではないと知ると、うさこは安心したように派手に震えるのを止める。すると今度はミレイの元に人がやって来た。

 

「うさこ、いきなり飛び出したら驚かれるだろう」

 

「きゅいぃ」

 

 突然飛び出していったうさこをそう注意したのはローズで、その後ろからジュラードもやって来る。ミレイはローズとジュラード、そしてやたら小さい存在のマヤを見て不思議そうな表情で首を傾げた。

 

「こんどはげしゅ、と……でーたべーすにじょうほうがないけど、なにかちいさなひとっぽいいきもの?」

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