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神化論 after  作者: ユズリ
浄化
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浄化 69

「また私に借りが出来たね、ユーリ。さて、どうやって返してもらおうかな~」


「そんなの知らん。けどまぁ助かったわ」


 助けてもらったことに対しては珍しく素直に礼を言い、ユーリは先ほどの騒動で地面に落としてしまっていた短剣を拾い上げる。そうして氷漬けになった背後の魔物に振り返った。


「で、あれはあのままでいいんか?」


「さぁ……」


 氷漬け状態の魔物を指しながら問うユーリに対して、イリスはよくわからないというふうに眉根を寄せて曖昧な返事を返す。その返事にユーリは「お前がわからねぇでどーすんだよ」と、もっともな意見を返した。


「そんなこと言われても、この後どうすればいいのかなんて私にもわからないし」


「……とりあえず、あとは私に任せてください」


 二人の会話にラプラが口を挟み、彼は「危ないので離れていてください」と彼らに告げる。言われた通りユーリが離れ、イリスもポチを抱きかかえて同じく魔物から離れる。そうして二人と一匹が離れたのを確認すると、ラプラはロッドを魔物へと向けて呪術を唱えた。すると氷漬けになっていた魔物に向けて破壊の呪術が発動し、赤黒い発光と共に爆発でもしたかのように魔物は氷漬けのまま粉々に砕ける。


「これで安心でしょう」


 魔物を再生不能にまで粉々にしたラプラは、笑顔で二人に向き直る。それを見たユーリとイリスも、やっとこれで一安心というふうに各々武器を仕舞った。


「ありがとラプラ」


「いえいえ、そもそもあの肉団子を見事氷漬けにしたのはあなたですから。……はっ! 今の戦闘は私とイリスの愛の共同作業……?!」


 ラプラの戯言は無視して、イリスはポチを下ろしながら「けどさ、これ嫌な予感がしない?」とユーリに声をかける。ユーリは怪訝な顔で彼を見返した。


「嫌な予感って?」


「こっちに肉団子がいたんだよ? まさか、あいつらの巣って……この先の、もう一か所目撃情報があった場所……?」


「……」


 イリスに指摘され、ユーリも考えながら「その可能性はあるわな」と答える。イリスは途端にげんなりとした表情を浮かべた。


「そうだったら最悪なんだけど……私たちであの魔物の巣を退治するんでしょ?」


「そのために来たんだろうが」


 呆れた表情を浮かべるユーリに対して、イリスは困ったように「それはそうだけど」と呟く。そして彼は続けてこう言った。


「やっぱ三人じゃ無理! その時はナイン呼んでこよう! 彼なら魔物の巣窟だろうが全部何とかしてくれるよね!」


「お前のそのナインに対する過剰な期待は何なんだよ」


 ナインに期待しているというより、ナインに面倒をすべて押し付けようとしている節のあるイリスに、ユーリが呆れ顔でツッコミを入れる。


「あんまりオッサンに無理させんなよ。まー、俺らだけでもヘーキだろ」


「そうですよ! あんな野蛮な男いなくとも、私たちだけで充分でしょう!」


 ユーリだけではなくラプラにも反対されたイリスだが、彼は固い決意の表情で「ナイン呼ぼう」と言った。


「呼ぼうって……あいつら俺らと反対方向に行ったんだぞ? どう呼ぶんだよ」


「この賢いポチに呼んできてもらえばいいじゃん」


 イリスはそう言いながらポチの喉を撫でる。ポチは少し迷惑そうな顔をしつつも、大人しくされるがままでしゃがんでいた。


「はぁ~? ポチに? できんの?」


 ユーリは疑わしげな表情を浮かべながら、聞くようにラプラに視線を向ける。ラプラは「おそらくは……出来るんじゃないでしょうかね」と彼に答えた。


「賢い魔物のようですし……我々より足も速いですしね。鼻も利きますから、ジュラードたちを見つけて追いつくことも可能でしょう」


 ラプラはそう答えつつ、「しかし本当にあの男に頼るのですか?」とイリスに問う。ラプラはエンセプトであるナインに頼ることに抵抗があるようだが、イリスは「強い人はどんどん使ってかないと」と返した。


「何のためにナインをスカウトしたと思ってるの? 彼にヤバイ魔物を全部倒してもらうためだよ?」


「お前、そーいうとこ本当マヤにそっくりだよな……他人を便利に使おうとするところ……」


 呆れ顔のユーリは無視して、イリスは「とりあえずこの先に行ってみて」と説明を続ける。


「もし仮にこの先が魔物の巣窟だったら、私たちだけじゃ心配だからポチにナインを呼んできてもらおう。で、別に巣窟じゃなかったらそれはそれでよし! 私たちはさっさと孤児院に戻って、ナインたちがヤバイ魔物をどーにかしてくれてることを祈る。これでどう?」


「どう、って……まぁ、俺はいいけど……」


 反対しても聞きそうにないので、ユーリは仕方なく了承の意を示す。一方でラプラは納得いかなそうな顔をしていたが、しかしやがて彼も「わかりました」と不機嫌そうに頷いた。


「あなたがそこまで言うならば……」


「よかった! じゃあ決まりだね!」


 イリスはご機嫌に「じゃ、さっさとこの先を確認しに行こう」とポチと共に歩き出す。その後姿を呆れた顔で眺めていたユーリはだが、やがて「おい、俺らも行こうぜ」とラプラに声をかけた。


「くそ、イリスはなぜあんな野蛮なエンセプトを頼るのか……」


「おーい、あんた俺の話聞いてるかー?」


「そうだ、もしあの男と共に戦うようなことになれば……どさくさに紛れて殺してしまいましょうか……」


「……」


 ヤバイことをぶつぶつ呟くラプラは怖いのでもう無視して、ユーリもイリスとポチの後を追って歩き出した。




◆◇◆◇◆◇

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